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ポドゥサと二木、そして転移

 ポドゥサと名乗る少女の姿をした海魔は私の前に膝をついたままこちらを見上げ、首をかしげる。


「とぼ、けないでく、ださい、か、くさなくていいです、わた、しはあなたが産、みだした海、魔の子で、す」


 確信している、この海魔も私を海魔神だと誤解し、それを真実だと思い込んでいる。

 私はどこかでこの少女に海魔神だと思われてしまうような事をしただろうか。

 覚えがない。


「ポドゥサ、あなたやってくれたわね~」


 聞き覚えのある声、振り向くとそこにはサハダールがいた。

 変わらず間延びしたしゃべり方だが、その目はポドゥサをにらみ、殺気を放っている。


「そ、っちこ、そ一人、じ、めしよう、とし、た」


 対してポドゥサもサハダールをにらみ返し、殺気を放つ、仲が悪いのか?

 それにしても軽い解析をかけても未だにこのポドゥサの情報は何も変わらず普通の少女だ。

 よほど巧妙な隠蔽術を持っているのだろう。

 解析の術の出力を上げると隠蔽の奥に隠された正体を見てみると思った通り答えが返ってくる。

 海魔としての力だけを見るのならばポドゥサはサハダールを上回る魔力量をしていて、その力を姿を変化させて隠す事に注ぎ込み、それであの教室の大破壊を可能としているのだ。

 それにしてもサハダールは保健室にいたはずだがどうしてここまで来ているのか。

 今はそんな事よりこの場を退散した方がよさそうだ、爆発の音は響いた、しかし、その破壊はこの高校全てを破壊したわけではなく、私のいた教室と、その二つ隣までを破壊した程度だ。

 私の教室は二階フロアの一番端であったため、被害はあまりない方だが、音を聞いて向こうの教室から生徒が出てくるのが見えた。

 破壊の跡に生徒が二人と保険教諭が一人、はたから見ればおかしな光景に見えるだろう。

 幸い遠いのと、私が今日からの編入生で顔を覚えられていないのでまだ大丈夫だが早くここから離れなければ。

 と転移の方法を詠唱を使うと魔力がばれるのでどれにするかと思ったら、使うまでもなく、周りの景色が切り替わり、私はどこかの海の上に放り出された。

 どこかから転移の法術を使われたな、これは天法、地法、海法、どれにも分類されない特別な術式の一つで特殊な法術だけあってこの世界でも一部の者しか使えない先天的な才能のいる術だ。

 しかし、先天的な才能を持たなくても使える事象というのは存在する。

 海に落ちながら術を使った本人の気配を感じ、見てみるとそこにヤツがいた。

 世界転移者、二木鉄吉、静かにこちらを見ながらヤツは浮いていた。

 私はとりあえず天法を使い、落下を止め、飛行する。

 サハダールとポドゥサも見れば姿を海魔の姿に戻して飛んでいた。

 ポドゥサは人間の姿の時と比べるとあまり変化はないが、翼のようなひれのようなモノが制服の背中から突き出て、目の色が変わり、ほおに少しウロコが見える。


「海魔、だったんだね、楽音らくねちゃん、澤田先生」


 こちらを見下ろしながら鉄吉がそう言う。

 楽音、誰だ? と思ったがこの中で私が人間名を知らないのはポドゥサだけなので消去法でポドゥサの名前だったのだろう。

 やはり転移者なだけあって、瞬時に海魔と私を転移させるだけの力を持っているな。

 戦うとなれば私も力を解放しなければいけないかもしれない。

 出来れば戦わないで逃げたい所だが、二木も私を海魔だと思っているのだろうか。

 ポドゥサに呼び出された所を見られているので十中八九そうだな。

 二木がどこかに連絡していないとも限らない、何せ海撃隊の特殊部隊の人間だ。

 となるといよいよ初希に迷惑をかけるな。

 退下が私を報告した時、初希に気を使って私が初希と関係があるとは言わなかったらしいのだが、住所を学校の方に握られている以上、すぐにバレるだろう。

 こうなったらこの世界を離れるか、姿を変えて別の場所に隠れるかしかない。

 初希と共にこの世界を離れる事はおそらくできないであろうから、初希を悲しませない為にはその記憶を消すしかないのだが、それは私としてはしたくない。


「二木、そう、わた、しはか、いま、あなたと、は違う、一、緒にはい、ら、れない」

「そ、そんな……楽音ちゃん……」


 ポドゥサと二木は同じクラスなだけあって何か関係があるようで、互いに見合い、二木は悲しげに、ポドゥサは感情の薄い顔で言葉を交わす。

 それを待っている暇はないので私はその間に気配を消して逃げようかと思案する。

 今学校の方は一時的に混乱しているだろうからそれに乗じてエンドフォグを盗んで、私は姿を消そう。

 初希にはまた連絡を残して世界を出よう。

 寂しい思いをさせてしまうな、今度は海外旅行に連れていくか、界外旅行でもいいな。

 制服の内ポケットに手を入れる、いざという時の転移玉、それをポケットの中で握りつぶす。

 家で準備していた時これを使う時は来ないと思っていたが、初日で使う事になるとは思わなかったな。

 二木はポドゥサにサハダールとポドゥサは二木を見ているこの時しかないな。


『サハダール、私は一旦身を引く、お前も隙を見て逃げろ』


 一言だけ、一応恩のあるサハダールに思念を送り、少し私の詠力を送る。

 魔力と似ているので、サハダールであればうまく使えるだろう。

 私はエンドフォグが保存されている場所へと飛んだ。

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