第2話
彼、○○は別に普通の男性学生であった。
性癖もあえて言うなら、胸とは言うがそれでも尻や太腿も好きというだし、女性の前ではやっぱり心が綺麗な人がいいと言っちゃうくらいには普通の男だ。
ストライクゾーンも大体同年代±3歳くらい。
SFやファンタジー、冒険という言葉にまったくワクワクしないというわけではないが、人生を棒に振るうならNOという選択をするだろうというぐらい普通、平凡な男であった。
しかし、そんな彼も……
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初心者用スレ part35
45.名無しの英雄
というか、自分元JKなのに筋肉もりもりマッチョメンとかになってるんだが、これって一生引きこもっていてもいいよね?
まじで。
46. 名無しの英雄
>>45 惰弱乙 俺なんて下半身馬だぞ。
まさか人外になるとか、ふざくんな。神様マジでぶっころしてやりりてぇ
47. 名無しの英雄
こっちなんて、不定形生物だぞ。
もはや手足レベルじゃなくて、顔すらない状態だぞ。
48. 名無しの英雄
イケメン銀髪になってる俺マジ勝組wwww
背中の羽も任意で出し入れ可能な上にカッコいいし、周りの愚民どもが勝手に平伏していってるww
これがおまいらと俺の英雄力の違いだなwww
49. 名無しの英雄
死ね
50. 名無しの英雄
死ね
51. 名無しの英雄
凸
52. 名無しの英雄
死ね、氏ねじゃなくて死ね
53. 名無しの英雄
おい、なんか書き込もうとしたら、【ここでその言葉は制限されてます】全然書き込めなかったんだけど。
54. 名無しの導師
割と書き込めないこと多いから気を付けて。
具体的にはステータスに書いてるワードは大体このスレだと規制される感じ。
レベル制限も厳しいし。
55. 名無しの英雄
何それツラタン。なんかやけに具体的なアドバイスが足りないと思ったらそういうことか。
56. 名無しの英雄
話をぶった切って悪いんだけど、自分、元男なのに今はスク水着てる女なんだけどだけど、これは神様の趣味か?
57. 名無しの英雄
男なのにスク水 変態乙
58. 名無しの英雄
変態乙
59. 名無しの英雄
変態乙
60. 名無しの英雄
変態乙
それはそうと、スペックうp
61. 名無しの英雄
へ、変態だ―――!!!!
ところで、そのスク水は旧式?色は白い?又はお腹から水抜く奴ある?
其れならば多少は認めてやる。
62. 名無しの英雄
おwwwまwwwえwwwらwww
ところで、貴殿は巨?貧?
貧なら許す
63. 名無しの英雄
ふええぇぇぇ……ここ、変態ばっかりで怖いよぉ
まあ、幼女ならスク水着ててもおかしくないよね。
で、そこんとこどうよ?
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今はこうして、あっという間に平凡から脱却してしまったのであった!
……彼の望む方向とは大幅に違うベクトルではあったが
≪これが自分のスク水を着た理由≫
第2話
掲示板に盛大に変態扱いされて笑われたけどに、僕は元気です。
まあ、いい。
あんまり掲示板で情報は得られなかったが……それでもいくつか分かったことはあった。
初心者スレによると、どうやら今なら自分はこのなぞの『スマホ』を起動できるらしい。
……お、開いた。
で、中は……メールと掲示板はパソコンと連動してるっぽいな。
お、これがそれか。
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【NAME】 ニケ
【クラス】??Lv0 【称号】??
英雄点 0/0
魂 0/0
持ち物
『蛮勇の呪文石』(未鑑定)
スキル・なし
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これがステータスとやららしいけど……
これだけじゃあ、まったく自分の状態がわからないなぁ。
けど、まあ、Lv0っていうのが低いということだけはわかる。
というか、そもそもこの名前自体、明らかに自分の名前ではないような気がする。
しかし、掲示板の情報を見る限りどうやら、ここに転生させられる際に多くの人はその名前が奪われてしまい、新しい名前に代わっているのが仕様らしい。
かくいう自分も自分のもともとの名前がなぜか思い出せない。
けどもうちょっと男らしくて、クラスに自分と同じ名前の人が2人いたほど没個性的な名前だったという名前そのもの以外のことは覚えているから、記憶云々で恐怖というのはあんまり感じないが。
一応、HPやMPなんかも書かれてはいる上、画面を切り替えれば魔法抵抗率やら、筋力やらも乗ってはいるが、数が膨大すぎる上に、わけがわからないステータスも掲載されているのでカットカットカット!
満腹度や聴力はまだしも、オルゴン係数やら、霊視力とかってなんじゃい!
5パーセントとか言われても比較対象がいないから高いか低いかもわからんぞ!
まあ、けどステータス画面の中に、自分の今の全体像が映し出されているのがあるのはありがたいな。
……水色の髪に、金目とかどう考えても日本人じゃないです。ありがとうございました。
というか、時々視界の端にチラチラ青いのが映ってたからわかってたけど。
見た目は10代半ばかな、体格的にも胸囲的にも。
一応脱ごうかとも考えたけど、裸とスク水どっちがましか考えてこのままにしておいた。
しかもこのスク水はなんかあるっポイし
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【NAME】 不思議なスク水(未鑑定)
※これの情報には【隠蔽】が施されている
※あなたのスキルではこれは完全に鑑定することができない。
・これを装備するとあなたは【水中適正・S】を得る
・これを装備すると水中での行動に一部のステータスに【+10】される。
・これは【常時・清潔】の呪文が施されている
・これにはまだ隠された力がある
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……まあ,怪しいなんて言う言葉が生ぬるい位,わけわからんものなんですがね!
どうやら、この『スマホ』のカメラ機能を使えば、物を鑑定できたり、収納できたりするようだ。(どちらも自分のステータスに依存するらしいが。)
というか,このスク水、ある種呪われていそうにも思えるけど,なぜか着ていて(精神的抵抗は別として)そこまで不快感がないし、あつかったり寒かったりすることもない。
それに【常時・清潔】やら【水中適正・S】なんかわからんけどすごそうである。
とくに後者は水中だと、髪の色が変わってスピードが3倍になったりするのだろうか?
むう、この部屋には水がないから検証しようがないなぁ。
というか、水どころか食料もトイレもないけどな!
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初心者用スレ part35
213.名無しの英雄
この部屋、飯もトイレもないんだけどどーすんだよマジで。
もしかして、ここにいたらそういうのから解放されるとか?
……まあ、今自分の血を舐めて飢えをしのいでるから、そんなことないってわかってるんだけど。
214. 名無しの英雄
普通にこえ―よ。頭大丈夫かよ。
自分、普通に親からご飯作ってもらってるけど、なんか人によって違うの?
もしかして、親が育児放棄してるとか?
215. 名無しの英雄
>>213 そこに不思議な扉が見えるじゃろう?
>>214憑依組は関係ない話だよ。
なお、自分は普通に街中で笑ったww
気のいい宿屋のおばちゃんにお皿洗いさせてもらってますww
216. 名無しの英雄
何それ裏山。
自分なんか茸食ってお腹壊したんだけど。
何とか、他の板のおかげで助かったけど
217. 名無しの英雄
おう、こっちは周りにマグマだらけで出た瞬間熱くて焼け死ぬかと思ったぜ。
しかも、今少し外を出て歩いてみたけど、食料や水となりそうなものが何もみあたらない。
割とマジで積んだかもしれん。
218. 名無しの英雄
え?なに、もしかしてこれって完全に運ゲなの?
運悪いと出た瞬間毒沼やバリアや壁の中にいる!で詰んじゃったりするの?
其れならおれ一生ここから出ないつもりなんだけど。
219. 名無しの導師
部屋組は基本的には場所はランダムですけど、一応は何とかなる場所が多いらしいです。
いったん外に出て何かしら『意味のある行動』をすれば、『魂』や『英雄点』がたまるので、それで自分を成長させてください。
そうすれば大体のことは何とかなりますから。
なお、参考までに今までで私が聞いた中で一番ひどいと思った場所は革命軍の大型演説中のリーダーの頭の上だそうです
220. 名無しの英雄
何それ怖い。
221. 名無しの英雄
けどそれ、俺の火山よりはましじゃね?
頑張れば物食えそうな分だけ。
222. 名無しの英雄
バカ言え、とりあえず自分の意思で何とかなって、いったん外に出て部屋に戻れただけでかなりましだろ。
導師の人のだと、出た瞬間射殺とか、拘束とかされそう。この世で一番怖いのは人間だよ。
まあ、どちらにしろ、扉の先に暗闇だけしか広がってない俺に比べればまし。
まさにお先真っ暗ってか。
223. 名無しの英雄
うええぇぇぇぇいいwwwww
扉開けたらwwwww浴場でしたwwwww
美人さんの生おっぱい最高wwwwww
うはっwwwwwwww悲鳴かわゆすwwwwwww
うぇぇぇいwwwwww兵士にかこまれたんごwwwww
極刑とか姫様とか聞こえるんごwwwwwww
俺オワタ\(^o^)/wwwwwww
オワタ……
224. 名無しの英雄
Oh……
225. 名無しの英雄
生きろ……
226. 名無しの英雄
生きろ……
227. 名無しの英雄
むしろ無駄死にするよりははるかにましなんじゃないんだろうか?(名推理)
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……これは何にせよ、一度外にでなきゃいけないのか。
……で、でたくね~。
他の人たちを見るに、ここを出て実は平和な場所でしたーっていう人の方がはるかに少なく、大概の人が何かしらの困難に当たっているのがよくわかる。
ましてや今の自分は、前の自分と体は違うし、恰好は変だし、ましてや素足だし、スク水だし。
例え街中であっても森林の中でもどんな状況であってもひどい目に合うのが目に見えているのがつらい。
けど、このまま部屋にこもり続けて、衰弱死する方がもっとつらい。
正直、もっとこのスレを覗き続けて、情報収集するのも一つの手だ。
しかし、こうも考えられる。今はまだ体力が残ってるし精神的にも余裕がある。
今出ないと、永遠にここから出る踏ん切りがつかなくなり,死ぬまでここに座っていてしまうのではないのだろうか?
……とりあえず、いくつかのスレやスマホをいじったが、これ以上有益な情報は手に入らないようだ。
その上、水がないという状況のせいで喉に乾きをいつにもまして強く感じられる。
このままじっとしているだけでは嫌な考えしか頭に浮かばないであろうことがなんとなくわかる。
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【警告!】この扉を開けるには、覚悟が必要となります。
覚悟はできていますか? Y/N
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扉に警告が浮かぶが自分はその言葉にかかわらず、ドアノブをひねる。
……やらずに後悔するなら、やって後悔しよう。
それが短い自分の人生で学んだ教訓の一つだから。
後悔しないための行動だから……
そして、その扉をわずかに開けた瞬間、それはきた。
空けた扉の隙間に強引に入り込んでくるそれ。
一瞬の出来事だが、其れにきずき扉を急いで閉めようと押さえつけるも、それはそれ以上の力で押し返してくる。
こちらの抵抗空しく、それは強引に部屋の扉を押し開け、そのまま中へと押し入ってくる。
部屋に入ってきたのは,自分の腕よりはるかい太く巨大な触手。
青黒く光り,よく見ると水ではない何か粘液を分泌しているのもわかるしている
さらに触手の根元である扉の先に見えるのは漆黒の空間と巨大なアナ……いや口であった。
それは恐ろしいほどの大口を開けており、中にはまるでのこぎりのような,鑢のような牙が生えそろっている。
そして、生物特有の生々しい口腔内がその奥に存在した。
こちらが驚きに固まっている間にも、その触手群は一斉にこちらのほうへと伸びてくる。
あわてて躱そうとしたが,そのうちの1本が足に触れた瞬間、体にピリッと電流のようなものが走り、四肢の力が抜けていく。
少しでもそれから抵抗しようと、這う様に部屋の中へと逃げようとするが、結局それは己の態勢を変えただけであった。
そして、それは動けなくなった自分をまるでじわじわと追いつめるかのように、のっそりとした速度で部屋の中へと入ってくる。
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【NAME】 サーテ海の船底喰い
【適正レベル】 5
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自分の体にドンドン巻きつくぬるりとした触手とこちらを見下ろすかのように頭上に広かる凶悪な口を見ながらこう思った。
……やっぱり、やって後悔する方も同じくらい嫌なんだな……っと。