孤児院にて 3
リンクさん視点です…。
かなり読みづらいです。
said-L
ちょこんと僕のベッドの手前に座ったミミさんが口を開いた。
「まず始めにですが…お二人は魔法には属性というのが有るのはご存知ですよね?」
ミミさんが確認をとるように僕達に聞いてきた。
…うん。こればかり知ってないとマズイんじゃないかな。流石にクロト君も知ってるみたいだね。頷いてるもん。
「では、それぞれの地域や気候で属性魔法の威力が上がるのもご存知ですか?例えば…火山の中なら火の力が強くなるとか」
正直これは知らなかった。首を横に振る。クロト君も同じみたいでほえーだのへーだの小声で言ってる。
そういえば雨の日は炎が出にくかったけ。
そんな僕達(いや僕?)をベッドの端に座るルミさんが呆れた視線で見ていた。
「常識よ。てか使ってれば気づくってフツー。それよりミミさあ、いきなりそこから?もっと簡単なとこから話しなよ。」
うん。視線だけじゃないね。顔も声もだったね。
でも確かにそうかも。ちょっと順番がおかしい気はする。よくわかんないけどさ。
あれかミミさんが頭良いからどう教えていいか解らないとかかな。人にものを教えるのって難しいもんね。
「そうですか?ではどこから?」
きょとんとしたミミさんが聞き返す。
「発動の仕方とかじゃない?リンクはともかくクロトは知らなそうだし」
知ってる?とクロト君に聞くルミさん。
「まあ、一回だけ使ったから感覚は覚えてっけど…」
言いづらそうに、後半なんてもごもごしてて聞き取れなかった。
恥ずかしいのかな?
「でも今は使えない、と…」
「うぅっ……はい」
ミミさんがもごもごの部分を引き継ぐ。クロト君からも小さいけど確かな肯定が返った。
「ではクロトさんには後で魔法の練習をしてもらいます。属性を調べるのも一緒に。今は基礎を優先しますね。リンクさんは魔法が使えますから」
クロト君の魔法は後回しになるみたい。まあ知識があった方が楽に覚えられるようだしね。
いいですかと彼?の目が訴えている。僕達に異論は無いので頷いた。
「では次に魔法の補助となる触媒の話をしましょう。」
触媒?よくわからなくて首を捻る。
ちらりとクロト君の顔を盗み見た。どうやら知ってたみたいでああと呟きが漏れている。
あれ?魔法を使ってる僕が知らないのはマズイんじゃ…?
「触媒とは、魔法を放った時に肉体への負担を減らしたり、基礎魔力を底上げしたりするものです。杖や剣が主流ですね。あ、勿論触媒ではない装備品だってありますよ?
触媒を用いれば魔法の素養が乏しい方でも魔法が使えるようになります。まあ、ほとんど魔力を持たない人達は別ですが」
魔法が使える、ね。だから武器商隊の人達の商品あんなに売れたのかな。皆魔法が使える方が安心だしね。
「そうなんだー。じゃあ僕の剣も?セツカさんに貰ったものなんだけど…」
ミミさんに部屋に置いてある僕の剣を見せる。
さっきは持っていかなかったけど僕愛用の剣だ。どうなんだろ。
「へー。長いなその剣。腕辛くね?」
「そうだね。片手剣って分類されるものの中でも長いらしいから。名前は知らないんだけどねー。腕は魔法で支えてるからそこまで辛くないんだよ」
「なるほどなー」
クロト君の質問に軽い調子で返す。
…だけど最初は辛かったなぁ。思い出すだけで辛い。
「これは…なかなかの一品ですね。使い手を選びそうな。」
「あー言えてる。アタシじゃ使えないわ。これ魔力高すぎ。質もかなりいいし。」
二人が驚いている。けっこう凄い剣だったのかな?だとしたらそれ持ってたセツカさんは何者なんだろ。
んー、まあいいか別に。
でもあの剣すぐには使えないからなー。まともに振れるようになるまで3ヶ月。それまで振ったら自分が吹っ飛んだし。なんで魔法で支えるって発想が無かったんだろ…。
「ではお返しします」「あ、うん」
おお、危ない意識が変なとこに飛んでた。
にしてもミミさんは丁寧だなぁ。きちんと魔法で支えながら返してくれるよ。落とすとかなり危ないから有り難い。
「では話を戻しますね。触媒…これからは武器と言いますね。
武器を持って魔法を放つのが一般的な発動の仕方ですが、武器に魔法を乗せて使用することも可能です。例えば燃える剣とかですね。
前者を一般的な魔術士と、後者は剣士ならば魔法剣士と呼ばれたりします。勿論グローブや弓矢等にも同じ事ができます。この技法を魔力付加といいます。しかし、かなりの高等技術なので使用者は極僅かです。私もまだ三人しか見たことありませんし」
ミミさんが居住まいを正して、かなりの長文をすらすらと言った。よく噛まないなぁ。
魔力付加…いつものあれかな?…違うか。僕なんかが使えるわけないし。
「話が少し逸れますが…。難しいのは自分で武器に炎などの魔法を乗せることであって、魔力を乗せることは簡単です。ですから、もともと属性を持つ武器に自分の魔力を乗せる事で、武器に属性を持たせることが出来るのです。しかし、自分で魔法を乗せるのとは大きな違いがあり、一定の属性しか持てないのが欠点です。なので旅をするときは属性を持つ武器を複数所持していくのが望ましいですね。」
前置きを置いて武器についての話をするミミさん。話が逸れるというか魔力付加って話の補足みたいな感じだね。
「…なぁミミ。確かさっきの話は火山の中じゃ水の魔法は使いにくいとかだったよな。その時に水の属性を持つ武器を持ってるといいのか?自分で魔力を乗せられる人もさ」
クロト君がさっきから気になっていたらしい疑問をミミさんに聞いていた。
頭良いんだなクロト君って。僕はそんなこと思いつかなかったし。…それとも僕が馬鹿だけ?
「えと…魔力付加を使える人達は、潜在的な魔力が高いことが多いのだそうです。潜在的魔力が高ければ、周りの環境に左右されること無く魔法が扱えるのだとか。……私は該当者ではないので一概には言えないんですけどね」
クロト君からその質問が来るとは思ってなかったみたいで、眼を丸くしながらミミさんが言った。彼自身もよくは知らないのか語尾ははっきりしていなかった。
「難しいもんなんだな魔力付加って。」
クロト君がちょっと残念そうに言った。
使ってみたかったのかな?
「そりゃそうかもね。相当の手練れだってなかなか出来ない芸当らしいし。コツが掴めるまで何年かかるかなんて考えたくないわね」
ルミさんが考えるのも嫌なのか顔を歪めながら言った。
「では次の話に移りましょう。
それではクロトさんに質問です。戦いの時は武器に魔力を持たせないと魔物とは戦えないんです。何故かわかりますか?」
ミミさんがクロト君に質問をしていた。
僕に聞かないのは魔物と戦ったことがあるからだろうな。これが出来なきゃ死んじゃうし。
「…攻撃力を上げるとか?あー!ダメだぜんぜんわかんねぇ」
ガシガシと頭をかきむしるクロト君。ちょっと痛そうだ。
「いくつか理由はありますが、一つはクロトさんの言う通り攻撃力を上昇させるためです。後は武器の損傷を防いだりもします。魔物は皮膚が硬かったりするのも多いので。他にも諸説ありますが、とりあえずこの二つを覚えておいて下さい。重要な事ですから。後者は特に」
「ん、わかった」
ミミさんが真剣な顔で念を押す。クロト君も同じ顔で頷き返してた。
その光景がなんとなく微笑ましく思えて顔が緩む。
数時間前に会ったばかりなのに彼らは仲がとても良く見えた。波長が合うのかもしれない。
ふと視線を動かすとそんな二人を、ルミさんが複雑そうに見ているのが視界に入ってきた。嬉しさとか淋しさとかがない交ぜになった視線で彼らを見るルミさんが。
「…ルミさんどうしたの?じーっとあの子達見て」
そんなルミさんが気になって彼女の近くまで這っていって声をかけた。
「えっ!?いやが、眼福だなーって。あ、アンタもそう思わない!?」
僕が急に話しかけたことで、ちょっと動揺したみたいだけど声以外の動作とかがまるで普通だった。
感情を押し殺すように普通に。その様子に少しだけ違和感を覚えた。
「…あー。二人とも美人さんだもんね。」
でも、そういう意味合いでも二人を見ていたらしく、だよね!とさっきセツカさんを口説いていた時みたいに鼻息を荒くして食い付いてきた。…うーん。少し怖いかも
「にしても確かにねー。目の保養だよ。ああ癒される…」
そんなことをポツリと言ったら
(……人のこと言えねーよ。アンタ)
「ん?何か言ったかい?」
ルミさんがボソッと何かを呟いた…気がした。
「いや、別に」
「そう?」
気になって聞いてみたけど簡単にはぐらかされてしまった。
なんだか不名誉なことを言われたような気がするんだけど気のせいだったみたいだね。
そして数分後―
「「……」」
ち、沈黙が痛い…
さっきの会話で話題が尽きてしまったようだ。…どうしよう。まだルミさんとは距離感掴めてないし、どう接していいかわからないんだよね…。でもここで黙っちゃ男が廃る!気がするよ…
―諦めるな!勇気を出せリンク!お前は出来る子だ!
とまあ冗談染みた気合い入れは置いといて…
よし!と自身に喝を入れて口を開いた
「「あの(ねえ)」
…見事に失敗したねうん。
「さ、先にどうぞ」
女性優先ってやつだよねこーゆー時って。
ルミさんは戸惑いながらも素直に頷いて話し始めた。
「わ、わかった…。あのさ、その、アタシらここに泊めてくれてあ、ありがとね。明日にはここ出て行くだろうし、今言っとこうかなって思って、ね」
「…!?」
照れ臭いのか少し顔を赤くしてお礼を言うルミさん。その後本当に本当に嬉しそうに笑った。
その笑顔に胸が締め付けられるような感覚が起こった。ひどく懐かしい気がして。
驚愕で動けない僕を彼女が不思議そうな目で見る。
「どうしたのよ?急に黙って」
「…なんでもないよ。ただもうちょっと居てくれてもって思っただけさ」
動揺を悟られないようにわざと落ち着いた声で話す。まあ、本音だけどね。
「え…居ていいの?」
驚いて、でも嬉しそうに聞いてくる彼女がとても可愛らしい。
どうやら動揺は隠せたみたいだ。
「勿論だよ。クロト君の傷が治るまでくらいはさ、ここに居ても」
僕だって家出娘達と怪我人を放り出すほど良心が無いわけではないし、彼女達に興味もある。どちらかといえば興味の方が大きいんだけどね。
まあ、僕は自分の為に彼女達にいて欲しいだけに過ぎないんだよね。だから、さっきみたいに邪気の無い笑顔でお礼を言われるともの凄い困るんだよ。罪悪感とかで!
「ほんと!?じゃあ三日くらいお世話になるかも!」
三日って…。足の骨折を三日で治せるルミさんにビックリだよ…
「三日かぁ。なんだか騒がしくなりそうだねルミさん。」
少し先の光景を想像して笑ってしまう。騒がしくて楽しそうだ。
「どういう意味よ!」
ルミさんが笑いながら怒鳴る。うん、楽しそうだ。
「あーもうっ!これからよろしくねリンク。あとアタシのことはルミでいーよ。堅っ苦しいのは嫌いだし」
しばらく笑い合ったあと唐突にルミさんが叫んだ。そしてさっきとは違う快活な笑顔で握手を求めてきた。
「うん!よろしくルミ!」
僕も釣られて笑いながら、ルミの手を握った。
リンクさん視点によって彼のアホさ加減が出てればいいと思います。