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捕獲としつけ、そしてハンデ

 詠唱と共に渦巻く力の波、周りに揺れるそれをその場にとどめながら私は心田とマリィコールズの一人を見据える。

 毛羽島は倒れて起き上がらない、だが、息はある、軽く弾き飛ばしただけなので、倒れたフリしてこちらをうかがっているのか。


「ガゼルくん、その力、まさか海魔」

「さあ、どうだろうな、転移者」


 一言、心田はその一言でまた驚き、目を見張る。


「な、何でそれを!」

「教える義理はない、面倒だ、早くかかってきたらどうだ? ここは世界から隔離した、転移では出ていけないぞ」


 ビリゥヴァを身に着け、その中に収納された銃を一つ取り出す。

 マリィコールズの女は何が何だかわかっていない顔をしている、その思念を聞くと本当に一般人だ、無意識のうちにマリィコールズにされているようだ。

 巨眼がマリィを探す為に作った集団、マリィコールズ、少年少女の心を奪い、意のままに操るが、操られる人間には種類がある、意識がありながら巨眼に忠誠を誓っているか、知らぬうちに操られているか、彼女は後者であるらしい。

 何にせよそれならさらに運がいい、この隔離された空間は巨眼からは見えない、意識的に内側から通信を飛ばそうとしなければ届かないだろう。

 このマリィコールズを捕まえても向こうにバレる事は無く、こちらの決意も巨眼にはバレない。

 最近運が悪かったからその分が返ってきたかのようだ。今の状況はまだマイナス寄りだが。

 引き金を引くと光の線が無力透明の力の波間をぬって飛び出す。

 呆然としていた心田は我に返り身を躱すが、狙いはそちらではない。

 未だに呆けているマリィコールズの少女の方だ。

 突然の事に動けず、あっさりと光を浴びた。


「へ!? あっ…………」

優香ゆうか!」


 心田が叫ぶ、この少女は優香というらしい。

 銃口から撃ちだされた光は銃口とひものようにつながっており、銃口を上にあげると光に引っ張られ、優香と呼ばれる少女の体が浮き上がり、こちらに飛んでくる。

 動く事は無く、光線が当たった瞬間の表情のまま、時が止まったように動かない。

 これは世界を転々としていた頃に私を捕まえようと追って来た組織が持っていた光線銃で、こうやって生物を捕獲するモード以外にも色々なモードが使えるのだが、組織を壊滅させてしまったせいで私にはモードの切り替え方がわからない。

 このモードだけでも十分便利だから別にどうでもいいが。

 ビリゥヴァの中からビンを取り出し、少女を縮小の詠唱で小さくして入れてフタを閉める。


「優香をどうするつもり!?」

「答える義理はない」

「なら力ずくにでも聞く!」


 ビンをビリゥヴァにしまい、心田を見る。

 毛羽島はまだ様子をうかがっている、いや、この状況を記録しようとしているのか、目に映るモノを脳に完全に記録する天法を使っているな。

 記録されても問題ないかもしれないが、後でまた面倒な事になったらいけない、今回も私の迂闊さ、気のゆるみとかが招いた事だ。

 強烈な思念を送り、これからの記録、そして既に保存された情報にも影響を及ぼす。

 ショックで毛羽島の体が小刻みに震えた後、完全に意識を失う、これでいい。

 心田の体が浮き上がる、そして強い風が私に吹き付けてくる。

 それは錯覚、実際は力の波を壁にしているので吹いてきてもそれに防がれる。

 強大な力が解放される時に私が感じる感覚なだけだ。

 流石は転移者だけあって強大な力を身に受けている、それが本当に身に余っているかどうか、結局は戦えばわかる事。

 とはいえ、私の目的のほとんどは既に果たされたので、ここでの戦いは無駄だ。

 だが、戦おう、私はしばらくこの世界を離れる、その間にこの世界を危機から守る力を持っているとするならばそれは世界転移者なのだから、ここで鍛えておいて問題はないだろう。

 大きい力を持っていようとまだまだ子供、その力の使い方を教えて、ついでに世界を守る思考を持つようにしっかりと戦おう。

 私も力を少しだけ解放しながらそんな事を考えていた。

 心田の解放する力より全然少ないが、心田をしつけるならこれで十分だ。

 私と彼女では経験が違う、ハンデを与えなければいけないからな。

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