第3話
君たちは深海生物というものを見たことがるだろうか?
まあ,自分だってそこまで詳しいわけではないが,たとえ現代に生きる日本人なら,スーパーやテレビで見たことがあるだろうし、1匹2匹位なら名前を出すことができるであろう。(まあ,少なくともキンメイダイやアンコウの名前すら聞いたことすらないという現代人はまれだと思う)
かの生き物たちは割とグロテスク……いや特徴的な見た目をしている生き物が数多くいる。
いや,ある意味それは深海向けといったほうがいいのか。
ともかく,彼らは深海に体を合わせて進化しており,その特徴を生かして深海で日々生きているのだ!
……何が言いたいかわからないって?
まあ,なんだ,うん,自分でも何がいいたいかよくわかってないし,とりあえず,結論から言おう。
自分は助かった。
そう,奴はこの部屋に入ったせいで死んだのだ。
どうやら件の俺を丸呑みしようとした【サーテ海の船底喰い】は,海の生き物らしく,少なくとも空気に満ちたこの部屋ではまともに生存することができない生物であったようだ。
おかげで船底喰いの歯が自分の皮膚をそぎ落とすより先に奴が勝手に絶命。
結果,特に怪我もせず,自分は奴の口から脱出することができるという流れになったのだ。
またこいつが動けなくなった自分を直接噛んだりはせずに丸呑みしてくれたのも大きいだろう。(なお,四肢はしびれていても触覚は残っていたので,皮膚にあたる奴の歯のおかげで生きた心地はしなかったが)
……まあ,ともかく今は自分の迂闊さと生き残れた豪運に感謝しよう。
しみじみそう思いながら,破裂死した奴の体液でべとべとになった室内で【サーテ海の船底喰いの刺身と味噌汁】を食べながらしみじみそう思ったのであった。
「……白米がほしい。」
≪これが自分のスク水を着た理由≫
第3話
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素材交換スレ part89
365. 名無しの英雄
【出】≪スキル・腐肉化≫の呪文石
【求】解毒剤,またはそれに準ずるもの(ただし,魔法毒も解除できるものに限る) 手数料・5ソウル以下
【備考】部屋を出た瞬間ゾンビ犬っぽいのにかまれて現在,ゾンビ化の真っ最中です。
このままだと明後日には完全にゾンビ化してしまうとのことです。
助けてください。
366. 名無しの英雄
>>365 手数料5ソウル程度でゾンビ化が解けるレベルのポーション送れるわけないじゃん。
それに≪スキル・腐肉化≫は自分がゾンビになっちまう地雷スキルじゃねーか
>>1を見て,出直してこい。
367. 名無しの英雄
一応,呪文石事態を砕けば≪ソウル≫にはなるからそこまで言うほどでもないでしょ
大抵,どんなにくそでも50ソウルにはなるし。
まあ,それでもゾンビ化が解けるレベルの解毒剤と釣り合うかは疑問だが。
368. 名無しの英雄
鑑定・内容ソウル量 16ソウル (´・ω・`)
369. 名無しの英雄
だめじゃん
370. 名無しの英雄
なんというくそ
371. 名無しの英雄
最下級のガチャすら回せないとか,まさにゴミ。
372. 名無しの英雄
……むり?(´・ω・`)
373. 名無しの英雄
無理
374. 名無しの英雄
りーむー
375. 名無しの英雄
まあ,運がなかったと思っておとなしくちね
376. 名無しの英雄
ひどい!(´;ω;`)
他人事だと思って(´;ω;`)
377. 名無しの薬術師
さすがに手数料5ソウル以下はどんなに粘っても無理だ。
たぶん初心者だからその辺はわからないだろうが,魔法関連の品や内容ソウル量が多いものはどんなにしょぼくても送るのに結構手数料がかかるからな。
けど,私なら20ソウル以下でゾンビ化を解ける薬を作ることは可能だ。
詳しい症状がわかれば5ソウルレベルでも可能なのだが。
378. 名無しの英雄
なんという,薬術師さんのぐう聖
つんでれメガネの名は伊達じゃない
379. 名無しの英雄
わーツンデレ!ツンデレがきたぞ!
380. 名無しの薬術師
うるさい,モルモットにするぞ。
ともかく>>365は手数料分をその呪文石を砕いてでも稼いでおけ。
今から私が解毒剤を作っておくから。
381. 名無しの英雄
ありがとうございます!ありがとうございます!
……けど,外にいる敵,ゾンビだらけな上,噛まれたらさらにゾンビ化が進行するんですが……(´;ω;`)
382. 名無しの英雄
それはさすがに甘え。
383. 名無しの英雄
新米でもほぼ一般ピーポーでもゾンビくらいならいけるやろ
……まあ,場所によって強さが全然違うから断言できんけど
384. 名無しの英雄
とりあえず,これ以上スレチだから,この話題はこっちでな
つ≪×××××≫
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「次スレ次スレ……って、あ、これいけねーじゃん。
まじか~……」
画面には『そのスレッドを見るにはあなたのソウル量が足りません』とかいう画面が出てきた。ガッテム!
なお現在、行儀は悪いかも知れないが、パソコンの前で食事をしつつスレを観察していた。
まあこの部屋に自分以外の人なんていないから気にしもしないが。
どうやら自分以外にも扉を開けた瞬間にひどい目にあった同胞は多いようだ。
レベルが上がったおかげか、一回外に出たおかげか見れるスレ数は飛躍的に増えた。
そのおかげでわかったことはステータスの【ソウル】は【なんか生き物を殺したりした場合に手に入る】ものでこの掲示板やパソコンのほかの機能を使う上での【貨幣】のように使われており、これで売り買いできる事。
また、一部のスレ住民はこれを使ってマジックアイテム的なものを作れるらしい。
で、もう一つの【英雄点】とやらはRPGゲームで言う経験値なもの。
此方は別に生き物をころころしなくても、人助けしたり、何か仕事するだけでもたまったりするらしい。
で、これを消費して、レベルを上げたり、スキルレベルを上げたりするという仕組みだそうだ。
なお、スキルとは文字通り、覚えるとスキルの名前の才能や知識、そして補正が入るらしい。
例えば『剣術』というスキルだったら、剣について詳しくなって、剣をうまくふれるようになり、また、剣を持ってる時の身体能力が上がる。
『料理』なら、料理がうまくなったり、料理についての知識を手に入れたり、料理の時だけ異常に感覚が鋭くなったりという感じだ。
なお、スキルがなくても普通に料理やら、剣術を扱えたりはするのでなくてもどうとでもなるらしいが。
『呪文石』はそれを覚えるための消費アイテムで、使えばスキルがおぼえられるとのこと。
当たり外れは当然ある。
さて、それらを踏まえて……
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【NAME】 ニケ
【クラス】海狩人Lv1 【称号】ドッキリ
英雄点 50/1000
魂 20/1000
持ち物
『蛮勇の呪文石』(未鑑定)
ブルーシルバーナイフ・解体用
スキル・なし
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これが現在の自分のステータス。
英雄点はまだ使ってないけど、あの船底君を倒した(自爆した)時点で勝手に『クラス』と『称号』、そして、ステータスが更新された
そのおかげかなんとな~く、体が軽くなった気がしなくもないし、頭の中になんとなく海に関する知識が入ってきたような気がしなくもない。
というか、この称号はなんやねん。
ドッキリした側じゃなくてされた側なんだけど……というかこれ、単なる呼び名的な何かで深い意味はないよな?そうだと信じたい。
パラメーター的な意味で知力にマイナスがかかってますよーとか言われたら目も当てられない気がする。
英雄点を使えば、HPとか知力とか細かいステータスもあげれるっぽいけど……
其れで細かく上げるくらいなら、クラスレベルを上げるまで取っておいた方が効率がいいとスレ民談。
あ、この魂に書いている数が『ソウル』の量、単位であるらしい。
ああ、『蛮勇の呪文石』はレベル上がってからもう一回調べてもたけど、結局よくわからなかった。
ん?なんか持ち物が増えている上にさらっとさっきから食べているその刺身と味噌汁はどうしたかって?
それは……
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素材交換スレ part89
752. 名無しの海狩人
【出】サーテ海の船底喰いの切り身 3K
【求】手を使わずにもてる耐水性ライト (手数料20ソウル以下)
【備考】最後の1つです。今回は口、触手あたりの部位です。
注・触手には毒が含まれています。触ると軽くピリッとし、四肢がマヒする効果があります。
現在は死亡してるため、効果は弱くなってますが、それでも毒自体は健在のようです
なお、今回はこれが最後の出品になりますのでご注意ください。
参考・『画像ファイル・××××』
>>289 件の差し入れありがとうございました。おいしかったです。
味は、シジミとアワビを足して2で割ったような味で、食感はクラゲとホタテの中間みたいな感じでした。
753. 名無しの英雄
お!スク水さんキター!
スク水娘の汁付触手はぁはぁ
754. 名無しの英雄
変態スク水ニキおっすおっす。
まだ、呼び出されてから初日なのにこんなエロ触手に絡まれるなんて
スク水ニキの変態神への愛されっぷりは半端ないでぇ……!!
755. 名無しの料理人
>>752 お喜びいただけたようで何よりです。個人的にあれは見た目も味もイソギンチャクに近いと思いました。
まあ、あんなに大きいイソギンチャクを調理したのは初めてですがw
しかし、今度は触手部分ですか……毒入りの部位は調理が面倒くさそうなんですよね。
一応、未知の食材って意味では興味は惹かれるけど……今回はパスです。
756. 名無しの英雄
巨大イソギンチャクに絡まれるスク水……っう!……ふぅ。
757. 名無しの英雄
……ふぅ。
758. 名無しの導師
……ふぅ。
759. 名無しの英雄
……ふぅ。
760. 名無しの英雄
何このへん変態共wwww中身は男だぞwww
……ふぅ。
761. 名無しの英雄
いや、けど、まじめにエロゲみたいな感じだったら、トラウマになってるんじゃないか?
大丈夫か?何か勝手に手が震えたりとかそういう後遺症はないわけ?
自分も性別変った後に逆エロゲみたいなことが起きた身だから、その気持ちよくわかるし。
……相談に乗ろうか?
………はぁはぁ。
762. 名無しの英雄
やっぱり紳士しかいないじゃないか!
……ふぅ。
763. 名無しの人形師
何だこの変態共は!スレ違な上、新人をドン引きさせるような対応はやめろよww
早く本題に戻ろう!
なお、俺はその触手を買うぞ!
その触手を俺の人形に装着させるんだ!
これでようやく、あの魔人(♀)共に合法的に触手プレイできるドン!
764. 名無しのネクロマンサー
本題でも変態しかいない件。
あ、自分も交換したいです
自分はそれを女性尋問用のゾンビに組み込むだけだから。
全然、やましい理由じゃないから。
765. 名無しの英雄
>>755以外まともなスレがない件
初日から>>752といい>>365といい、今回はなかなか期待できる新人が多そうだね。
なお、どちらも生き急いでいるのですぐ死にそうという点を除けば
766. 名無しの英雄
やめろって……
767. 名無しの英雄
マジでやめろ……
768. 名無しの英雄
報告・>>365、幽霊のゾンビとかいうわけわからんものに攻撃されて、リミットがさらに縮まった模様。
なお、その間に収穫なし。
769. 名無しの英雄
……あっ(察)
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まあ、と言う様に、死体とソウルを手に入れた後、さっさとこれを他の人たちと交換したからである。
だから、この料理もナイフも全部交換品。
ナイフはソウルと交換で料理と食器は解体したこれの切り身と交換した結果である。
というか、うん、確かにこの船底喰いは、冷静な目で見ればイソギンチャクに似ているかもしれない。
口の凶悪さとか、触手が光るとかいう点、そして、なにより大きさが自分を丸のみできるという点を除けばだがな!!
さて、若干スレ内容にドン引きしながらスマホで写真を添付しつつ、どの品と交換するかを厳選していく。
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【NAME】 海光石の腕輪
※鑑定済み
海光石と龍クラゲの髭できた腕輪。
ギルガ族の女性の実用性にあふれる装飾品
海水に浸けると輝き、その水の質や石の純度、そして温度により輝き方が変わる。
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で、決まったのがこれ。
パッと見はぼろい土産屋で300円ぐらいで売ってそうな感じ。
糸の方は半透明のゴム状で石の方は曇りの強いビーズのようである。
そもそも、ギルガ族とか海光石がよくわからん。
交換してくれたネクロマンサーの人も、死体からはぎ取ったものとしかいってなかったし。
一応は発光の強さは保障するといわれたし、呪われていたり、魔法の品ではないとのこと。
そういう場合はもっと交換の手数料がかかるはずだからだと。
……でだ、なんでこんなものを欲したかと言えば……
「……お、結構光るなこれ
まあ、けど、全然先が見えないけど。」
腕輪をつけた方の手を扉の向こうへを突き出すと、その手は海水の中へと入っていき、腕輪が部屋の明かりに負けないくらいに強く発光する。
さらに言えば、体が海水に触れたからであろう、自分の感覚が鋭くなる感じを受け、聴覚、視覚、そして第6感がこの扉の周囲にはとりあえず敵になりそうな生き物がいないということを伝えてくる。
そう、この扉の先は、なんと【海中】なのだ。
手にあたる水は強いし塩気を帯びており、そこからは磯の匂いが漂う。
しかも、夜だからか、深海だからかはわからないがパッと辺りを見渡す限り扉の先は真っ暗。
その上扉の先の足元には地面がないことがわかる。
「……改めて見るとこええ……」
まあ、どんな原理かは知らないが、この扉は自分の手やさっきの巨大イソギンチャクは通してもこの扉の先に広がる海水は部屋の中に流れ込まないようになってるらしい。
海水が壁になっている様に少し感動しつつも、あまりの暗さとその温度の冷たさに背筋が寒くなる。
「……けど、いつまでもこうしてるわけにはいかないんだよなぁ。」
まあけど、自分にはこの【水中適正・S】を信じるならたとえ深海でも、最悪渦潮相手でもなんとかなるらしい。
スレ民中には【マグマ適正・S】の装備を持っていて、それでマグマダイブしている人もいるそうだ。
其れだと、原理はわからないけど、どんなに深くもぐったり、マグマの質が違っていても関係なく行けたから、多分自分の【水中適正・S】で、この先もいける……はず。
けど、そういうのとは別に目の前に広がる暗闇への恐怖と、海中というある種未知の場所への恐怖、そして、さらにここは異世界なのだ。
これで簡単にわーい!突貫だ―!と突っ込めたとしたら、それは勇敢というよりはむしろ無謀というのじゃないだろうか?
「……そうだ!ここはひとつ験担ぎをしよう!」
そう頭を切り替え、スマホを操作してそれを取り出す。
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【NAME】 『蛮勇の呪文石』
※これを完全に鑑定するにはあなたのステータスでは足りません
何かのスキルが込められた、赤と緑の斑の呪文石。
これを使用すれば、あなたは【蛮勇】にふさわしいスキルを得られるだろう。
・この中には『魂』が『65』含まれている
・これを使用するとあなたは新しいスキルを覚えることができる
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スマホを操作する、画面からピンポン玉ほどの宝玉のようなものが飛び出してくる。
そうだ、今から自分は初めから持っていたこれを使ってみようと思う、スキル習得に。
正直名前からしてアレであり、鑑定ですらわからないこの品を自分に使うのはかなりギャンブルな気がするが……
それでも、できることが広がるというのは大きいし、初め自分がこのスク水を与えられた上で外が海中だったことを考えれば、おそらくこの呪文石で覚えられるスキルとやらも海中で行動する際に役立つ物のはず!
そう!できればせっかく異世界に来たんだ!願わくは、魔法やなんか特別な技術みたいなワクワクを俺に下さい!!
お願いします!!
【あなたは『蛮勇の呪文石』の呪文石を使用した!】
【おめでとう!あなたは『闘技』のスキルを覚えた!】
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【スキル】 『闘技』
※最下級スキル
敵対する生き物と戦うためのもっとも原始的な技術
素手や近くの物で相手に殴りかかる術を覚える
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「明日から頑張る。」
そういって、俺は扉を閉めて、船底食いの体液でぐちゃぐちゃになってる布団へともぐりふて寝したのであった。
※今回出てきたけど、解説しきれてない道具
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【NAME】 ブルーシルバーナイフ・解体用
柄は海鳥の骨。刃は銀に海龍の骨粉、屑鉄などを混ぜてできたナイフ。
銀に含まれる抗魔性はかなり薄まってしまっているが、本来の銀製よりも
安価な上に丈夫、何より恐ろしくさびにくいという利点を持っている。
そのさびにくさから、漁師や海人、さらには魚人でさえこれを愛用している。
・【近接攻撃ボーナス】
・【抗腐食】
・【解体技能ボーナス】
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