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エピローグ、あと何年かだけは

 お父さんの自転車は河原に放置されていたもので、最近働いていなかったのは自転車の練習のためだった。パチンコにもほとんど行かず、毎日河原で自転車の練習に励んでいたらしい。泥だらけの作業着は、ブレーキが握れなくてわざと転倒した時に汚れたのだとか。


 なんでそんなアホなことを。

 軽蔑のまなざしを向けると、缶ビールをぐぃと煽ったお父さんは満面の笑みを浮かべた。


「どうだ、父さんだってやればできるだろ」


 それは、どういうことですか。

 テーブルの上の焦げて崩れた「卵焼きになるはずだったもの」をつつきながら首をかしげた。途中までは綺麗に巻けていたはずなのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう。


「自転車なんて、乗れなくたって死にやしないよ」

「んなこと言うなよ。楽しいだろ、乗れた方が」


 お前もやってみろとばかりに言うけれど、私の体型じゃ厳しいにもほどがありますって。


「無理無理。デブだもん」

「痩せりゃいいじゃないか」

「痩せるぅ?」

「どうせ冬の間は暇なんだろ。だったら腹筋でもしてろ」


 何とも雑なお言葉に、私は呆然としながらもうなずいていた。

 小学生の頃は、自転車には乗っていたはず。そういえば、自転車のライトが蛍に見えたのは香織さんのせいだっけ。香織さんの自転車、なぜかライトが蛍の光と同じ色だったから。

 ま、痩せれば乗れないこともないかもね。そうだ。蛍火色のライトがついた自転車を探しに行こう。仲間にはなれなくても、蛍にはなれるかも。


「たっくんも! たっくんも!」

「おう、父さんが買ってやるぞ」


 自分の子供かも確かではない、たかだか二か月一緒に住んだだけの子供にそんな約束していいのか。というか、あんた収入ほぼゼロでしょう。私は一銭たりとも出しませんからね?

 こんな人のところに、たっくんを残していくわけにはいかない。だからもう少し、あと何年かだけはこの家にいてあげてもいいかな。

現実では放置自転車を持って行っても窃盗罪になるようです。よい子は真似しないでねー(笑)

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