頂上と対面、そして破滅の始まり
頂上はすぐそこに見えて、しかも三つの眼と戦う前にはあった複数の世界から構成された壁はなくなっていた。
三つの眼があの壁を作っていたのであろう、しかし、それがなくなった今、頂上は丸裸だ。
「あの~頂上ってどこにあるんですか?」
ココココ子が辺りを見回しながら聞いてきたので私は真っ直ぐ前を指す。
その先に浮いている光を放つ小さな水晶玉が頂上の入り口。
ありとあらゆる世界の頂上と言われる場所はそこにある。
「へぇ~あれがそうなんですか」
「ああ、行くぞ」
「はい!」
「開け! 我らは頂を望む者であるっ!!!」
声を出しながら私は飛び出す、拳を固めて水晶玉を叩き割る。
砕け散った水晶玉の破片が光を一層強く放って辺りを漂い始めた。
その軌道はゆっくりと円を描くようになり、私とココココ子を取り巻きさらにまばゆく輝き始めた。
「うわっ! 眩し!」
思わず目を覆うココココ子。
私は無声詠唱をして、詠唱が使えるようになったか試しながら時を待つ。
様々な世界を渡って様々な力を得て、術を学び、鍛えてきたが、それでも私にとって生まれた世界にあった詠唱が一番使いやすいモノであるため、出来れば巨眼との決戦には欲しかったが、どうも効果がないようで、やはりこの辺の世界の狭間ごと巨眼の有利に働くように改造されているようだ。
強く力を注いで詠唱してみてもまったく手ごたえがないので、向こうは私の詠唱を一番警戒しているよう事がよくわかる。
なら別の力を使うまでだ。
目を閉じ、私の中の精神世界、真っ青な部屋から最初の体を取り出す。
今の体が最初の体に飲まれ、内側から力がみなぎる。
前に取り出してからあまり時間が経っていないのにさらに力が増していて暴走しそうになるが、精神を強く保ち、制御をする。
そして目を開くとそこはあらゆるものの高み、頂上。
無数の世界を見下ろす空間には巨眼が堂々と存在して私を見ていた。
「来たかガゼル、我が宿敵、マリィを、唯一の望みを遠ざける災厄」
「自らの欲望の為にあらゆる世界を壊し、世界達に災厄を起こすお前に言われたくはないな」
「黙れ、世界がどうなろうと知った事ではない、弱い世界が悪く、弱い世界を救う力を持たない者が悪い、力があれば世界は崩壊しない」
「……そういう考えをしているというなら私が何を言った所で無駄だろうな、ここでお前を倒す、そして世界管理官に突き出してやる」
直接見た巨眼は狂気に満ちて、私への敵意をむき出しにして力をぶつけるための隙を伺っている。
その言葉から、壊した世界を、なくした命を、何とも思っていない事がわかった。
マリィの終焉をもたらす美しさに魅せられてから狂ったのか、それとも元々そんな考えだったのか、どちらにしろここで私が始末をつける。
体の中から溢れそうになって抑えていた力を解放し、そのまま巨眼に放ってみる。
私の胸から出た赤い光が一直線に進んでいき、巨眼に突き刺さった。
が、次の瞬間巨眼の姿が虚空に溶けるように消えていき、光からずれた位置に現れる。今まで見ていた巨眼の姿は幻影だったのか。
「触れれば死ぬ、しかしガゼル、ここは我が頂上、我が壇上、敗れるのはどちらか?」
「お前だな」
「マリィを手に入れて我が頂上は完成する、ガゼル、お前の骸は蛆に食われて下層世界を漂うのだ」
巨眼は興奮した声を響かせる、その声はテレパシーで発しているのに空間を震わせる、感情の高ぶりが頂上に反映されているのか。
ビリゥヴァの中からビンを一つ取り出して巨眼の方に弱めに投擲する。
ゆっくりと動き出したビンは私と巨眼との距離の中間で止まった。
「それは、何だ?」
「これが割れた時がお前の破滅の開始だ」
「ぬかせ!!」
巨眼の身体が空間の一点に豆粒程の大きさまで収縮し、無数の触手が飛び出してきた。
金属のような硬質な輝きを放ちながらも蛇のようにしなやかに意思を持った触手は、先端についた目で私と背後にいるココココ子を視認しながら殺到してくる。
「うわっ! 何ですかあれ!? 気持ち悪い!」
「叫んでないで避けろ! 割るぞ!」
触手から距離を取りながら私は宙に投げたビンに思念を飛ばす、細工により私の思念で任意に割ることの出来るビンはすぐさま砕けちり、その中身をこの頂上世界に放った。
さて、破滅の始まりだ。




