雨
はたして雨野は再び現れた。今度も陶矢のクラスに現れたのだが、今度は別のクラスの教室を荒らしてきたようだ。最前列の廊下側にいる男子生徒の隣の女生徒を竹刀で頭頂部を全力で叩き、それから全力疾走し、どこかへ消えてしまった。
再び警察がきた。今度は午後の事件だったのでその日の授業はそれで終了になり、生徒は警察に様々な尋問を受けて家に帰らされた。
生徒たちの親が次々と駐車場に乗り込み生徒たちは帰って行く。それを、陶矢はぼんやり見つめていた。
雨が降ってきた。傘はある。帰宅しよう。親には連絡しなかった。たぶん大丈夫だと、陶矢はどこかそう思っていた。
校門にひと気がなくなると陶矢は傘を指し帰路を歩いた。陶矢の目に宿る輝きに、気付いた者はいなかった。
高校一年の頃、彼女に告白され、陶矢はずいぶん浮かれたものだった。天真爛漫そうな天使のような微笑み。告白された陶矢が有頂天になるのは仕方なかった。
奥手の陶矢だが中学のときに交際していた彼女がいた。沙織という彼女は、いつの間にか手を握り合う関係になっていたという感じだった。結局、いつの間にか付き合っていた関係はいつの間にか別れるという虚しいもので終わった。
彼女と付き合いはじめは緊張からぎくしゃくしたものだったが、彼女がこちらの緊張などあまり気にしていないということがわかると強気になれた。それからはフランクに接することができ、 互いに楽しみ合い、ぎこちないキスもしたし、拙いセックスも数回。楽しい日々だった。
今はもう彼女はいなかった。




