婚約破棄をされた腐った令嬢は冤罪が証明され嘆く。兄の視点
この国の初代国王陛下が創設したノービリティ騎士団、貴族の子弟によって構成された騎士団。
戦場での戦いが主でなく貴族相手の犯罪の取り締まりが主の役割。
創設の経緯は簡単だ。取り締まりが平民では貴族相手の取り締まりは報復を恐れて無理だからな。
どんな身分であれ腐ったモノは処断するという、かつて悪政を惹いた前王朝の貴族や国王を討伐し新たに国を起こした初代国王陛下の理念から産まれた騎士団だ。
ノービリティ騎士は国で最も高潔な騎士と言われている。
……いやそうでないとノービリティ騎士を名乗る資格はない。
ノービリティ騎士団の新人訓練、このノービリティ騎士団に入る者は残念ながら実力より家柄、信用が重視される。
俺もそうだが大体入隊するのは名に憧れた俄か名誉を目的とした高位貴族の子息、一流の訓練を受けてるのも居るが、一部を除いて実際の戦い何て殆んど経験してない。
平民騎士より貴族騎士の方が魔術を持つものは多いが実戦で使えるレベルの者は少ない。仮に魔術が使えても仕事柄室内戦が多いから肉弾戦が出来なければダメだ。いや下手に魔術が使える分、器用貧乏になる。
今回新人として来たのも魔術抜きの実力で言えば町を警備している兵士より実力は下だろう。
実力もそうだが最も問題なのが大体にこの団に入る目的は……ノービリティ騎士と言う肩書を得るため。
法の番人、正義の断罪者、先人や俺達の仕事ぶりでノービリティ騎士の名はこの国では、庶民貴族問わずに正義の味方として扱われる。嫌うものは悪党だと言われる程だ。
だが入団して来る者の大半がノービリティ騎士の理念などどうでも良いと思っている。理念が有っても甘い覚悟の者も居る。
…先ずノービリティ騎士団の新人がされることは貴族としての傲慢なプライドを叩き壊されることだ。実戦形式の訓練でな。
「其処だ!」
「甘い」ギン!
「あ!ま、参りまし、ガフ!」バキッ!
「貴様、剣を手放しただけで何を諦める!剣を無くしたなら素手で戦え!」
「す、素手!?」
「何が可笑しい。此れは実戦形式の訓練だと言ったはずだ!実戦で剣を無くしたら戦いは終わるとでも思っているのか!」
「し、しかし剣が無ければ死ぬ可能性が高く……」
「死ねばいい!我等は罪人を罰する剣!剣に脅えはない!剣に後退はない!それが我等ノービリティ騎士!貴様の軟弱な心に刻み付けろ!」バギ!
「あげ!」
「し、新人の訓練は厳しいのは普通だが……団長少し荒れているよな」
「ああ……令嬢が追放されてからずっとな」
「やっぱりそれが原因か隊長はキスイダ令嬢の事を大切にしてたからな……」
「しかもだ、追放の理由が……冤罪だもんな」
「おい、まだ確定してない事だから大っぴらに言うなよ」
「いやいや、お前も知ってるだろこの前ウチの団が捕まえた咎人、咎人はログラハ子爵家の三男ロクッマ、元キスイダ令嬢の従者で主人の犯罪を告発した奴だ……確実だろ」
「まだ取り調べ中だろ」
「タイミング的に裏切った主はキスイダ令嬢しか居ないじゃねぇか」
「……まぁそうだな。けどな冤罪が確定したら大変だぞ。ほら関わってるのが……ただでさえ罪が確定しなくても…陛下の権威に傷付けた事に成るのにさ」
「…あの冤罪…元騎士団長の子息や宰相の子息やら他にも高官の息子もか関わってるんだよな……しかも最悪なのが主犯が」
「ウチの団は勿論、陛下としても見逃す事は出来ないだろうし……荒れるな」
「……ああ特に取り締まる役目が来そうな……精鋭扱いの俺達がな」
「…………やっぱり貴族子息の取り締まりとなるとノービリティ騎士でも俺達に仕事が来るか……いや捕まえるのは当然なんだが……後を考えるとな」
弱い全く弱い、試しに10人全員で襲わせたのに十秒で全滅か。
「どうした!もううごけないのか!そんなのではどこぞのボンクラ子息にも勝てんぞ!」
「う、腕が折れて」
「安心しろ。治癒術士は優秀だ……全身折れても治療は出来る」
「ヒィィイイイ!!……あぐぁ……」
「どうした!もう動けんのか!……気絶。………鍛えてるのでもこれか、ならあの子息どもにやるときはもっと緩めんとな……気絶で楽になどして……」ブツブツ
「…………な、なぁ団長もしかして捕まえた奴にやる拷問の練習をしてるんじゃ。子息とか言ってるし」
「………まぁ………………その…………死ななければ問題ないだろう」
「いいのかそれ」
王国騎士、ノービリティ騎士団の団長。
其が俺の肩書き。この仕事に誇りを持っては要るがソロソロ次代に譲りたい。家族の中で俺の唯一の理解者であり…俺の目標…キスイダの所に行きたい。
だがその前に……
「さてロックマ、貴様の犯した罪は確定した。
利益を得る為の偽証。主である公爵令嬢に対して冤罪を被せた。陛下が決めた婚約を破断させた。貴様への処分は……」
「お、お待ちください!弁明を!べ、そ、そうだ!キスイダ様に会わせて下さい!謝罪をさせて…[ザク]…!!?」
「団長殺してはダメですよ」
「ああわかっている……(楽に)殺す何てしない」
ログラハ子爵家のロックマへの処分は本来なら死罪だが……特殊な男娼としての生活が処分となった。
キスイダの事を持ち出さなければ死罪にしてやったんだがな。
……奴めキスイダの優しさを利用しようした。
まぁいい、証言に当日のアリバイ、冤罪の証拠は出揃った。
「あの屑の元に行くか」
「団長!?殿下の所に行くのにその発言は、あと!王位継承権がある方ですので流石に陛下の許可が有りませんと!」
「そうか……まだ早かったな。先ずは一応陛下の元に向かわないとな。あ、モホチガの隊に来るように連絡してくれ」
「だ、団長!?何する気です!?アイツ等は狂人の隊ですよ!?」
陛下から断罪の許可は貰ったが先に陛下と両親がクズどもに裁きを与えるそうだ。
…………陛下からの罰は王位剥奪だが問題は両親がな。
俺のやる分は残って居るだろうか?いや両親とて我々の立場を判ってくれてる筈。……モホチガ隊が荒ぶって限界なんだ。
……罪が決まる前に一応の弟レサクは早々に家から追放された。
レサクは数年前父が取り潰しになったネウヨシ家から引き取った子供。俺は犯罪者の子供だと引き取りに反対した。まして養子に等。父は親の罪は子には及ばないと話して養子にした。
俺も犯罪は子供に及ばないという話には頷く事が出来る。
だがネウヨシ家を取り潰したのは俺が所属したノービリティ騎士団。俺は危険だと感じた。
……両親はレサクを本当の子供の様に扱い。レサクは父と母を本当の親の様に慕い、なついて居るように見えた。
妹はレサクに対して優しい姉の姿を見せていた。
だから俺はレサクを敵だと認識するしかない。
妹はある理由で悪意に敏感。
妹は信用出来ない相手の前では本性を出さない。
例えばあの従者とかな。
全面的に本性を出すのは俺か両親の前ぐらいだ。
……信用して本性を出したせいで両親とは少し疎遠になるという悲しい結末だがな。俺も含めて。
それにしても……王子に荷担したのはヤツは復讐のつもりだったのか?…それとも時期当主になるのに媚を売っただけか?
まぁ両方か、どちらにしても恩知らずな。
ふん、子は親に似るネウヨシ家も強力な家の保護を受けながら悪事を行っていたな。そして最後は保護した家を裏切り自分達は助かろうとした。
両親もヤツに対しては擁護する気はもう無いようだ。
薄々感ずいていたのだろうな…ただ親として接した期間も本物だった…だからアレは追放程度で許された。
さて、少し時間が掛かった。罰を下すのは結婚式という陛下は中々にエグい性格だ
花婿衣装の愚か者と花嫁衣装の伯爵令嬢エニケイ。幸せに見える二人に少し悔しさの見える取り巻き。
……調査して解ったんだが取り巻きは愚か者の取り巻き日と思ったら、エニケイという尻軽女の取り巻き、いや愛人だった。
結婚の誓いの言葉、永遠で清らかな真実の愛をお互いに誓い合う場面では何人か吹き出し掛けた。
結婚式が終わり遠慮なく笑った。
なぜ笑うかと怒鳴る様に訪ねる今は殿下。
先程永遠の愛(笑)を誓った方のお腹に2ヶ月程の新しい命が宿ってる事を報告。因みに新しい命は殿下の血筋ではない。
冤罪の調査のついでに判明した事だが他人事ながら流石に呆れたよ。不貞の裏切りを責める殿下(笑)、婚約中に尻軽女に手を出しといて不貞を責める?
尻軽女が新しい命のホントの父親、宰相の息子の影に隠れる。
怒鳴る花婿に、愛人を盾にする花嫁。
喜劇としてはクライマックスの様だが……此処からが本番何なんだがな。
次に陛下の下した本格的な罰は愚か者の第一王位継承者としての資格を取り消し。
まぁ王の決めた婚約を勝手に放棄し、大した功績もないたかが伯爵家の令嬢と婚約するとか言えばそうなるだろう。しかも結婚した令嬢は王族とは関係ない子供を身体に宿してる。
殿下も此処は一応納得した様だ。令嬢は悔しそうだ……。
そして次に王族としての義務、生徒会での仕事を放棄した咎により、王族の資格がないと王族としても追放が決まった。
決定を聞いてわめく愚か者。
最後は妹の冤罪の報告、尻軽女の怒りに震えた表情は不快だった。貴様に怒る資格が有ると思うのか?
さて、先ず取り巻き連中への罪は、役目を放棄した王子の行いを諌めるどころか自身も快楽に身を委ね高位貴族としての役目を放棄し、あまつさえ無実な令嬢に冤罪を押し付ける事に加担した。
役目を放棄した事への罰は家からの追放、次に冤罪の加担に対しての罰は…………牢獄に入れられた取り巻き達。
俺達ノービリティ騎士が罰を下そうと牢獄に行くと牢獄から微笑んだ母が出てきた。
母が女に狂ったのなら、男で居る事がダメだと……男としての機能を削除したと微笑んでいた。
切り取ったモノはどうするか聞かれた。
…ノービリティ騎士として彼等への制裁は済んだと即刻避難した。
母がどうするのーとか聞いてくる声は聞こえない!
次に愚か者や尻軽女だが……父が既に手を下していた。
と言っても……二人を粗末な小屋に入れただけだ。ジックリ自滅させるそうだ。
予想した通り俺達がやることは残ってない。
さて……呼んだのに役目がない猛り狂ったモホチガ隊をどうしよう。此のままだと関係ない団員に襲い掛かり兼ねない。
仕方無いので罰を下す予定の貴族の元へ猛った野獣達を放つ事になった。
モホチガ隊を起用した結果…成果はあった。
いや、悪党を成敗すると言う結果だけ考えれば大変効果的だ。だがモホチガ隊の刑の残酷さにベテランの俺でさえ身の毛がよだち悪党に同情してしまった。
断罪した悪党は全て………精神が破壊され再起不能。
悪党達で正気なのは……いっそ殺してくれと泣き崩れてた。
だが極上の獲物を逃したモホチガ隊の猛りはまだ消えない。血の昂りが俺達にも向けられる。元の任地に戻そうとしたらオレの身を要求してきた。
……仕方無い…もう少し悪党どもの刑罰を頼もう
…これから罪を犯した貴族達は地獄を見るだろうな。
「感謝する」
…………イイ男のモホチガの輝く目を見て……これは必要悪なんだとまるで新人だった頃のように自分に言い聞かせた。
…………この時はまさか野獣達のせいで王都がアレほど混乱するとは思っても見なかった。
……
再起不能になった悪党、何故かソチラに目覚めた悪党の報告を聞いて、頭を抱えていたら妹から手紙が来た。
『兄様へ、王都の様子はどうですか?私は辺境に来て様々な事を学び充実した毎日を過ごして居ます。この前ニイ様や父様母様からも心配される手紙を頂きましたが、ふふ、私は不幸では有りませんよ。……むしろ天国です。
……柵がないって本当に幸せですよね。
好きな時に寝れるんです。貴族の社交なんて無いんです。
本当の自分をさらけ出せるんです。
…それに…何より…辺境は本当に純粋な子が多いんです!
服を脱いで水浴びで偶然のお触りありです!水浴び無くても過剰なスキンシップもOK!兄様が好きな、『ゴスロリメイド服』とか喜んで着てくもします。一緒に寝てと頼むと喜んで寝てもくれます。勿論はだ、可愛いパジャマ姿で……他にも……
純朴な娘に囲まれた生活は大変……愉しいですわ』
……………………
「団長!大変です!モホチガ隊がまたやらかしました!」
「団長!モホチガ隊への入団希望者が多数来てます!どうします!?」
「くそ!ショジフ婦人達からモホチガ隊による公開処刑を求めた要望書がまた来てます」
「団長!何で泣いて手紙を書いてるんです!?」
「あれ、公爵夫人」
……妹よ俺もお前の元へ行こう。手紙を送って、
さて、そうとなれば団長から退かねばな!
……は、母上何故此処に……
ノービリティ騎士、人として大切な何かを引き換えに強さを手に入れた騎士団