ラブレスの胸中
しまった、妾が魔法を使えるというのを見せてしまったのじゃ。
今はまだ制御系だけが得意と言い訳しておるが、そこからどんなボロが出てしまうか……。
それもこれもエグオンが、マサムネ対策に偏りすぎたゲーム内容にしたからじゃ……。
なぜこんな無能に管理者を任せてしまったのか後悔してしまう。
それでも、もし魔法が不得意なフリのままでいて、ゴーレムを操れる者が二人だと両脚しか動かせなくて詰みだ。
妾が何とかするしかなかった……溜め息しか出ない無様さじゃのう……。
「ラブレス、どうかしたのか?」
「あら、緊張しちゃってる?」
「脚同士、一緒に頑張るでありますよ。ラブレス殿!」
マサムネ、ケイ、カイが優しく声をかけてきてくれた。
「それじゃあ、練習再開だ。まずは基本的な歩きの動作。最初の一歩目は左脚のカイが踏み出して、魔力制御が得意でフォローできそうなラブレスが次に踏み出す方法で行こう」
「肩を借りるであります、ラブレス殿。いや、この場合は脚を借りるですかね! あ、やっと笑ってくれたであります」
四人で息を合わせるための練習。
チームワークを高めるための行動は新鮮だった。
「よし、次はケイの右パンチだ。両脚の動きと合わせると威力が増すはずだ。タイミングはこちらが声で指定する」
「へぇ~、ただのパンチでも意外と全身を使うのね」
「次は必殺技として――」
妾はずっと最強だったために、誰かと何かをするということはなかった。
……いや、最強になる前はあったのかもしれない。
転生して記憶が薄れているために思い出せない。
ハッキリと思い出せるのは、魔法を研究しているだけで無実の大量殺人行為を着せられて、前王に公爵家ごと処刑された辺りからだ。
我が身で転生魔法を実証し、真の魔法を紐解いて最強を得た。
前王を殺し、簒奪者は国の神輿として担がれ、絶対的な力によって世界を維持する暴力装置となった。
人々は崇め奉り、畏怖し、敬愛と憎悪を抱く。
普通の人間が持つ感情は希薄になり、〝あのとき〟の生と死のスリルを忘れられずにベラドンナゲームという狂気の祭典を催すほどだ。
それが悪役女王ベラドンナ・ワルプルギスなのだ。
そのはずなのに……。
「みんなと協力するのが楽しい……」
ついボソッと呟いてしまった。
ハッとしたが遅かった、周囲に聞かれていた。
こんなことを聞かれたらどうなるかと思って焦ってしまう。
だけど、反応は――。
「もう、脳天気ねぇ~」
「あはは、どんなことにでも楽しみを見いだすのは子供の特権でありますよ」
「そうだな。俺はラブレスの悲しい顔より、笑っている顔を見たいからな」
とても温かいものだった。
ずっと昔、こんなことがあったような気がする。
本当に子供の頃、大切なもの、一番大事だった何か。
思い出せない。
微かに記憶にあるのは蠢く肉塊のみ。




