表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

名の無い夢 1

良く晴れた空と雲のコントラストが美しい。

そんな空の下、木陰に腰掛けている幻想的な雰囲気の少年がいた。彼は長い銀髪に仄暗い夜のような色の瞳を持った、一見少女ような美しい容姿の少年だった。



疲れているのか少々眠たげな表情をしている。


「風が心地よいな」



ポツリと漏れた声は少年の発したとは思えないほど低く、威厳に満ちていたが、可憐な容姿にはおよそ似合わないものだった。


彼が木陰で風に目を細めていると、一際強い風が吹き彼の衣服を揺らした。

翻った灰色の外套の中には、胸元を覆う白地に青の羽をモチーフにした紋章の入った薄い軽鎧と、同じ色合いの金属製のブーツが見えた。腰には鎧と同じ模様の鞘に納まった剣と短刀があった。

誰の目から見ても仕立ての良いそれは、身分の高さを窺わせる。


全体的に白い物が多い彼は、自身の銀髪と相まって、白昼夢のように消えてしまいそうな印象を受ける。



ザアザアと木の葉が揺れる。その音に眠気を誘われたのか彼の頭は船を漕ぎ始めている。


彼が心地よいまどろみに浸っていると


「   さまぁ~」


ふと幼く愛らしい声が聞こえた。


「……?」


声の方へ気だるそうに目をやると、見事な鞍を付けた栗毛の馬が此方に走って来ていた。


「   さま ここにいたんですかぁ!」


「   様やっと…見つけ…ました…っ!」

そこに乗っていたのは、猫っ毛な金髪の幼い少女と、真っ直ぐな黒髪の少年だった。


黒髪の少年は慣れていないのか、たどたどしく馬を操り、後ろに少女を乗せて此方へと駆け寄ってきた。


「…お前達は必ず私を見つけてくれるのだな」


とまだ眠気を孕んだ声で少年が呟いた。どことなく嬉しそうな声音だ。


「なにかいいましたかぁ」


いつ馬から降りていたのだろうか。

首を傾げる金色の少女に


「いや、何でも無い。何かあったのか?」


と少し疑問に思いながら、黒色の子供に問うた。


「おきゃくさまだよぉ」


と金色の幼女が舌っ足らずの声で言った。

いまいちよくわからない。が、そうかと頭を撫でる。ふわりとした猫っ毛の触り心地が気持ち良かった。少女も気持ち良いのか猫のように目を閉じている。


何故か口元が汚れていたが気にしないでおこう。


「もうすぐお客様がいらっしゃるんですよ」


と黒色の少年が言った。どうやら自分も撫でて欲しいようで、羨ましそうに少女を見ている。


仕方ないと薄く笑って少年の真っ直ぐな髪を撫でてやる。幼女とはまた違う、さらりとした感触が気持ち良い。

少し顔を赤くしているが嬉しそうだ。気持ち良いのだろう。目を細めている。


「…ハッ!? ってこんなことしている場合じゃありません!お客様がみえるんです!急がないと!」

と我に帰った黒色の少年が叫ぶように言った。


「わすれてたよぉ!はやくはやくぅ」


そういえばそうだと二人が混乱し、辺りでわたわたと慌てている。

彼は苦笑しながら口元に指をあてると



ピイイィィィ



と高らかに音を鳴らせた。


「行くぞ。お前達」


と言って木陰から出て、樹の無い開けた場所に向かって行った。



そこにはとてつもなく大きなガルーラがいた。鞍が付いているのでおそらくはこれに乗って来たのだろう。


「うわぁ~!すご~いがるーらだぁ」


少女が興奮しながら言った。


「でも、僕たちには馬が…」


と少年が戸惑っている。


「離しておけばよい。あれは賢い。自力で戻れるだろう」


と言って三人が乗れるように鞍を整え始めた。



◆◆◆◆◆


「うわぁ。たかいぃ」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!速いぃぃぃぃぃぃ!!!!!死ぬぅぅぅぅ!!!!!?」


「城まで全力で頼む」


「まだ速くなるんですかぁぁぁぁ!!!!!?いやぁぁぁぁぁ!!!!!!」




黒色の少年の悲鳴と、さりげなく無理を言う自分の主人に呆れながら、ガルーラは城へと羽を動かした。


美しい神がいたと言われる、白銀の城へと。



晴れ渡る空に少年の悲鳴と、力強く羽ばたく翼の音が響いていた。

三人称の方が楽だった。これはどうなんだろ…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ