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9つの扉  作者: 三日月 帆立


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1/3

1、2、3の扉

 気が付くと円形の白い部屋にいた。周囲を見渡すとそこには9つの扉があり、それぞれ番号が振られている扉が8つ、9つ目の扉は8つの穴が開いており、何かをはめ込めそうだ。今開けようとしても鍵がかかっており、力いっぱい押引きしても無駄であった。


:1の扉:

 1番の扉を開くと桜の木があった。一本桜の前には女性が立っている。自分の服装は部屋に入ると同時に気が付かないほどの速さで春の服装になっていた。

「まってたよ」

 女性が小さな声で言う。手には桜色の球体を持っている。

「貴方にこれを渡すために待ってたの」

 すごく聞いたことのある声だ。懐かしく、そして悲しい。受け取った瞬間視界が暗転し、気が付くと白い部屋の真ん中にいた。

「何…今の」

 ふと手に違和感がある。見ると、先ほどの桜色の球体があり、きらりと光った。9番目の扉の穴にはめ込むと桜色に強く輝いた。どうやら正解らしい。

「これを後7つか…」

 この調子が続けばすぐ出られるだろうが、ここは一体…さっきの懐かしさの残る女性は一体。考えながらも体は2番の扉へ足は向かっていた。


:2の扉:

 部屋に入ると春の終わりごろのあたたかさを感じる部屋で、庭園の様だ。思い出した、ここは佐々木庭園、一緒に行った場所だ。……一緒に? 誰と?

 周りを見渡すと入ってきたドアは無く、そして人もいない。庭園を歩くと当時の記憶が思い起こされる、誰かが一緒に歩いていた気がする。しばらく歩くと森林地帯に売店がある。そうだ確かここで……


 店内にはだれもおらず無人でセルフレジと商品がたたずんでいる。その中に一際輝く緑色の球体がある。価格は550円、ポケットに手を入れると財布が入っている。いつも使っている小銭入れだ。中を見ると丁度550円入っていた。

「買えってことか?」

 球体をもってセルフレジへ行く。バーコードは無いが、球体をかざすと550円と表示される。ためらうことなく小銭入れをひっくり返しお金を投入口へ入れた。はらりと1枚のレシートが投入口に落ちた。そこにはこの売店の名前と買った品物が書かれている。それは……

「アリガトウゴザイマシタ」

 レジの自動音声と共にレシートも見ようとした視界は暗転する。気が付くと初めの部屋の真ん中にいた。


 緑の球体を桜色の隣にはめる。緑色は怪しく輝きだした。未だにレシートの内容は気になったが出ない事には何も解決しないと思い、3番目の扉へ向かった。


:3の扉:

 梅雨、雨の臭いがし、実際ザーザーと降っている。フードをかぶっているが傘をしていないので自分はずぶぬれになっている。目の前の横断信号が青になり”通りゃんせ”が流れた隣の女性が歩き始める。横を向くと遠くから加速し、止まる気配のないトラックが交差点めがけて進んでくる。


 思い出した。彼女は4年前に亡くなった婚約の約束までした女性だ。桜の木の下で告白し、庭園でガラス製の花のブローチを買いそして梅雨、彼女は轢かれて亡くなった。後ろから急いでた男性につき押され信号無視のトラックに撥ねられたのだ。雨の水とは違い冷や汗が流れ全身の毛が逆立つ。女性時はゆっくり歩き、トラックは徐々に近づいてくる。

 

 女性は振り返り、足が動かない僕に向けて、

「大好きだよ」

 瞬間、トラックが轟音とともに通り過ぎる。やっと動いた足が通過地点に行くと赤い球体が落ちていた。周りを見渡しても、人はおろか血痕の一つもない、と…通りゃんせが止まった。信号が点滅し始めたのだ。あの時の光景と今の光景が頭の中にいっぱいだが渡り切らないといけない気がした。

 渡り切った瞬間信号は赤となり、視界は暗転した。



 視界が明るくなるとそこは白い部屋だった。どうやら3の扉から戻ってきたらしいが、1~3の扉の記憶がない、ただ懐かしく、そして悲しい気持ちがあった。

 手には赤い球体を持っており、先ほどと同じように対応するところにはめる。彼女がなくなってから心の中にあった何かの穴が埋まったような気がして、心がほっとする。

「次は…」

 順番通りに行くなら4の扉だろう。僕はゆっくりと歩みを進めた。

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