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余りものチーム

「どうしたんですか~~? ムメイさん、何かボーッとしているような~~?」

「い、いや。なんでもない」


 ラブレスからは覗き見されてしまっていたので、あまり直視できない。

 アレをしていたのはマサムネであって、このムメイとは別だとラブレスは思っているはずなので、問題はないはずなのだが……やはり気恥ずかしい。


「こほん……そんなことよりも、またさらに人数が減ったな」


 二人がいるのは第二回戦直前の会場だ。

 ゾンビ鬼ごっこで半分くらいしか戻ってこなかったのだが、休憩時間を挟んでさらに減っているのだ。


「他の参加者さんたちの会話を聞いてしまったのですが、どうやら今回は棄権者がかなり多かったみたいですね」

「そうなのか?」

「はい。普段よりも第一回戦の難易度が上がっていて、それで第二回戦はもっと大変なものになるだろうと噂が出ています」

「ゾンビ鬼ごっこって難易度が高かったのか? たしかにラブレスがゾンビに噛まれたところは危なかったけど、俺が見た限りでは誰も死ななかったしな」


 ラブレスがボソッと小声で呟いた。


「ムメイさんが強すぎて周囲が棄権したのでは……」

「ん? 何か言ったか?」

「いえ、何も。ウチたちが見てない〝最初に砦に向かった大勢〟が、何かのアクシデントで大変なことになったというのは聞きましたね」


 そういえば、ハーポンが砦に人を誘導していたのを思い出した。

 そこで大量脱落させたのなら、ハーポンというのはなかなかの策士なのかもしれない。

 戦闘能力的には微妙だったが、知略の方はすごいのだろう。


「ハーポン恐るべし……。なるべく直接の関わり合いにはなりたくないものだな……」

「あらぁ、ハーポンならもう死んだわよ?」


 いきなり話しかけてきた女性、その顔には見覚えがあった。


「たしかハーポンと一緒にいた……」

「オイロ・ケイよ、よろしくぅ」


 ……たぶん偽名だろう。

 ケイは近付いてきて、こちらの腕を取ろうとしてきた。

 見ず知らずの相手に腕を取られるということは、片腕を使えなくさせられる可能性があるため、常に警戒しなければならない。

 一歩身を引いて躱した。


「あら、いけずねぇ」

「すまない、信用できない相手に身体を触れられたくないんだ」


 ケイは舌打ちをして、なぜかラブレスの方を睨み付けた。


「そっちはいいのかしら? そんなおチビちゃんより、アタシの方が色々と役に立つわよ? 戦いの方でも、それ以外でも……ね。オトナの女だしぃ?」

「む、ムメイさん……」


 ラブレスが心配そうに見つめてきている。

 もしかして、捨てられるとでも思っているのだろうか。


「たしかにケイの方がオトナだ。身長もあって腕力もあるだろう、それがオトナだ」

「い、いえ、オトナっていう意味はそういうのではなく男女の――」

「だが、俺はラブレスに頼まれ……正確にはラブレスに頼まれた奴が知り合いで、その頼みで来ている。それに妹よりも小さい子供を見捨てることは絶対にしない(・・・・・・)

「ムメイさん……!」


 ラブレスが感動したかのような〝じ~ん〟とした表情で見てきているが、当然のことを言ったまでだ。

 自分が自分であるための矜持というものがある。


「お人よしなのねぇ……。でも、アタシもパートナーにしていたハーポンが死んじゃったし、助けてよ。ねぇ~?」


 果たしてあの関係はパートナーだったのだろうか?

 少し見ただけでも、何か違うような気がする。

 そんなとき、もう一人の見覚えある気の弱そうな男がやってきた。

 アレはたしかハーポンの取り巻きの男の方だ。


「ハーポン殿は死んでないであります……!」

「あらぁ? カイ、アンタまだ棄権してなかったの?」

「ハーポン殿は……ハーポン殿は……」

「見つからないってことは、もう死んだも同然よ。ハーポンは。あんな弱っちくて頼りない奴を選んだのが間違いだったわ」

「い、いくらなんでも酷いであります……。たしかにハーポン殿はあまり良い人ではなかったかもしれないでありますが……」


 何やらハーポンたちはゴタゴタがあったようだ。

 これもベラドンナゲームの怖さなのだろう。

 人間の醜い部分を垣間見て、そこから関係性がどう変化するか。

 正直、コダマには見せたくない。


〈うーん、下衆たちが醜く争うというのはどこの世界でも一緒なんですかねぇ〉


 ……意外と冷静に見ているらしい。

 社会勉強とでも思っておこう。

 そのタイミングで説明のためにエグオンのアナウンスが流れてきた。


『第一回戦のゾンビ鬼ごっこを生き延びた諸君。おめでとうございます、とても素晴らしいです。この場に残っているということは、棄権する意思もないと見なします。さて、第二回戦の内容ですが――』


 参加者たちは固唾を呑んでいた。

 内容が発表された瞬間から勝負が始まるからだ。

 自分の得意分野か? どんな対策を考えるか? 誰と組むか?

 いくらでもやることがあるのだ。

 そして、発表されたのは――


『ゲーム〝ゴーレム制御チーム協力戦〟です! 一チーム五人で組んでください!』


 会場はざわついた。

 一チーム五人ということは、ソロでは無理なものだ。

 いち早く頼れる誰かを探すしかない。


「お、オレと組んでくれ!」

「魔力制御に自信がありますよ!」

「傭兵のリーダーをやってるから統率力は高いぜ」


 すでに様々なところで売り込みやスカウトが始まっている。

 しかし、マサムネのところには誰も声をかけてこない。

 先ほどまで擦り寄っていたケイすら離れている。


〈アレ? なんでマサムネはスカウトされないの?〉

〈義姉君、それは……ラブレスちゃんが一緒だからでしょう〉


 いくらマサムネが強そうでも、協力戦となればラブレスがついてくるのだ。

 そうすれば強いマサムネが一人いるよりも、ラブレスが足を引っ張るマイナスの方を考えてしまう。


「チーム戦か……」


 マサムネとしても、勝つためにはなるべく強い相手を選ぶのが得策だとわかっている。

 時間は有限なので周囲に声をかけていく。


「すまない、俺たちと組んでくれないか?」

「子供が一緒なのはちょっと……。こっちも死にたくないんで……」


 すぐに断られてしまった。

 他にも声をかけてみたが、そんな感じだ。

 その間に次々と五人チームが出来上がっていく。

 最初に完成したのは、いかにも魔力制御が得意そうな魔法使いチームだった。

 他にも戦い慣れた屈強なメンバーたちや、体力のある年代の者たちだ。

 その中であぶれたケイも必死にチームに入ろうとする。


「ど、どう? こう見えてアタシは魔力制御が大大だ~い得意なのよ? 逞しい傭兵さん」

「おめぇ、ハーポンとか言う口だけ野郎の金魚の糞だろ? 砦で一緒にいるのを見たぜ……使えなさそうだ」

「そんな!? チーム――いえ、あなたのためなら何だってするわよ!?」

「いらねぇよ、ババア」

「なっ!?」

「年齢隠そうとしても、シワが隠しきれてねぇぜ? 若い女じゃなきゃ色仕掛けなんて無価値なんだよ、ギャハハ!」


 そうしている間に、マサムネたち以外は全員がチームを組んでいった。

 完成したチーム数は4。

 残った誰もが思っていた。

 もう選んでいる余裕はない。

 必然的に残り物たちは目が合った。


「ムメイ殿、僕をチームに入れてほしいであります」

「ああ、一緒に頑張ろう」

「今さらですが、名前はカイ・セツであります」


 チームの三人目はハーポンの取り巻きの一人であるカイだ。

 たぶん偽名だろう。

 気弱そうな丸眼鏡の青年で、戦い慣れはしてなさそうだ。


「あ、アタシも入れてぇ~ん!」

「……戦えるか?」

「も、もちろんよ! あのババアって言った傭兵をぶっ殺すまでは!!」


 チームの四人目は同じくハーポンの取り巻きの一人であるケイだ。

 先ほどの会話から、年齢を化粧や魔法などでそれなりに誤魔化している女性らしい。

 身体の動きから母親くらいの年齢なのかもしれない。

 そして最後は――


「もう会場でチームを組んでない人間はいないな……」

『そこで、この管理者エグオンが五人目になりましょうかぁ~!?』


 予想外すぎる展開に会場全体がザワついたのであった。

 あのエグオンがまともに戦ってくれるのだろうか?

 いや、それは無理なので実質四人でチームをすることになる。

 こうして五つのチームが完成したのであった。




 ***




 そしてゴーレムの試運転のとき、さらにザワつくことが起きた。


「すまん、俺はゴーレムを操作できないようだ」

「「「「え?」」」」


 実質、マサムネのチームは三人で戦うことになった。

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