たんこぶ証拠部私を鼓舞
「大変です!」
静謐で満ちていたこの文学部の教室に騒騒しく入ってくる闖入者、短いスカートポニーテール…制服で遊べる適度な範疇の遊び心だったため闖入者というのはよくなかったな。
「誰だね君は」
彼女は大きく息を吸い込み私の耳元迄近寄ってこう叫んできた。
「なにも聞こえなかったのでもう一度言ってくれるか?」
トマトみたいに赤い顔を少し残念そうに変形させてもう一度私の耳元迄
「ちょ、ちょっと待ってくれ、叫ぶのはほんとに耳に悪い、さっきくらいの距離を保ってくれ」
多分何事かを叫んでから大体ソーシャルディスタンスな距離を確保できた。
「それで、君は誰だ」
「私はさっきまでダンス部だった人間です」
ダンス部だったと過去形で話したのは少々引っかかったが闖入者と思ってしまった負い目がある為詮索しないでおこう。
「ダンス部、そんな部活があるのは珍しいな」
「文学部も十分珍しいですよ…あ、それで問題なんですけど、受験が迫ってるんです。」
「あぁ受験、私は高卒ってことで決まってるからなんだか遠い事の様だ何年生なんだ?」
「二年生です、なら別に受験なんて急ぐことでもないだろうって思いますよね?」
「ああ」
「ダンス部の子たちと今日話したんです、受験勉強もうしてるよねって…してないんですよ私!だからダンス部の人たちと喧嘩して」
そうして彼女はほらたんこぶと前髪に掛かっていたシースルーをそっと上げ私に示してくれた。
何が彼女をそこまで駆り立てたのか詮索をするのは止めといた。
「へえ……それで、三年生の中で一番勉強ができる僕のもとを訪ねて来たという事か?」
「はいだから」
「だから」
「だから」「だから?」
だからだからと言いながら彼女はじりじり私の耳元迄の距離を詰めていきながらやがて壁際まで追い詰めてしまった、私の耳に叫ばれたときの痛みがフラッシュバックし鼓動に緊張が含まれる。
「だから、どうしてほしいのか離れてくれ」
固唾をのんで彼女の表情筋そのすべてに目を光らせる。
あすいません私距離感間違えちゃうタイプでと謝りもう一回ソーシャルディスタンスが保たれる場所に行ってくれた。
「だから、勉強をどういうモチベでやっているのか教えてください!」
「暇だから」
「え?」
「僕には友達と言った友達がおらず、故に青春と言ったことがこの高校生活で一度もできず非常に暇な日々だった、そして家に帰ったとしても待っているのはミニマリストだとこねて離婚した母しかないのだ。どこに行っても味気なく娯楽もなくという世界だったから勉強するしか死なない方法がなかったのだ」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして私のもとをじりじりと離れていった。
多分その時私ははハトに豆鉄砲当たったみたいな顔をしてたと思う。
3ソーシャルディスタンスくらい離れたところで彼女はこういった。
「じゃあ、なんか鼓舞してくれますか?」
「ダンス部もやめたところだろうしきっと猶予はたくさんあるはずだろう、それで殴った数多の輩を見返してやろうではないか」
「違います、なんていうかもっとこう、名言っぽいっていうか…例えば大変な時は『大きく』『変わる』時だみたいな芸術性が欲しいです」
己を鼓舞するためには繕ってるものでないと不満なのかと正直むっつりしたがこういった。
「たんこぶ証拠部私を鼓舞」
ミニマリストって一番子育て嫌いそう(極悪偏見)




