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眼が覚めたら草原に


主人公がやっと出た…

か、身体が痛いし寒い…最悪だ。あ、頭痛は無くなった。

これって、生きてるっつーかただ死んでないだけのような…。

ん…なんか温かい。寒気がとれてく。


なんだろう……?

優しい光が見えた。



「……つぅ!」


眼が覚めた瞬間形容し難い激痛が俺を襲う。どうやら夢で身体が重かったのは現実で重傷だったかららしい。特に左足は折れてんのか感覚すら無い。


俺は起き上がろうとと痛む身体に鞭を打って力を入れた。


「ちょっとアンタ大丈夫!?まだ起き上がっちゃ駄目よ!」


切羽詰まったような声と顔で覗き込んできた金髪金目の美少女。なんとなく見覚えがある。

どこだっけか。こんな美少女、一回見たら忘れないと思うんだが…。

少し懐かしいような最近またどっかで見たような…。ダメだ、思い出せん。


というかここは現実か。身体も痛いし当たり前かもしれない。


「……っ!な、なあここってどこ?」


思ったよりスムーズに声が出た。

俺は意外に頑丈な人間だったらしい。あの事故で死ななかったわけだし。


「ここはリベア城郊外、リベア平原です。あの、わかります?」


…はっ!自分で質問しておいて逃避してた。

俺が望んだのとは少し違う答えをくれたのは、金髪の子とはまた違った低めのアルトボイスだ。微妙にテノールかもしれない。

声の方へ向こうとしたら首が痛すぎて回らなかった。それを察したのか、桃茶色(でいいのか?)の髪のこれまた美少女が覗き込んできた。レンズ越しの柔らかい緑色が綺麗だ。

金髪の子に少し似ている。姉妹かなんかだろう。


どこか全くわからなかったので、もうちょっと詳しく質問しようと口を開いたら身体中が痛くて喋れない。特に首から胸元辺りがヤバイ。

さっきのは何だったんだ。あれか。ミラクルか。

外傷の殆どは癒えてるっぽいからこの子達が治してくれたのだろうか?せっかくの綺麗な顔には血っぽい黒ずんだ赤が付いてるし。


「外傷しか治してないのよ。苦しいだろうけど、身体のどこが痛いか教えて」


と金髪の子が言ってくる。だからか。筋とかめちゃくちゃ痛いのは。

治したって事はこの子は治癒魔法が使えんのか。いきなり珍しい人に会ったな。

身体の痛い所か…。全部ってのは…ダメだよな。


「…く、首と左足と背中」


頑張って声を出す。喉の辺りが凄く痛かった。


「ん、わかった」


軽くうなずいてそこに手を当てる。さっきの温かさを感じた。


「……魔力、足りないのでは?」

「ああ。さっき僕の魔力あげたん…です。あのままじゃルミさんが倒れちゃいそ…てしまいますですから」

「…なるほど」


よくわからない会話をしている。一人は知らない声だ。さっき黙っていたんだろうか。声からして若い男みたいだけど。

しかし良く噛む人だ。



少し経って、俺は立ち上がる事こそは出来ないが身体を起こせるようにはなったので、とりあえずお礼を言うことにする。「ええっと…ありがとな。助けてくれて。俺は黒斗。鷹羽黒斗だ。その…よろしく」


ついでに自己紹介も。ちょっと照れくさいな。これ。だって目の前の三人ともスゲー美人だし。

男もいるが。


「ふーん。クロトか。アタシはルミ。別に気にしなくていーよ。勝手にやったことだしね」


軽い調子で笑う金髪の少女はルミというらしい。

勝手にって…、いい奴だなこいつ。


「私はミミと申します。クロトさん。無事でよかったです」


ほっとしたような笑みを浮かべた茶髪の少女はミミ。物静かな雰囲気がルミとは対象的だ。見た目は似てるのに。

少しそわそわしているが、どうしたんだろう。


「僕はリンク。よろしくね。クロト君」


最後は銀髪に藍色っぽい瞳が印象的な凄い綺麗な奴。男だけど。いるもんだな男の美人って。柚希が特例って訳じゃ無いらしい。


こいつもどっかで見たかな。なんか見覚えがあるような………気のせいだな。ルミもリンクも一度見たら絶対忘れそうにないし。


それはさておき、最近俺の周りで美形のインフレが起きている気がする。

こいつ等しかり学校の奴等しかり…。

美少女はいい。…しかし野郎は駄目だ。悲しくなる。

神様は残酷だ。


そんなことをつらつら考えてたら、掛けられていた声に気付けなかった。


「あのー、あのクロトさん?「あっごめん!」…何故貴方はこんな所で倒れていたのですか?」ミミが丁寧な口調でストレートに聞いてきた。

回りくどく聞いて来るタイプだと思ったから意外だ。


『それはアタシも気になる』


見事なシンクロだ。


「話せば長くなるんだけど――」


かいつまんで事のあらましを話そうとしたら


「ならいいわ」


バッサリと切られた。泣きたい。


「ルミそんなにはっきり言っては失礼でしょう。…ですが急いでいる身ではありますし…。長いのはちょっと」


と言ってキョロキョロと辺りを見渡している。それを見て何か察しらしいリンクが


「…とりあえず歩かない?」


もっともである。



◆◆◆◆◆


カポカポと馬の足音がただっ広い平原に響いて消えていく。馬の足音は日常にもあった音だから少し寂しい気持ちになる。


今、俺達はリンクの乗っていた馬を連れて草原を歩いている。


「こ、これが馬…!」

「クロトさん。足は平気ですか?」


「ルミさん。あんまし暴れちゃ駄目だよ。吃驚しちゃうからねー」

「暴れるって何よ!?」

「大声もダメだよー」


左足が動かない――ルミに診て貰ったら案の定折れていた――俺と、治癒魔法の使用で疲れてるルミが馬に乗せて貰っている。

乗馬というか馬を見るのも初めてといった感じのルミが微笑ましい。

ミミは俺が落ちないように横から支えてくれていて、リンクは手綱を引いて馬を先導している。ちなみに俺は左足のせいで跨がれないので馬に両足を揃えて、童話のお姫様宜しく腰掛けている状態だ。足は馬に当たらないようにと空気の膜のようなものでミミに固定して貰ってある。他にもしてくれてるっぽいが俺には解らない。

リンクが吃驚していたのでかなり高度な魔法なのかもしれない。


……しかし暇だなぁ。


「なぁ。ミミとルミって姉妹かなんかか?」


景色を見るのも飽きてしまったので気になる事を聞いてみた。


「し、姉妹!?」


あれ?違ったかな…。


「え、違うの?」


リンクも驚いて振り返っている。あのぎこちない敬語は既に終了していた。


「違います!!」


顔を真っ赤にして怒鳴ってくる。怒ってるのに失礼かもしれないが可愛い。凄い可愛い。


「従姉妹とかなのかな?どうだろ、クロト君」


それならばと俺に振ってくるリンク。

俺と同じ気持ちだったらしく小声で可愛いとか言っていた。

やっぱそう思うよな。


「アッハハハ!ちょっ、ちょっと姉妹って!従姉妹ってさぁ!」


二人して首を捻っているとルミが一人で大笑いしていた。

馬がびくついている。落とされそうで怖い。


「……そんなに笑わないでください」

「ぶふっ!でもさー、アレじゃない?皆が間違えんのも無理無いって。ミミ可愛いもん」

「……」『間違える?』


何をだろうか。とりあえずミミは物凄く不機嫌で、此方を向くルミは物凄く上機嫌だ。


「ミミはーアタシの双子のお兄ちゃんなのよ」


二人やりとりの意味が全く解らない俺達に、ルミが楽しそうにネタばらしをしてくる。


『……は?お兄ちゃん?』


可笑しい。一体いつ俺の耳はイカれたんだろう。お姉ちゃんの聞き間違いだと信じたい。


「冗談だよね?あんまり笑えないよ…?」


全く同感だ。


「じょ、冗談等ではありません!私は、れっきと、した男です!」


ミミが男の部分を強調して少しヒステリックに叫ぶ。馬がビクッと震えた。


『マジで?』

「ホントのことよー」


よく理解出来ない。リンクに至ってはキャパオーバーしてんぞあれ。頭から煙出てる。

てか男って…。ホントについてんのかこいつ。下世話な話だが。


「…ハッ!?」


お?リンクが戻ってきた。意外と早かったな。よかったよかった。


「まー混乱すんのもわかるけど別にいいじゃん。ミミは可愛いってことで。男女関係無く」


ルミがまだ笑いが引かないのか肩をブルブルさせながら俺達に言った。

確かにそう考えりゃあいいのか。納得だ。ミミは不満そうだけども。


「確かにそうかも」


リンクも納得したようだ。

ルミはきっとミミが大好きなんだろう。笑いながら言ってるけど大きな猫目は少し真剣みを帯びていた。


少し羨ましい。ここまで仲の良い兄妹なら楽しいだろうな。


「もう。可愛いのはルミでしょう?」


ミミの発言に驚いた。こいつ等あれか。ブラコンでシスコンなのか。仲いいな。


「仲良いんだね」

「おうよ!ミミは私のだもん」


ルミも楽しそうだ。

リンクが微笑ましいといった表情で二人を見てる。何か見覚えあるような光景だな。どこだっけ?


「そ、そんなことより!クロトさん、先程の質問に答えて下さい!」


無理矢理話変えてきたな。凄い勢いだ。そんなに恥ずかしいのか。


「あ、ああ。そうだな―


どこから話そうか。


俺の放つ重っ苦しい空気で、今の楽しげな空気は一気に霧散した。ピリピリした緊張の中、俺はおそるおそる口を開いた。


次は違う人視点から始まります

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