突然の暴力
御厨陶矢の目の前で異常者の雨野が女生徒を吹き飛ばしたとき、彼も、周りの生 徒もその光景の異様さに、クラス中がシンと静まりかえった。やがて、一人の女子が悲鳴を上げたのだが、陶矢はそこで我にかえった。どうして女という生き物は平気で悲鳴などあげることができるのだろう。甲高く、耳触りだ。それを聞けばその場の空気が普通ではないことは理解できるが、陶矢にとっては不快でしかなかった。
雨野はそれ以上のことがしたかったのだろうと陶矢は後になって思った。その目にまだ狂気をたたえていたから。
だが小柄だが逞しい体付きの雨野は僅かな理性で教師たちがくる前に窓から飛んで逃げた。一階の教室だ。窓からでも楽々と逃れることができる。
警察がやってきたのはそれから三十分くらいのことだろうか。吹き飛ばされた女生徒は顔を強打されており、目と頬がかなり腫れている。放心状態といった様子だ。しばらく学校にはこないかもしれない。
だが午後になると普通に授業が再開された。窓側の席の陶矢はちらりと窓の外を覗いた。警察が校外をうろついている。
携帯を開いてメールを確認する。隣のクラスの友人であり中学からの付き合いの真柴亮が先程の事件の詳細を知りたがっているようだ。
それなら、昼休みに接触してくればいいのにと思う。どうせ理由はわかってる。彼女と一緒だから忙しかった、そんなところだ。
虚ろな様子で陶矢は返事を返す。突き放すような返事ではないが、細かくもない抽象的な文章。興味があればまたメールするだろう。できれば返事なんてしたくないのだが。
最近、妙に倦怠感もあり、そしてたまに苛々する日々が続いている。楽しい気持ちになることなんてあまりなかった。
人生こんなことばかりなんだろうか。陶矢はやはり虚ろな様子でぼんやり窓の外を見つめていた。




