許せない
谷瓦瑞穂は雨野を追う者だった。彼女は昨夜雨野に襲撃された朝倉響子の友人であり、そしてそのことを抜きにしても雨野に個人的な因縁がある者だった。
雨野はかなり荒れているようだ。彼の境遇には同情するが、許すわけにはいかない。
因縁を除外しても瑞穂は友人の響子の仇を取りたい。彼女は今病院で検査を受けてる。竹刀の打撃とはいえ、大の大人が叩いたのだ。華奢な女生徒でしかない響子の体に異常がないとも限らない。
──許せない。刺し違えてでも、雨野先生、いや、雨野晴海をやってやる。
彼女は放課後、響子とも共通の友人であり同じ思いの佐久間阿智を連れて雨野晴海を捜索することにした。
阿智は友人が痛めつけられたことに対し憤慨していた。加害者を同じ目に合わせたいという思いで、それは瑞穂も同意だった。
まずはどこを探るべきか。警察が雨野の家を見つけられないことから、この近くに彼の住まいはないとみるのが妥当だ。ならば遠くに住んでいるか、あるいは誰かの家を間借り、拝借、同居しているか。
単純にそこらをしらみつぶしに探したとしても雨野の居場所を突き止めることはできないだろうと、時間が経ってから瑞穂は気付いた。
「じゃあどうすんだよ」
半ば理性を失いかけてる阿智をなんとか宥め、瑞穂は今日はお開きにすることにした。
「仕方ないか」
「ごめんね」
馬鹿女めと瑞穂は内心阿智にいらついていたが、仲間内での諍いはごめんだ。適当に謝っておく。
別れたあとにため息をついた。物事はうまくいかない。瑞穂はこんな異常な事態以外にも青春の悩みをいろいろ抱えている。若者は、女子高生なんてそんなものでいいはずだ。外部の異常者の問題などに巻き込まれ、貴重な思春期を奪われてたまるか。やっぱり雨野晴海は許せない。家で風呂に浸かりながら瑞穂は雨野に対する憎悪の感情を深めていった。




