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アルジェント・カオスドラゴンとの戦い

「さぁ、人間たち。遠慮せずかかってこい。今回は正々堂々と魔法無しの筋肉だけで戦ってやる」


 ドラゴンは余裕綽々の表情で、指をクイッと曲げて挑発をしてきた。


「ま、魔法さえ使わなければ……ただの図体のデカいトカゲだ!」

「そうだ!! さっきまでのやり方なら倒せる!!」


 マサムネ以外の四チームが戦闘態勢に入ってしまった。


「待て……ッ!!」


 マサムネが止めようとするも、四体の巨大なゴーレムは動き出してしまった。

 まずは後衛のゴーレム二体が魔法で足止めをする。

 ドラゴンは仁王立ちしたまま、足元を凍らされた。


「ひゃはは!! 図体がデカくなったせいか避けられてねぇぜ!!」

「このままぶん殴れば終わりだぁ!!」


 巨大な岩石すら打ち砕くゴーレムの拳が、ドラゴンへと迫る。

 戦いに慣れてチームワークの練度も上がり、今までで最高の一撃だ。

 物凄い速度でドラゴンの顔面に直撃した。


「なっ!?」


 最初に気付いたのは、ゴーレムの拳を操っていたメンバーだ。

 今までと手応えが違うのだ。

 まるでビクともしない鉄壁を殴っているかのような感覚。

 今までのゴーレムよりもずっと重い。


「ダメだダメだ。全然なっちゃいねぇ」


 巨大な拳の隙間からドラゴンがニヤリと笑う。


「パンチってのはなぁ……こうやって打っていくんだぜぇ!!」


 仁王立ちだったドラゴンは、殴られた態勢のまま右腕を構えた。

 そのままクロスカウンター――ではないが、そんな形になるような格好で殴り返す。

 バァンという巨大な破裂音と共に、ゴーレムの頭部が砕け散った。


「い、一撃で!?」


 もう一体のゴーレム前衛は驚いて、とっさにガードをしたが無駄だった。

 ドラゴンは反対側の腕で左ストレート。

 砕け、飛び散るゴーレムの腕。

 それを突き抜けて、二体目のゴーレムの頭までが粉砕された。

 前衛ゴーレム二体は同時にズシンと地面に倒れ込んだ。

 その巨大さから砂ぼこりが大きく上がる。


「な、なんだあのバケモノは!?」

「これがドラゴ――」


 瞬間、ドラゴンが砂ぼこりの中から襲撃。

 フットワークも軽く、瞬時に後衛二体の眼前に迫る。

 ジャブを二発繰り出し、後衛二体の頭部を粉砕した。

 この間――十秒にも満たないだろう。

 それでゴーレム四体がやられたのだ。


「ムチャクチャだな……」

「残るは一体か。もうちょっとゆっくり味わえばよかったぜ」


 なぜかドラゴンの方が悔しそうだ。

 ゴーレムを操縦していたチームのメンバーは死んではいないが、いきなり頭部を破壊された魔力的ショックで倒れているものが多い。

 マサムネたち以外、戦闘の継続は不可能だろう。


「ムリムリムリ!! こんなの勝てるはずないでしょう!! 降参しましょう!!」


 エグオンが横で喚いているが、それがドラゴンにも届いてしまったようだ。


「うるせぇ、二度言わせんな。本気でやらなきゃぶっ殺すぞ」

「ひぃぃぃいいい!!」


 エグオン以外も、先ほどの圧倒的な強さを見せつけられて怖じ気づいてしまっている者も多い。


「お、お色気とかドラゴン様に通じるかしら……!?」

「たぶん無理でありますよ……。人間とは根本的に違う生き物でありますから……」

「不可能ですね。アルジェントが魔法を使わないで手加減してくれているとしても、勝てる可能性は1%あるかどうかです……」


 ラブレスすらも諦めてしまっているようだ。

 だが、マサムネは違った。


「勝てる可能性が1%あるのなら、それで充分だろう」

「正確にはもっと低いかもしれませんよ……?」

「それでも、だ。どんなに小さな可能性でも俺はやる、お前のためにな」

「ムメイさん……」

「ラブレスもそういう小さな可能性に賭けて、このベラドンナゲームに参加しているんだろう。それなら覚悟は決まっているはずだ」

「小さな可能性に賭けて……ウチは……お母さんを……」

「全員聞け。掴み取るぞ、あのドラゴンから勝利を!」


 無謀にも思える言葉だが、他のメンバーもそれに勇気づけられた。

 逃げるという選択肢は無い。

 どうせなら勝つ気でやるしかないのだ。


「良い覚悟だ。来な、人間」


 ドラゴンも再び笑い、ノーガード仁王立ちの態勢で攻撃を待ってくれている。

 打ち込んでこいということだろう。

 相手の気が変わる前にやるしかない。


「まずは防御を考えるな。ケイ、ラブレスの順番でいくぞ」

「わかったわ!」

「はいです」


 事前に練習をしたのでこれだけで伝わる。

 こちらのゴーレムは図体の割りに愚鈍ではなく、両脚のコンビによって砲弾のような素早さを得ている。

 ドラゴンへ拳の間合いまで一気に近付き、お互いの目が合った。


「他のゴーレムより(はえ)ぇな」


 ドラゴンはそう言いつつも、落ち着いてゴーレムの動きを観察していた。

 ケイが担当する右手が伸びてきて、ドラゴンの顔面に近付く。

 それに対して一歩も動かず、そのまま受けた。

 鉄と岩がぶつかるような衝撃と音が響き渡るも、ドラゴンは表情すら崩さない無傷だった。

 圧倒的な強者のみができることだろう。

 このままだったら、先ほどまでのゴーレムたちと変わらないのだが――。


「おっ!?」


 ラブレスが担当する右脚が、鋭い蹴りとなって脇腹に入った。

 右パンチ、右膝蹴りの連続攻撃だ。


「その動かしにくそうなゴーレムでコンボか、やるじゃねぇか」


 ドラゴンは初めてまともな攻撃を食らい、後ろへ数歩下がった。


「き、効いてるぞ!? あのアルジェント・カオスドラゴンに攻撃が効いているぞ!!」

「落ち着けエグオン」


 マサムネは冷静に諫めた。

 たしかにダメージを与えることに成功したが、決定打ではないとわかっている。

 今まで戦ったどんな相手よりも強いと悟ったからだ。

 正確には自分の父親より強いか不明だが、全力の父親を見たことがないのでわからない。

 このドラゴン相手に油断をしてはいけない。


「いやぁ、人間にしては正直すげぇと思うぜ。だが――」

「後ろに跳べ!!」


 ドラゴンは巨体の割りに身軽なフットワークで近付いてきて、その拳をゴーレムの頭部に打ち込んできた。


「ウグッ!?」


 大きな振動、鈍く硬い音。

 マサムネの眼前に表示されている視界が上へずれた。


「まだまだ俺様は満足できねぇ。見せて見ろよ、人間の生き汚さってやつをよぉ」

「うわあああ!? ムメイ、やられたのか!?」

「いや、直前に後ろへ跳んで勢いを殺したから大丈夫なはずだ……。くそっ、それでも死ぬほど視界が揺れたな……」

「ギリギリ両脚組で吹き飛ばされながらも着地成功であります!」


 本来なら空いていたエグオンの左腕でガードしてほしかったが、練習に参加していないために息を合わせるのが難しい。

 今はジャマをしないでくれているだけありがたいと思おう。

 だが、このまま普通に戦っても勝ち筋が――


「戦っても勝ち筋が見えない、と思っているな。ムメイ」


 ドラゴンはこちらのことを一纏めに『人間』と呼んでいたはずなのに、急にマサムネ一人を名指ししてきた。

 これまで一切の面識もないのに、これは違和感がある。

 しかし、それらもすべて相手が〝ドラゴンだから〟で片付けられてしまうほどに理不尽な種族を相手にしているのだ。


「さぁ、どうかな。ドラゴン……」


 一応の強がりを言ってみるが、ドラゴンはそんなことを気にしてはいないようだ。


「ドラゴンって呼ぶのか、俺様のことを? そりゃ種族名だぜ。こちらが『人間』という種族名で呼ぶのを止めて、今の名前(・・・・)で呼んでやったんだ。お前も呼べ、俺様のことを『アルジェント』と」


 ドラゴン――アルジェントは、そう不機嫌そうに言った。

 名前で呼んでほしかったのだろうか?

 案外、神経質な奴なのかもしれない。


「わかった、アルジェント」

「グッドだ、お前のように素直な奴は嫌いじゃないぜ」


 アルジェントは不敵な笑みを見せた。


「――で、話を戻すぜ。ムメイ、お前は自分の可能性に気付いちゃいない」

「俺の可能性……?」

「それがすげぇイラつくんだ。だから助言をしながら遊んでやる、きてみな。もちろん怖くなかったら、な?」


 アルジェントは挑発の意図があるのではなく、素で言ってきているのだろう。

 そんなことは百も承知だし、相手は強大な竜種だ。

 まったく違う別の存在。

 それでも条件反射が起きてしまう。

 武の高みを目指す者が、強さでバカにされたのだ。

 たとえ蟻と象の差があるとしても、負けず嫌いのプライドだけは抑えられない。


「……は?」

「ムメイさん、抑えてください」

「ちょ、ちょっとぉ、実際に相手の方が強いっぽいんだからしょうがないでしょお!?」

「そ、そうであります」

〈あのマサムネがこんなキレ方するのなんて想像できなかったわね……〉

〈兄君は、とある人との剣の修業をしているときだけはこうなったことがありますね……。こうなるともう――止められません〉

「む、ムメイ!! 相手はドラゴン様なんだぞぉ!? 無茶はやめてくれえぇぇぇええ!!!!」


 全員が喋った後、最後にエグオンの絶叫が響き渡った。

 このキレた人間が、恐ろしいドラゴンに何を言うのか何となく予想ができたからだ。


「その裂けた口……。減らず口を聞けないようにもっと広げてやろうか、アルジェント」

「ククク……ウワハハハハ!! その気概、良し!!」

「みんな、いくぞ。先ほどの連携の最後にエグオン、お前がパンチだ」

「ぼ、ボクですかぁ!?」

「お前、本気でやらないと殺されるんじゃなかったっけ?」

「ひぃぃい!! 嫌なことを思い出させるな!! わかった、やる、やりますよ!!」


 つまり距離を詰めてから、右パンチ、右膝蹴り、左腕の連続攻撃をすることになる。

 膝蹴りでフラつかせることができたので、それに追加攻撃を与えれば可能性はある。


「行くぞ!」


 マサムネのかけ声で攻撃が始まった。

 しかし――


「遅い……正確には二度見たから対処できる遅さという意味だ」

「くっ!!」


 アルジェントはパンチが届く間合いを絶妙に離れ、攻撃自体を封じてきた。


「まぁ生身同士なら違うだろうが、お前らは五人で一体を動かすゴーレムだ。とっさの動きは難しい……というのを考慮しても、まだ上の段階へ進むことができるはずだぜ。ムメイ」

「そ、そんなドラゴン様!! こんな重いゴーレム、これ以上早く動くだなんて無理ですよぉおおお!?」


 エグオンが懇願する声が聞こえる横で、マサムネはアルジェントが言った言葉の意味を反芻していた。


「遅い……か」


 たしかにアルジェントはそう言った。

『強いパンチを放て』や『連携をもっと上手く取れ』でもない。

 遅さ――つまりまだ早く動けるということを言ってきているのだ。

 それもムメイただ一人に向けての言葉だ。


「みんな……試したいことがある」

「なんでありますか?」

「成功したらわかる、制御に集中してくれ」


 そう言ってから深呼吸を一つ。


「【消費TP10 素早さ強化】……!」


 本来なら自分だけにしかかからない――と思い込んでいた。

 しかし、今は四肢を繋ぐ胴体を担当していて、四人とも繋がっているような状態だ。

 今までの〝この使い方しかできない〟という固定観念を捨てて試してみたのだ。


「これは……ゴーレムが軽くなった!?」

「これなら……!!」


 他の四人も実感できたようだ。

 一気に攻める。


「たしかに速いが、まだ――」

「そうだな、まだ固定観念を捨てられる――【消費TP10 加速】!!」

「なっ!? 重ねがけで変化だと!?」


 今まで使っていた【消費TP10 素早さ強化】→重ねがけをしたところ【消費TP10 加速】と変化した。

 この重ねがけでさらに速くなったゴーレムは、アルジェントの予想を超えたようだ。


「さっきの連携攻撃をもう一度だ!」


 三倍ほど速くなったゴーレムは一気にアルジェントの眼前に近付き、その勢いの乗った巨大なパンチを叩き込んだ。


「うおっ!?」


 そのスピードで意表を突かれたアルジェントはクリーンヒットを食らい、前回よりも大きなダメージが入っているとわかる。

 そのまま右脚による膝蹴り。


「うぐっ!?」


 巨体が浮き上がる。


「ええい、やってやりますよ!!」


 ヤケクソ気味のエグオンが、反動で空中に浮いたままのアルジェントに対して左アッパーを決めた。


「俺たちの必殺技のアッパーだな」

「ふんっ! 少しは練習を見ていましたからね!」


 本来は右腕ケイ用の切り札のアッパー。

 今のゴーレムはマサムネ担当の胴体が動かないので、捻りのあるパンチが打てない。

 そこでストレートやフックより、脚のジャンプと合わせて使えるアッパーが必殺技として選ばれたのだ。


「ぐはぁ……」


 アルジェントはヨダレを流しながら、仰け反って地面に沈んでいった。

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『配神が支配する異世界で【クズカメラ】に転生した俺 ~「お前は配信向いてないからw」と追放された華の無いヒロインをSランク冒険者にプロデュースしようと思います~』
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