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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第一章
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05 聖具選び[後]

「っつ」




入った瞬間に空間が切り替わった。

外の音全てを遮断した静寂が其処には在り、7つの聖具(ヒカレス)が鎮座していた。

ただ、私が息を飲んだのは空気に飲まれたからではなく。

7つ其々の聖具の脇に眉目秀麗な者達が立っていたからだ。

先程まであの扉の向こうではこちら側にヒトの気配なんて無かったはずなのに。


「わぁ…凄い」


百合さんはまるで彼らが見えていないようにそんな言葉を漏らす、否実際には彼らは其処に立っていたわけでは無かった。


≪ほぅ、これがこの度のエルピスか≫

≪ふふ、綺麗なお方だこと≫


彼らがさざめく様に口にする音は百合さんに届どいていないかのように……実際に届いていないのだろう。

彼らが話しているのは音ではなかったのだから。

百合さんは固まっている私を放置して7つの道具をじっくり手にとって眺めだす。


≪めずらしや…エルピス以外がこの部屋を訪れるとは≫


固まって息を殺していた私に気付いた一体がそう紡ぐと他のモノ達も此方に視線を向ける。

視線が合い、私はその瞬間に理解する。

彼らが聖具なのだと、其々に宿る≪気性≫がヒト型を取ったものなのだと。


≪これは、これは……………珍しいお方が居られるのぅ≫


聖具の中の内一人…一つ、老人の姿を取りながらもその瞳は光を失うことなく強く輝くモノが私を見て興味深そうに言う。

そんな彼を見ながら、若い姿をとったのならこのヒトかなりの美丈夫だろうなぁとか思っていた私は暢気なのかもしれない。

その言葉に反応するように他のモノ達もざわめく。


≪まさか、バシレース殿にまたお逢い出来ようとは≫


≪歓迎ですぞ≫そう老人の姿をした彼は床に膝をつき頭を下げながら私に言う。バシレースという単語とその動作に他のモノ達がさらにざわめき動き出す。

そして、残りの6つは即座に老人と同じように頭を下げる。


えぇー…いや、私そんな偉くナイデスヨ?

つか、頭上げてクダサイ立ってクダサイ……私が居た堪れんです


聖具にそんな礼をされるなんてあって良いのか、などと思いながら心中でそんなコトを呟く。

百合さんが居る為、下手に彼等と喋って色々聞かれると困るので戸惑っていると老人の方が穏やかに笑み言葉を紡ぐ。


≪口に出なくても構いませぬ、我らは感じ取れます故≫

あ、そうなんデスカ


そう返せば、先程の思考も聞こえていたのだろう、それぞれが頭を上げ立ち上がる。

其々とてつもない美男美女で、そんな方々を前に一般人の私はちっちゃくなるしかない。

百合さんなら気にせずおしゃべりできるんだけどねー…だって、天然サマですから。

美男美女の中に混じる気概は私には無いです、遠くからひっそりこっそりニマニマしながら見ているのがベストというものデスヨ。


≪ヒトというモノは複雑なのですね≫


私の思考を読んだのか、真紅の髪と瞳を持つ超ド級の美女がそんなこと言う。

………解らないと首をかしげる貴方の隣に自分が並んでいる姿を想像すると地べたに頭を擦り付けて謝りたくなるのですよ。

それぐらい複雑なんですという意味合いを込めて思う。

彼等的には納得しきれていないようだったが、私がそれ以上の言及をやんわり拒んだ為、頷いてはくれた。


≪そういえば、我らはバシレース殿にまだ名も申していなかったな≫


そう言って再度頭を垂れる、深い蒼の髪と瞳を持つ美丈夫。彼を始めとし、それぞれが順に名と物質を告げてくれる。


≪お初にお目に掛かります 我は、ファネロオ この腕輪に宿る気性也≫

≪初めましてお会いできて光栄ですわ、(わたくし)はディアノイアと申しますの

 この頭飾りに宿る気性ですわ≫


蒼いヒトに続いて自己紹介をしてくれたのは真紅の美女。

素敵…とうっとりとしていたら真紅の美女は穏やかな笑みで≪お褒め頂き光栄ですわ≫と返してくれた。美人は目の保養ですっ。


≪初めまして、バシレース殿は面白い方なのね 私はこの鏡の気性、デイクニューミ≫

≪合間見ることが出来て光栄です、我が名はクリーノウ この剣に宿る気性だ≫


真紅の美女に続いて声を掛けてくれたのは緑柱石(エメラルド)を思わせるような透明感のある緑の髪と瞳が印象的な美少女と琥珀色の髪色と瞳を持つ無骨な美青年。先の二人も含め私への敵意や不快感などは無く友好的に自己紹介をしてくれる。


≪バシレース殿、初めましてお会いできて嬉しく思います

 (わたくし)この首飾りに宿る気性、ソウゾーと申します≫

≪私はその杖に宿る気性で名はカタルティゾと申します、邂逅嬉しく思います≫


剣の彼の後に続いたのは紫水晶(アメジスト)の様に深い紫の髪に同色の瞳のたおやかな女性と百合さんと同色、漆黒の髪に漆黒の瞳の怜悧な男性…彼は丁度、少年と青年の間ぐらいの外見をしている。


≪儂がこの扇子に宿る気性のロギゾマイじゃ≫


最後のおおとりを先程の老人、白髪に銀の瞳を持つ彼が飾った。

-回想終了-




百合さんが彼等の中から一人を選ぶ間、彼等と言葉を交わしていたのだが。

その間で解ったことが幾つかあった。

一つ目、私に与えられた≪バシレース・ニュス≫という役割は聖女以上に稀少らしい。

ヒカレス達の中でも会ったことが在るのはロギさんだけとのこと。(5人現れた聖女の中での遭遇は1度きりという解釈をする)

名前に関しては好きなように呼んで良いとご許可を頂いたので「ロギさん」で呼びます。

二つ目、彼等曰く≪聖具(ヒカレス)≫とはエルピスだけに扱われるモノであるが、≪バシレース≫に危害を加えるモノではない。

ぶっちゃけ≪バシレース≫が拒絶すれば聖具の能力を行使することが出来ないとかいうことらしい、能力によって行使する対象制限を設けることも可能だとか。

なんじゃそりゃ……なんてご都合とか思ったのは伏せておく。

三つ目、≪バシレース≫は精霊・物質などを含むこの世界の事象に干渉出来るらしい。

後はエルピスは精霊に≪好まれる≫がバシレースは精霊達を≪司る≫なんだそうだ。

どういうことかというと、魔法・魔術は精霊達との契約で行使できるワケだが、バシレースは他者が行うその契約をぶった切ることも可能らしい。

簡単に言ってしまえば、電力供給を発電側で強制的にストップさせることが出来ると言う解釈になる。

なんて、エグイ。

ソレって色々理違反とかになんね?とか、思っていたら百合さんがカタルさんに決めたのでお開きと相成ったわけである。


もうちょっと、話を聞きたかった……と、しょげていたらカタルさんが申し訳なさそうに謝ってくれた。

いや、貴方が謝らなくてもいいんですよ?仕方ないことなんですから。

カタルさんは今までエルピスに選ばれたことが無かったらしく、外は基本的に初体験なんだそうです。

ロギさんが旅の経験は一番長いとか補足付け足してくれました。




さて、百合さんのヒカレスもしっかと決まって旅立ちまで後7日。

私も準備を始めますか。

物語の歯車は動き始めました。

紡がれる聖女の物語…そして、バシレースとは。


物語が終わる時、彼女は何を思うのか。

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