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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第一章
8/43

05 聖具選び[前]

目が覚めたら、いつもの日常が始まる筈だった。




そんなこたー無かったけど、えぇありませんでしたともさ。

昨日の事は夢で、一人暮らしの部屋で起きて手早く準備して大学行って講義受けて、百合さんと昼をつつきながら、この夢の話をして笑い話にしてるのがベストだったのに………。


どっちかと言うと今ではそっちの方が夢よね、うふー。


両の手をベッドに付き頭を下げている…いわゆるオーアールゼットという状況で深い溜め息を零した後、顔を扉に向ける。

豪奢な扉の向こうからこちらに向かってくる複数の気配を感じ、体勢を整えベッドから降りる。

行き成り開けられてあの格好ヒト様に見せるのもなんだしね。





ベッドを降りた瞬間、容赦なく扉は開かれた。


その後は、怒涛と言っていいと思う。まるで、氾濫した川に落とされたかの様だった。

行き成り開いた扉から入ってきたのはこの城の侍女であろう方々。

しかも、綺麗処揃いときた。眺めるだけなら嬉しさ目一杯で眺めさせて頂いていた事だろう。しかし、そうは問屋が卸さなかった。

その方々にあれよあれよという間に剥かれて、体も見事に磨き上げられ。

その間に壮絶な私と彼女達の攻防戦があったのは云うまでもない。

ぐったりした様子の私と遣り切った感の彼女達の様子にその後、百合さんに心配までされてしまった。


そうして、準備が整えばカリスフェイド氏の案内で謁見の間へ。

カリスフェイド氏に似た…いや、逆か親子だもんな。まぁ、よく似た感じの方でした王様は。

厳かな空気の中、百合さんに応答は任せて欠伸を噛殺す事に必死になりつつ無事お話し終了。

なんだかんだ云って、何故聖女を異世界から召喚しなければならないか、なども話してくれてました。

後は今後についてだとかも。


まぁ、聖女についてはなんとなくわかる気がする、ミュケーさんからもちょろっと聞いてたからだけど。

王様の見解イコールこの世界のヒト達の見解だと前置きをしておこう。

ついでに、この世界での呼び名が違うが思考の関係上、聖女で脳内は称する。


曰く、聖女を召喚する時にこの世界に来た≪異世界≫の(わたしたちのような)者は大きな力を顕現(けんげん)するらしくその力は基本的に癒しや浄化に特化したものなんだそうで。しかも、その(たぐい)の力は資質がないと扱えないとのこと。

こちらの世界に居る方でも特化した方は居るようだが、忌石を浄化できるだけの方はいらっしゃらないらしい。


確かに居たら、聖女なんて喚ばなくてもいいもんな。


で、何でそこまで忌石について聖女について情報があるかというと 「前例」 があるようだ。

どうやら、向こうの世界換算で五百年~八百年単位の周期で忌石という名の隕石は飛来しているらしく、私達の前には少なく見積もって5人は聖女として喚ばれているらしい。

そして、その際の記録が魔法などを駆使して幾つか残っているのだとか。


にゃるほど、そら色々心得てるわな。

と、まぁ此方の世界の見解に私なりのミュケーさん達側の事情も追加してみる。


世界の危機?に際し召喚が行われると、それを認識した死神さん方の上(多分、これは神様であってる)が他の世界に現存する聖女として役目と力を行使出来る≪魂≫を探し、≪魂≫だけ此方に送りつける。

で、送られた世界(ファルディカーレ)が≪魂≫に見合った身体や力を与える。

多分この力が、ファルディカーレのヒト達曰くの 大きな力 ってことかな。

まぁ、送りつける≪魂≫を神様が選定してるんだから≪魂≫に比例する力も強大なのは当たり前。

で、浄化等に特化してるのも当然……目的と違う力を持った者を送っても意味ないしね。

以上の内容の上でめでたく百合さんが選ばれましたということである。


王様曰く、すぐさま聖女用の騎士団を創設してくれるようだ。

勿論、責任者はカリスフェイド王太子殿で彼を中心に優秀な者達を集めて創るらしい。

大体一週間後には忌石浄化の巡礼の旅に出て欲しいとのことだったのだが、百合さん自体は旅に出るのは初めて。しかも、初のアウトドアだとか。

向こうのアウトドアに比べて難易度は格段にこの世界の方が上だろう……田舎育ちの私でもキツイ所あるわぁ、何せ馬車移動。

此処の世界ではどうやら車や電車と言った電気関連は無いようである、大半は魔術や魔法で補えるからなのだろうけど。

まぁ、初めての長旅でしかも何が起こるかわからない旅路。

聖女の身を守るモノを、ということで百合さんは謁見の間を後にした後 聖具…ヒカレスと言うものを選びに宝物庫に向かったのでした。

私もちゃっかり、覗きにだけはいったけど。

聖女の為だけに作られたモノらしく、私は本当に覗くだけでした。

7つあるのにその内1つしか選べないんですと、何それケチくさーとか思っていたら王子サマが解説してくれました。


聖具それぞれに宿る≪気性≫が違う為、それぞれに波長が合うモノ合わないモノがあるんだそうで。

なので、今の今まで使われいない子もいるらしい。

百合さんが選んだ聖具は錫杖(しゃくじょう)……カタルティゾと言うらしい、なにぶん合気道で杖や剣の扱いには慣れているのでそれに決めたらしいです。刀が在れば刀の方がよかったんだけど…などという言葉は聞かなかったフリ。

剣は在ったのですが、扱いが違うのでやめてオイタソウデス。

…………人間凶器(黒帯持ち)に武器が装備された瞬間でした。

まぁ、宝物庫に言ったら私は私で心中どえらい事になっていたんですが……



 - 回想 -

「此処が宝物庫だ……ユリは入って選んでくると良い」


そう言う王子サマの言葉に百合さんは神妙に頷き、左手で宝物庫への扉を握る。

右手には私の服の裾をしっかと掴んで。


「………」


ジロリと視線を左隣に向ければ申し訳なさそうに……でも、視線で目一杯「一緒に来て」と訴えられる。

その視線に「知らん、行って来い」という意味合いを込めて見つめ返せば……長身の美人はショゲた。

ショゲても私は知らん、という意志を訴えていたら横からお声が掛かった。


「ミズエ、お前も一緒に行って来たら良い……見るだけだがな」


視線のやり取りで色々悟ったであろう勘の良い王子サマの言葉にパッと百合さんの顔が綻ぶ。

そんな彼女に周りの男共は見惚れ、一瞬沈黙が降りる。

沈黙の中、深々と溜息を吐いて扉を押し開き百合さんを放り込み続いて私も中に踏み込んだのだった。

回想の途中で分割。


今までの日常はもう既に非日常。


―――――

H24.03.06 誤字修正

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