眼が覚めたら雲の上
会話文が多いです。読みずらいかも。
夢を見た。不思議な夢だった。懐かしい、そう思うのは何故だろう。
あの子供達の名前が聞き取れなかったのは何故だろう。
疑問は多い。
思考がとまとまらない。頭が痛い。
俺は死んだ?ここは?てか何も感じないのは?
いったいどうなって―?
「おーい、起きろ。起きぬか。少年」
なんか多いな今日は。人に起こされんの。
って違う!なんで人の声が?
「あんた誰なんだ!?つかここは!!?」
がばりと上半身を起こすと、そこには長い金髪の三つ編みが膝裏位まである綺麗系のイケメンの兄ちゃんが隣に座ってた。
なんか目の色も金色で、いかにもファンタジーに出てきそうな感じの。
鎧みたいの来てるし。袖にヒラヒラも付いてる。見た目も服も貴族みたいな人だ。
ついでに周りは一面真っ白。下はふかふか。
雲の上のような場所だ。あ、死んだから天国か。
そんなことを考えてたらイケメンのお兄さんが優しげに声をかけてきた。
「おぅ、眼が覚めたかのう。」
見た目より年か?この人。声に若さを感じない。はっきり言って親父臭い。
顔はイケメンなのに残念だ。
心配そうに顔を覗いてる優しいお兄さんに少々失礼な感想を抱く。
というか
「ここは?あんた誰なんだ?俺は死んだのか!?」
なんかさっきと同じこと聞いてるかもしれん。
駄目だ、混乱しててわけがわからない。
観察は冷静に出来るのに、…何故だろう。
「お、落ち着け。一先ず深呼吸だの」
まくし立てたような俺の言葉に驚きながらも深呼吸を促してきた。なんか普通に良い人だ。
やってみた。
すーはーすーはー。
お?ちょっと余裕ができたかも。
「落ち着いたかのう?」
こくりとうなずいて、身体に力を入れる。全体的に軽い痺れがあるのか上手く力が入らない。
「さて、質問についてだが、まず儂はアレウスという。みなはアレスと読んどったな。して、ここはそなたの中じゃ。ちなみにそなたは死んどらんよ」
自己紹介を簡単に済ましたアレウスさんはよくわからないことを言った。
待って欲しい。理解が追い付かない。
「は?中?身体のか?それに死んでないって」
マズイ。わけわかんねえ。頭痛が酷くなりそうだ。
「フム…なんといえば…。あ、そなたの中とは身体ではないぞ?そなたの心、精神の中だ」
ホワッツ?SEISIN?ナニソレ美味しいの?
ふざけた感じだが本心だ。勿論。
「は?」
「むー。そうだの…。今そなたは夢の中に居るような感じだ」
これならとアレウスさんが再三教えてくれるのが申し訳ない。
さっき夢見てたよな俺…。
まあいいか。わかりやすいし。
「なんとなくわかった。つまり俺は生きてて、今は寝てると」
「いかにもだのう」
アレスさんが肯定した。いちいち見た目と言動が噛み合わないなこの人。
「んであんたは?俺の記憶にはアレウs「アレスでよい」…アレスさんなんて人はいないけど…」
一番気になるのはここだ。俺にアレウスさ…じゃないアレスさんの記憶はない。
…うを抜いただけの名前に何が拘りがあるんだろうか。
だがここは俺の中。何故居るんだこの人。
「ここにいるのは儂が肉体を持たぬから。そしてこっちで生きる為の術をそなたに教えるからじゃ。あまり長くは居られぬがのう」
「こっち?肉体がないって?まさか…!?」
さらっと言われた言葉を処理出来なかったので口に出す。
思い至った結論は信じられなかった。
「そのまさかだの。儂は死人じゃ。だからそなたの中におる。こっちとはそなたの居った世界とは違う世界のこと。まあ異世界といったところだの」
フム。俺は異世界にトリップしてきたと。
成る程わからん。
というのは置いといて、本当に意味がわからない。あの時俺はトラックにはねられたのに。痛みも血が無くなる感覚も確かにあったはずなのに。
思い出したくない記憶に背筋が凍る。
それよりも
「…異世界?冗談だろ…」
信じたくは無い。嘘だと言って欲しい。
「悪いが…冗談ではない、の」
気まずそうに、だがはっきりと俺の言葉を否定した。
ショックだった。
なんだかんだいっても俺はあそこが好きだったから。
「スマンの…」
長い金の三つ編みがだらんと項垂れている。この人が悪い訳じゃ無いのに。
「別にあんたが悪いんじゃないだろ?謝るなって」
なんか罪悪感が込み上げてきた。どうしようか。
「なあなあ。この世界のこと教えてくれんだろ?気落ちしてないで。な」
なんで俺が励ます側になってんだろう。
「…」
無言だが嬉々とした様子でぶんぶんと頭を降るイケメン。ちょっとシュールだ。でも暗い空気は無くなった。
よくやったぞ俺
「そ、そうだのう。あまり時間も無いゆえ、生きる術だけでも…」
「時間無いのか?」
「ウム。」
「初耳なんだけど!?」
「さっき言うたぞ」
聞いてなかった。
でも生きる術ってなんだ?まさか魔法とか?だったら嬉しい。
先ほどのショックも忘れ、テンションが上がっている俺。
自然と顔がニヤケる。
「む?どうしたかの?急にニヤケて。」
「いっ、いえなんでもないです!」
聞き方は穏やかだが明らかに引いている。
マズイな。アレスさんは男とはいえ綺麗な人だ。引かれると結構なダメージを受ける。
「まず儂らの世界では魔力と言うものがあってだn「キターーー!」…どうした!?「いえなんでも」それは人の中に大なり小なり必ずあるものなのじゃ…」
今度はドン引きされた。心が折れそう。奇声を上げてごめんなさい。でも仕方ないんです。
魔法なんて絶対一度は使いたいと思うんで。
アレスさん曰く、魔力は誰にでも有るもののようだ。だけど、それをよくあるイメージの魔法みたいに使える人は限られてくるらしい。
一応俺は使えるようだ。よかった。
んで魔法を出すには触媒となる道具を使うらしい。杖とか剣とか。触媒の質によって魔力の少ない人でも魔法が使えるようになるようだ。増幅作用とかなんとか…によって基礎魔力が底上げされるらしい。
「だが魔力は有限だ。そして疲れる。道具に頼らねば魔法を使えぬ者は特にな」
成る程。体力を使うのか。まあ当たり前だよな。
てか爺言葉じゃないアレスさんかっけえ。
まるで王様のようだ。人の上に立つ者のオーラみたいなのを感じる。もしかしたら本当に王様なのかもな。
そんな感じだから、自然と背筋が伸びて、敬語で話さなければいけなくなりそうだ。
「だが魔力の底上げが必要無い者にも道具は必要だ。解るか?」
「…いえ。解らないです。何故ですか?」
いきなり言われても皆目見当もつかない。多分時間を掛けて考えても同じだろう。
まだ痺れの残る首を横に二、三度振った。
「強すぎる力は加減が難しく使いすぎてしまうのだ。それは肉体的にも精神的にも負担は大きい。だからこそ道具を使い抑制をする」
理屈としては理解できるがいまいち納得出来ない自分がいる。
でもここらへんは使ってみたら解ると言ってたので置いておこう。
「そして魔力には属性というものがある。大きくわけて、火、水、大地、風、光、闇、稀に無属性、の七つがある。人にはそれぞれ有する属性は異なるが、持つ触媒によっては使用することも出来るのじゃ」
口調が戻った。先ほどの自分の口調に気付いたのか、慌てて元の爺言葉に戻した。こうして聞いてみると少しばかりわざとらしい。
「回復とかはありますか?」
物語とかだと一番重要なところだ。気になる。
「回復かの?回復は無属性だのう。特別な才がなければ使えんがな。
こればかりは道具でも駄目だの。他の属性と合わしての補助も可能じゃ。身体能力を上げるとなのう。旅をするなら必要になるの。」
さっきとはまるで別人だ。さっきまであった威厳は綺麗さっぱり消えている。
「なるほどー。」
アレスさんの言葉を頭に叩き込む。
けっこう知っていることもあるが細部が違う。
まあ当たり前だが。
入れた情報を元から持っているちょっとした知識に上書きしていたら
「わかったかの?して魔法を使ってみるぞ。」
アレスさんの発言に反応が遅れた。
「へ?だってやり方まだだし無理では?。」
いきなりなんだ?
「まずは「てっ、ちょっと待て」手の平に力を集める」
ダメだ聞いてねえ。…やるしかなさそうだ。
えっと力を集めるのか。
くそっ。腕が重い。
四苦八苦しながらもいわれた通りにする。
「そして出したい物を出来るだけ鮮明に想像するのじゃ。例えば火とか。出すものに名をつけると想像しやすい」
こんな感じといって手から火の玉のようなのを出した。
すげぇ!
「こうか!?」
ボッ!と火の玉が出た。
「フム。まだまだ改善の余地有りだが。初めてにしては上出来じゃ。まあこれで魔力の感覚を掴めただろう」
と評価をもらった。及第点といったところだろう。
それよりも魔法が出たことに吃驚だ。嬉しい。
ん?
途端に身体中から痛みが走る。
「…っ!頭痛え…」
だけどそれよりも身体中が痛い。意識が遠退く。
「もう時間かの…」
ぽつりとアレスさんが言った。
俺の身体が光り、透け始める。
「時間って…。つぅっ!」
頭が痛い。思考が鈍る。何も感じない。痛みだけを感じる。
「…最後にそなたの名を聞いても良いか?」
アレスさんが控えめに言ってくる。そういえば俺は名乗っていない。
俺はぼんやりする頭で言った。
「く…黒斗。鷹羽、黒斗です」
「クロト…。良い名だの」
俺の名前を聞いて優しい笑みを浮かべたアレスさんが頭を撫でた、気が…した。
そこからは覚えていない。
今後は主人公の名前がカタカナになります。
次は主人公が空気です。