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四話 暴露。旅立ち

「うん。そうだよ? 私は勇者、アッシュ様が好きだよ?」


 開き直った。


 ここまで来たら、隠すのも意味が無い。もうどうにでもな~~れ! って心境だ。


「四天王になれば勇者様と会う機会が増えるだろうし? 会おうとしても不自然じゃないし? だから初めから勇者様にお近づきになる目的で四天王になる努力をしていたし?」

「う、うん・・・・・・そうですか・・・・・・」

「勇者様を調べに行くと提案したのも、そもそも会いたいからだし?」

「やっぱりそうだったんですね・・・・・・」

「それに、どんな形であれ魔王軍と魔界のためになったのは事実だし? むしろ感謝してほしいくらいだし?」

「うう~~ん・・・・・・。そこまで開きなおられるとこっちが困っちゃうんですけれど・・・・・・」

「なんか文句でもあるのか!」

「だからって逆ギレもしないでください! もう! 他の人に聞こえちゃうでしょ!」


 あ、まずい。そういえばまだここ魔王城だった。メヌエット以外に私の恋心が知られたらどうなるか。

 せっかく就任した四天王の座を追われるだけじゃない。気を付けなければ。


 ってあれ? 


「もしもバレたらどうなるとおもってるんですか・・・・・・もうっ」

「ご、ごめん―――ってちょっと待った。メヌエット? まさか他の人には内緒にしてくれるの・・・・・・?」

「? 勿論ですよ?」


 え、まじで? 


「この裏切り者! とか魔族の風上にも置けない屑が! とか。そういう風にもおもってないの?」

「もう、リルウル様ったら。私をなんだとおもってるんですか?」


 若干不満なんだろう。頬を膨らませてぷんすか! と怒っているぞと見せてくる。可愛いとおもってしまう仕草だけど、そんなことはいい。


 正直意外におもった。通常の魔族であるなら、さっき私が言ったようなリアクションをする。そりゃあそうだろう。魔族が勇者を好きだなんて、まともじゃない。だからこそ隠していたし、理解もされないとおもっていた。


「・・・・・・幻滅したりもしないの?」

「どんな理由であれ、リルウル様が目標を持って、実力で四天王になったのは事実ですし」

「・・・・・・」

「魔界の暮らしが良くなったのも。リルウル様に拾われてからずっと・・・・・・その努力している姿を、ずっと側で見ていましたもの」

「・・・・・・・・・う、うう・・・・・・」

「きっかけはどうあれ、リルウル様の頑張りに敬意と忠誠心を抱きこそすれ、幻滅なんてしません」

「め、メヌエット・・・・・・」


 ヤバい。涙が出て来た・・・・・・。まさかこの子がそこまで想ってくれていたなんて・・・・・・。


「ただ一つ・・・・・・手紙にハートマークは書かないほうが良いとおもいます。それにもっと丁寧な文章にして」

「そこは放っておいて!」


 しょうがないじゃん! 書いているうちに感情が昂ぶって止まらなくなったんだから!


「なにはともあれ。このメヌエットはリルウル様に協力しますよ」

「うん、ありがとう・・・・・・! 粉骨砕身全身全霊死に物狂いで手伝ってくれるなんて!」

「そこまでの覚悟は言ってないです!」

「ああ、そうか! 死が二人を別つまで、メヌエットの誓いは絶対だ!」

「悪化してます! それに重いです!」


 まぁ、なにはともあれ。


 勇者様への気持ち、恋心はバレてしまった。しかし最悪の事態は避けられた。それが喜ばしい。


「でも、本当に大丈夫なんですか?」

「ふぇ?」


 急に尋ねてくるメヌエット。どことなく神妙なのが不思議で、おもわず聞き返してしまう。


「相手は、勇者。魔族を敵だと思い定めているんですよ? もしも正体がバレたら・・・・・・」

「危険は承知の上・・・・・・。でも、これを逃せばもう勇者様に会えることはできないとおもうんだ」

「それはそうですけれど・・・・・・」

「それに、調査をしにいくことには別の理由もあるしね」

「? 別の理由?」

「再侵略を諦めさせるんだ」


 魔王様が亡き後、魔王軍は連合軍の侵攻を防ぐばかりでこちらから攻勢に出てはいない。けれど、今の魔界の情勢を鑑みればいつ再侵略がはじまってもおかしくはない。


 でも、勇者様と連合軍の情勢を掴めれば。勇者の実力や相手の戦力。そして国力。それらの差もついでに調べて報告する。その後に不利であるということを改めて四天王に伝えれば・・・・・・。再侵略については考え直すだろう。


「・・・・・・なるほど。そういうことですか。そうすれば――」

「そう! 勇者様と一緒にいられる時間が増えるってことさ!」


 我ながらなんて素敵な作戦なんだろう。


 自分の都合と実益、双方を損ねることなく進められるなんて。


 それに、もしかしたら勇者様と会えるだけじゃない。その後も認知されるようになって、お知り合いになって普通に会ったり・・・・・・・・・。


 そ、そ、そ、それで・・・・・・も、もしかしたら、恋人になっちゃったりぃ!?


「きゃあああああああ!!」

「・・・・・・魔界はもっともっと暮らしやすくなりますね~~~って言いたかったんですけどね・・・・・・」


 ん? どうしたんだろう? ちょっと浮かれてテンション上がっていたら、メヌエットがいつの間にかドン引きという反応をしているようにみえるけど。


「はぁ、どうしましょう・・・・・・ちょっと行かせるの反対したくなってきました・・・・・・」

「なんで!?」

「うん、よし。ちょっと四天王様達の元に行ってきますね~」

「なにをする気?! わざわざ! なにをしに行くつもり!?」

「主のことを考えれば、時には非常な決断もしなきゃいけないかな~と」

「密告するつもりかお前ええええええ!! やめろおおおおお!!」


 本気で魔王城に行くつもりのメヌエットにしがみつき、必死に引き止める。もしもバラされたら一巻の終わりだ! 文字通り私の人生終わる!


 というか協力してくれるっていうのは嘘だったの!? 私の涙を返せちくしょう!!


「くそ! 無駄に力強ぉおお!! やめてくれええええ!!」


 引き摺られ、引き止め、徹底的に話しあって・・・・・・を何度も繰り返して一週間。


 なんとかメヌエットを納得させ、正式に許可が下りた。支度を調え、遂にそのときがやってきた。


「忘れ物はないですか?」

「はっはっはっはっはっはっはっ・・・・・・・・・!」

「ああだめだ聞こえてない・・・・・・」


 最後まで反対していたメヌエットが同行するという形でだが、私は魔界を旅立った。


 胸に期待と興奮、ちょっぴりの不安を抱えながら、憧れの人の元へ。



 待っていてください、アッシュ様!

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