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孤児院にて 4



投稿を忘れてました…。

said-K



ミミの授業は覚えることもあまり無く楽なものだった。しかし、これから在るであろう事を思うと自然と溜め息が洩れる。楽しみでもあるんだけど大変そうでなー


溜め息に反応したミミが心配そうに声をかけてきた。


「どうかされましたか?クロトさん。」

「い、いやなんでもない。ただ少し疲れただけだから!」


ちょっと強めに否定しておく。ミミは納得してくれたようで、もうなにも言わなかった。


そのまま、決して居心地は悪いわけじゃない沈黙が続いた。五分くらいか?流石に退屈になってきてリンクの部屋を不躾にもじろじろと見回す。


…うん!なにもないね。

ものも無く、なんともシンプルな部屋だ。

にしてもリンクとルミは何を話してんだ?近くにいるのに何故か上手く聞き取れない。

握手してる。二人ともめっちゃいい笑顔だった。


「……っ」


なんとなくミミが気になって正面を向くと、いろんな感情が混ざった複雑な視線で二人を見ていた。嬉しそうでもあって、悲しそうでもあるような。

兄妹に友達ができていくことが嬉しい反面、盗られたみたいに感じるのかもしれない。

いろいろ複雑なんだろう…。

さっき似た視線を感じたから、ルミも俺に嫉妬でもしていたんだろう。双子は似るみたいだ。



「なーミミ。リンク睨んでないで割り込んできたらどーだ?」


とりあえずミミの背中を押してみる。気付かれてるとは思ってなかったんだろう、びくっと肩が跳ねてこちらを向いた。

切れ長の目が見開いている。そのままみるみるうちに顔が赤くなっていった。


「に、にに睨んでなどいません!にゃにをおっしゃるんですか!もうっ」

「いやーその顔じゃ説得力皆無だって。つかにゃにって可愛いな」

「からかわないで下さい!」

「悪い悪い。しかし妹思いだよな、お前。友達が出来たくらいでさ」


なんというか、意外とミミはからかいがいがあって面白い。どうしてか、構いたくなる感じで。


「…嫉妬くらいしますよ。誰にだって。大切な片割れなんですから…」


顔がまだ赤いミミは俯いて、ポツリと自嘲気味に呟いた。


マズイ…。からかい過ぎたか?…そういえばこいつお嬢さんだっけ。けっこう打たれ弱いのかもしれん。


「悪い…。落ち込ますつもりは無かったんだけど…。その…ごめん」

「いえ…。自分でもわかってはいるんです。早く――」


「なーにしてやがんだアホクロトおーー!!!!」

「いだっ!!?」


バキッ!とそんな擬音とともにルミの怒号が部屋に響いた。そして俺の背中にもの凄い痛みが走る。せ、背中からする音じゃねえぞ…。

怪我人に容赦ねぇなルミ…


「何しているんですかルミ!大丈夫ですか?」

「ちょっ!クロト君は一応怪我人だよ!?」

痛みに悶絶中の俺に二人の戸惑った声が聴こえる。

てかリンク…一応って…。


「うっさい!なにミミ泣かせてんのよアホ!とっとと土下座しやがれ!」


憤然といった感じのルミの声がする。まだ顔を上げられないので表情はわからないけど、きっと怒りで真っ赤になっていることだろう。ふーふーと息も荒いし。



「泣いてません!それにもうクロトさんには謝ってもらってます!だから落ち着いて下さい!」


「……へ?そうなの?」


必死なミミの言葉が届いたのか、あっさりとルミの声から怒気が消え、戸惑った声に変わった。


「はい。クロトさんには謝ってもらいましたし、そもそも勝手に落ち込んだ私が悪いんです。」


ルミの疑問に答えるようにゆっくりと、まるで幼子に言い聞かせるように言った。


「……~っごめんクロト…」


少しの沈黙の後ボソッとばつの悪そうなルミの声がして、痛む背中に手が優しく触れた。すぐに温かな力が俺に流れ込んできて痛みが嘘のように消えた。どうやら治癒術を使ってくれたらしい。



痛みがなくなって、顔を上げると心配そうに俺を見るリンクと目があった。リンクは俺が大丈夫だと確認すると、柔らかい微笑みを浮かべて顎で後ろを示した。


俺の背後には同じく心配そうなミミと不安げなルミがいた。…なんとなく気まずい。

ミミは何時移動したんだろうか。

どうでもいいことを考えて逃避を諮ってみる。

…ダメだ。逃げられない。頑張れ俺…


「あ、あのさ気にすんなよ?元はといや俺が悪ぃんだし」

「……うん。ありがと」


頭を掻きながらしどろもどろといった感じで口を開く。ルミは少し驚いた後、安心したように笑った。




「はいはい!この件はこれでしゅーりょーだよ!僕はー早く寝たいんだからねー」


リンクが数回手を叩いて無理矢理話を終わらせた。空気を読む気はさらさらないようだ。

本当に眠いらしく目が座っている。


しかし

「寝るってどうやってだ?」

素朴な疑問だ。

「雑魚寝ってやつじゃないの?」

ルミはどこか楽しそうだ。

立ち直りはえーな。こいつ。

「風邪を引きますよ…絶対に」ミミは呆れた目でルミを見ていた。


「予備のお布団一枚しかないんだよー」

リンクが言う。となると…俺とリンク、ルミとミミか。


「ルミとミミさんはベッドをどうぞ。僕のだけど我慢してね。クロト君はお布団ね。僕は床で寝るから」

『は?』


組み合わせを考えてたらリンクが爆弾を投下した。

何言ってんだこいつ?

二人も同感のようで、気違いでも見るかのようにリンクを見ている。

その視線に気付いたのか、だってーと、間延びした声で


「僕と一緒じゃ足に悪いでしょ?」


さも当然のように言い放った。


「確かに私の魔力では一晩も魔法をかけられませんけど…、それは駄目ですよ」ミミはどうすればいいか解らないようで、戸惑っている。


「どうすっかなぁ…」


困った。どうしよう。まったく良いアイディアが浮かばない。リンクに風邪をひかせるわけにはいかないし。


「んー足を固定すりゃいいじゃん。包帯を固定する魔法なら今かけてあるのと違って簡単だし。これならちょっと蹴っても足に振動がいかないようにもできるし、リンクも安心でしょ?」

「それなら…。えっと…クロトくんよろしくね」


ルミが目を擦りながらさらっと言った。リンクも眠そうにしながら頷いた。


「…その手がありましたか」

「いや思い付いてよこんくらい」


心底感心した声をあげたミミにもの凄い冷たく返していた。

こいつがミミに冷たくツッコメるだと…?ちょっとびっくりだ。


「ほら、早く足だして」

変なところで驚いていたら、ルミが自分の手前をぽすぽすと叩いていた。

「お前がやるのか?」

「当たり前でしょ。出来ないなら言わないわ」


ミミが自分達の荷物から救急箱を持ってきて、ルミの傍らに置く。それを慣れた様子で開けて、包帯を取り出す。

俺の足を掴んで包帯を巻いていく。みるみるうちに足が白くなっていった。





――ま、こんなもんかな」


数分後、足の固定が終わった。

スゲー速い。まあ、ギプスとかとは違うってのもあるんだろうけども速い。手慣れてんだなぁ。


「言っとくけど歩いちゃ駄目よ?いくらか補強してるけど、さっきのとは違うんだから」


少しなら平気かなーとか思ってたけど、ダメでした。まさか確認する前に言われるとは。

…俺ってわかりやすいか?


それはそうと凄いな治癒術士って。こういうのも出来るとか。魔法が使えない時とか想定してんのかな。


ぼんやりと考える。なんだか考えが上手くまとまらない。少し肌寒くなってきたから余計にだ。


「じゃあ寝よーよクロト君。」


いつの間にか布団に下半身を突っ込んでいたリンクが、くいくいと裾を引っ張ってくる。眠気で頭がふらふら揺れていて焦点が定まっていない。


「ああ、ごめんな待たせて」

揺れる頭を軽く撫でて、一人用にしては少し大きい布団に這っていき足を入れる。リンクはもう全身布団に包まれた状態になっていた。

おやすみ~と小さく呟いた直後に寝息が聞こえてきた。

疲れていたらしい。


(俺も寝よ…。よく考えたら貧血だしな俺。……寒いな)


リンクが寝てから部屋の温度が急激に下がった気がした。もぞもぞと狭い布団に入りリンクに背を向けた。


横から聞こえる健康的な寝息に釣られて瞼が重くなってきた。



(…なんだかいけない光景に見えるのは私の気のせいでしょうか)

(…同感よ。二人とも顔がなまじ整ってるから余計ね)

(唯一の救いはリンクさんが女性に見えることでしょうか…)

(いやそれがマズイんだって…)

(男女の同衾がですか?)

(……わかんないならいいわ。もう寝ましょ…おやすみ)

(はいルミ…ってはや!速いですよ…。)

(…よほど疲れていたんですね。ゆっくりお休みくださいルミ。)

(ぅん…)



うつらうつらしているとミミとルミの声が聞こえた気がした。たぶん何か話しているんだろう。

声が途切れ、薄い灯りが消え、部屋にはカーテンの隙間から入る月光しか光源はなくなった。


「……おやすみ」


誰にともなく呟いて、俺は襲ってきた眠気に意識を委ねた。


「おやすみなさい。クロトさん」


優しく返された声は夢なのか現実なのかはもうわからなかった。



やっと一日目が終わった……!

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