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非日常との出会い


やっとだせたよ。しかし主人公が空気のまんま(笑)

またいつもの夢

優しくて懐かしくて哀しい夢

幸せな光景から様々な感情が溢れだす

その想いは視る度に強くなってきていて

いつか、耐えられなくなるかもしれない


「………何なんだよ?わかんない…誰か…教えてよ……」


困惑に震える声は静寂に呑まれ消えていった









麗らかな朝。ベッドの上で気持ち良さそうに微睡んでいる青年。そんな彼を眺めていた五、六歳の子供。

いったい何を思ったのだろう。子供は十分に助走をつけて青年の腹に飛び乗った。


「いっくよ~!とおー」

「ぐふぅっ!?」


青年は断末魔のような声をあげる。暫くは言葉に成らない声で呻いていた。

知らない人が見たら目を疑う光景だが、いつもの事である。


「リンクお兄ちゃん起きて!早くご飯~」

「お…降りて。起きらんないから」


リンクと呼ばれた青年は、腹の上で笑う子供に言った。


「はーい」


いい返事で降りる子供を優しく眺めてから、訊ねる。


「ご飯ってセツカさんは?」


確か今日の当番は彼女の筈だ。


ここはグリューンという里にあるリベア孤児院。その名の通り国立の孤児院だ。セツカさんとはここの管理人である。


「お姉ちゃんは朝からいないよ?」

「……。そうだったね」


きょとんとした顔で言われる。少し記憶を探って、昨日言われていたことを思い出した。急な仕事が入った、とか言っていた気がする。

――というかお姉ちゃんって…どうなんだろ……


「……。ごめんね。すぐ作るから。先にいって準備しててくれる?」

「うんっ!!」


子供のセツカさんへの呼称は聞かなかった事にした。年を考えろ等と思ったりはしていない。決して。

子供の頭を撫で、優しく微笑んでお願いする。

元気よく頷いて、どたばたと階段を駆け降りる音を微笑ましく思いながら、クローゼットを開けた。




「まだ~?」

「もーちょっと!」

食堂では何かが焼ける甘いいい香りがしていた。その匂いに待ちきれないといった子供達。それを軽く受け流しつつフライパンに気を配っているリンク。

非常に騒がしい光景だが、やはりこれも毎日の事である。


「ほいっ!出来たからお皿持って並「「は~い!!」」…慌てないでね」


フライパンをひっくり返しながら声をかける。

我先にと皿を持って並ぶ子供達に苦笑しながら、焼けたパンケーキを皿に乗せていってやる。

冷めると美味しくなくなることをわかっている子供達は、乗せてもらうと好きなソースを手早くかけて食べ始めた。

全員分のパンケーキを焼き終わり、フライパンを水に浸すと、やかんにお湯を入れた。その後エプロンを外して空いている席に座る。


「リンクお兄ちゃん。今日のケーキおいしい!」


隣の子がリンクを見て満面の笑みを浮かべて言った。

「そう?今回は少し材料変えてみたんだ。美味しかったならまたこれで作ろうか」

なんでなんでとキラキラとした瞳に尋ねられ材料のことを話す。

――材料って……少し余ったんだよね。そういえば。どうしよっかな…


「やったぁ!」

「……っ!」


食材のことを考えているリンクは、嬉しそうな子供の声でハッとする。

その子供は今にも飛び跳ねそうなくらいに嬉しそうだ。そんなに喜んでくれるならいくらでも作りたい。子供につられてリンクの口元にも笑みが浮かんだ。


「おにーちゃんはたべないの?」


喜んでいる子供の隣の子が聞いてくる。喜んでいる子よりも少し小さい子だ。


「僕甘い物はあんまり好きじゃないからねー」


パンケーキはちょっと、と苦笑する。元々朝は食べない主義なのだが言わないでおく。


「ふーん。じゃあなにたべるの?」


きょとんとしながら聞いてきた。

朝食を抜くというのは、この年頃の子には理解しがたい感覚だろう。真似して欲しくもないし。


不意に甲高い音が台所の方から鳴った。


「んー…コーヒーかな」

「おなかいっぱいなの?」

「うん。そんなとこ」


子供の質問を軽く流して席を立つ。

カップを取り出して茶色い粉末を入れ、先程沸いたお湯をを淹れる。カップが一杯になるとコーヒー独特の匂いが広がった。香りを楽しんでから、ミルクを入れて適温に。一気に飲み干す。


「ふぅ…。お皿はきちんと当番の子が洗うんだよ?」


カップを流し台に置きながら言った。


『は~い』


いい返事だった。理解しているかは解らないけど。



暫くしてあらかたの子が食べ終わったらしい。


「ねえ。お兄ちゃん。」

「んー?何?」


その様子をボーっと眺めていると不意に声をかけられた。十三歳くらいの、この孤児院のリンクを除く最年長の女の子だ。その子の後ろには子供達が並んでいる。何事かと少し身構えた。


「もうすぐお兄ちゃん騎士様になるんでしょ?だから…ハイッ!皆で買ったんだよ!」

「なるっていうか試験受けるだけなんだけど…。皆でって、あの少ないお小遣いで?」大切にしてねと半ば押し付けるように渡された箱を見ながら聞いた。


「そうだよ?ねえ早く開けてよ。お兄ちゃん」

「……うん」


わくわくとした声に背中を押され蓋を開ける。

中には


「ペンダントと…扇子?」


この選択はよくわからないが、二つも入っていることに驚いた。


「皆で二つまでに絞ったんだけど…。意見が分かれちゃって。だから二つなんだよ」


と理由を教えてくれた。

二つとも魔力を帯びている。魔力を帯びている装備品は高額な物が多い。きっと此等も安くは無かった筈だ。多分選べなかったなんて嘘だろう。子供達の気持ちをひしひしと感じて胸が熱くなる。


「ありがとう。大切にする。…でも何で扇子?」

「その扇子が綺麗でお兄ちゃんに似合いそうだったからだよ!……あ!なんかね、不思議な力が有るんだって!」

「……」


大した理由では無かった。似合いそうというのが理由とは。

おそらく不思議な力とやらも購入してから知ったのだろう。この子達らしい後先見ずの行動だ。

リンクは苦笑しながらパッと扇子を開く。それは少しくすんだ深い蒼に、見たことの無い淡い色の花弁が描かれたものだった。


「……?」


一体何処が自分に似合いそうなのかわからない。綺麗だとは思うが。

まあどんなものであっても嬉しいし、子供達の気持ちを無下にする気もさらさら無い。


「気に入ったよ。ありがとね」

リンクは満面の笑みで礼を言った。


「…っ!大切にしてね!」


孤児院の子供達はそれを見て、皆嬉しそうに、安心したように笑った。






それから数時間後。

リンクは馬に乗って街を一つ超えた平原に来ていた。ここはリベア平原という。平原の遥か遠くには、鬱蒼と茂る森が見える。

あの森を超えると、十日後に行われる騎士入団試験の会場のリベア城があるのだ。

リンクはその城の道中の下見に来ていた。


「…遠い、遠すぎる!街一つ超えるより平原超える方が時間掛かるってどういうことなのさー…一体」


ぶつぶつと文句を言いながら馬に水をやっている。今は休憩中らしい。

馬に与えている水は見事な球体で浮いていた。

暫く経って馬が水の玉から首を上げた。


「もういいのかい?じゃ、行こうか」


パチッと指を鳴らして水を落とす。地面に触れる前に大量の水は一滴も残らず蒸発してしまった。


それから優しく馬の鬣を撫で鞍に飛び乗った。手綱を取って器用に操る。

そのままヒヒンと馬が嘶き、颯爽と走り出した。



一時間後


二回ほど休憩を挟みつつ、ようやく森の入口付近までやって来たリンク。物凄く退屈そうな顔をしている。

流石に森に馬は連れて行けないので、どこかに繋いでおこうと馬から降りて辺りを見渡す。


「……なんだあれ?」


少し先の所に二つの人影がしゃがみこんで、言い争っている様に見える。


「喧嘩かな…?」野次馬根性丸出しで少し近づく。よく見ると二人の周りの草が赤く染まっていた。向かい風が吹く。濃い鉄の臭いがした。


「……これって!?」


馬も放って二人の所に走る。二人ともまだ年端も行かぬ女性だった。


「あの!どうかしたんですか!?」


どうやらもう一人少年がいたらしい。大量の血液は彼のもので、彼女達はその少年を治療している途中のようだった。


バッとこちらを振り向いた桃茶色の少女が必死な形相で


「すみません!力を貸してください!!」


と、懇願してきた。治癒魔法を使っている金色の少女は、リンクに見向きもしないで傷に集中している。二人は上等な身形が血で汚れるのも構わず、少年の出血を止めていた。


「何すればいい!?」


すぐに魔法を使っている少女の隣に駆け寄り、しゃがみこんで尋ねた。


「彼女の手に手を乗せて下さい!早く!魔力が足りないんです!」


返事もせずに手を重ねる。途端に力が抜けた。自分の魔力が物凄い勢いで吸われるのがわかる。


「!」


少し経ちこの感覚に慣れてきて、隣の少女に目をやった。

思わず目を見張る。彼女の長い金髪にひどく見覚えがあったからだ。しかし何故かはわからない。


「……?」


数分後、金髪の少女の手から光が消える。


「これで大きな傷は粗方治った筈…よ。骨とかはよく分かんないけどね」

少し不安そうに、でも達成感に満ちた顔で金色の少女が言った。

大量の汗を血塗れの手で拭う。綺麗な顔が赤で染まった。


「アンタ。助かったわ!私はルミ。アンタは……!?」


リンクが居た事は認識していたらしい。

自己紹介を此方に振り向いて何故か言葉が止まった。


「…ルミ失礼ですよ?あの、私はミミ=レブムントと申します。先程は本当に助かりました」


固まったルミを注意しながら自己紹介をしたミミ。彼女も顔が赤で染まっていた。



固まるのもわからないわけじゃない。ミミも驚いたのは確かなのだ。ただ焦っていたのと表情に出にくいだけで。リンクは少し癖のある長い銀髪に、夜の海のような瞳を持った、中性的で美しい青年だ。そしてどこか幻想的な雰囲気を持ち合わせている。ただでさえ銀髪は珍しい髪だし、不思議な色の瞳と相まって、その雰囲気に拍車を掛けていた。

妖精のようだとミミは思う。


「…?僕はリンク。リンク・エルヴィン。お二人は彼とは?」


二人がじろじろと自分を見ている事も気にせず、自己紹介を簡潔に済ませる。そして気を失っている少年のことを訊ねた。彼の敬語は少々ぎこちなかった。


「知らないわ。森から出てきた時にはもう倒れたし」

「…森から?そうなんだ。じゃあ名前も知らないんですね?」

「ええまあ」


ルミの森からという言葉を気にしながらも確認する。


「それにしても…変わった格好ですね、この方。初めて見ました。すーつ、でしたか?それに似ています」


ミミは少年の服装に注目していた。


「ああ。あの異国のね」


確かにとルミはミミの言葉に同意する。二人は何処かで似た服を見たようだった。

少年は紺を基調とした服に赤のネクタイをした所謂ブレザーを着ていた。彼等にそれを知る術は無いが。

血塗れのそれはところどころに草や泥がへばり付いているだけで、不思議と状態はよかった。


そんな事より、何か手掛かりはないかとリンクはきょろきょろと周り見る。少し離れた所に四角く薄っぺらい何かが落ちていた。見慣れない品だが、たぶん革製品だろうな、とリンク幾分ずれたを思う。おそらくこの少年の持ち物だろう。


「でも、あの傷は何だったのでしょう?」

「見慣れない傷よねー。魔法?」


ミミ達は次に少年の傷に注目していた。

確かに服もそうだが、傷にも疑問が残る。リンクは治りかけしか見ていないが、まるで鉄の塊に凄い速さでぶつかったような傷だった。馬車等にでも弾かれたような。しかしこの辺りでは無理だ。馬車が走れるような石畳の道からは結構な距離がある。それに、何だかそれ以外の傷もあった気がする。リンクは大して良くない記憶を漁った。


血塗れの少年を囲んであれこれと話し合う美人達。なかなかシュールな光景だ。

「これって「……つぅ!」ちょっとアンタ大丈夫!?まだ起き上がっちゃ駄目よ!」


何か気付いたのかルミが口を開いた時、ぴくりとも動かなかった少年が目を覚ました。


リンクさんの口調が敬語だとミミさんの口調とかぶってわからないかも。

ああ、書き分けが上手くなりたい。文才が欲しい

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