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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第二章
38/43

23 滞るモノ

はてさて、七日あった筈がいつのまにやら後一日。




 この数日のあいまにちょっぴりしんみりしつつ、ある程度の先立つモノは貯めたので、動けるには動けるのだ、が。

 あの根っこをどうしたものかで現在、頭を捻っている つもり である。


 頭脳労働は担当じゃないのよねぇ

 私は、ペーペーの下っ端でいたいのになぁ


 等と、思いながら思考を巡らせつつ、折り畳んだマントから財布代わりの袱紗(ふくさ)らしきモノと黒に染められた、手触りの良い布の巾着を取り出す。巾着を取り出す際に、中に入っているモノ同士が擦れて金属音のような鈍い音を立てる。

 どれだけ貯めたのか確認していなかったので、考えるついでに勘定でもしようかなとか、頭の片隅で思っていたりするワケである。


 考えるお題は"どうやってあの根っこの変質原因もとい、忌石の塊の元へ行くか?"なのだけれども、お題がやたら長いのは気にしないで頂ければ幸いです。


 まずは、根っこと遭遇するコトが第一になるのだが、遭遇したからと言って忌石の場所が分かるわけでもない。あの根が「捕縛」を目的としているのであればいざ知らず、あれは「抹殺」を目的としている。

 出会ったその瞬間、串刺しにしてこようとするのは目に見えている。だが、根っこに遭遇できて根っこの元まで辿る事が出来たなら万々歳・・・そこまで考えて一端、静止し私は言葉を洩らす、その手は腰を下ろしているベッドの上に絶えず同じ紙幣と貨幣を選り分けている。


「・・・というか、何で私が忌石排除する方向になってんの?」

「リョーコが アレ を邪魔に思ったからだろう?」

「デスヨネー」


 やっぱり、自業自得ですかね・・・喧嘩吹っかけるなって話ですかね?

 つか、私は巻き込まれの被害者なのにぃぃいいいぃいいっ!!!


 なんて、打ちひしがれ手を紙幣などの横につきながら、頭と肩を落とす。ベッドに腰掛けるその姿は、さながら上半身は土下座の様にも見えるだろう。そんな様子をファルは、呆れ半分憐れ半分な目で見ている。

 そんな彼に、はたと「つか、大物(忌石の塊)って探すの面倒だし、小物(欠片)も色んな所にあるワケでしょ 聖女はソレを全部浄化するって聞いたんだけど」何て言葉を紡ぐ。


「ソレって(むず)くない?」

「あぁ、聖女の下には《羅針盤(ピクシス)》があるからな そこは心配ないだろう」

「ぴくしす?」


 ファルの返答に首を傾げながら呟けば、彼はその羅針盤についてを口を開く。


「忌石が何処にあるか、指し示すモノだ」

「・・・そんなのが在ったのね くそう、複製(コピー)してくりゃよかったっ」


 悔しげにペッドを力一杯叩くフリをしながら、 自分のド阿呆ぉぉぉおおぉっ なんて心中で絶叫しつつ、シクシクという泣きに移行する。その様子に、再度ファルは呆れた視線を私へと向ける。


 因みに、複製はその名の通り"モノ"を複製する魔法である。

 勿論、この世界にもその意図の術は存在して は いる。正し、半端なく術者の技量を問われる術の一つであるが。複製の術自体、取り扱える術者も少ない上に本物(オリジナル)と全く同じモノを複製しようとするのであれば、本人の力の量、想像力、構成力、精神力その他諸々を必要とする。

 複製したいモノにも因るが、特殊な効果や効力、能力等を秘めたモノを複製するとなれば、その複製にかかる負担は格段に跳ね上がる。しかも、下手をすれば廃人一直線を辿れるとの噂までくっついている。


 それが、この世界での複製術の認識である。


 本来ならば軽々しく言える術ではないのだが、現在の立場、己の能力を鑑みれば以外に容易かったりする。しかし、この世界の術では無駄な部分・・・というか、術の過程が面倒な為に独自呪文(オリジナルスペル)という形で複製という術を扱っている。

 ぶっちゃけてしまえば、呪文すら唱えない為スペルともいえないのだけども、そこは置いておこう。


「まぁ、一番近くに存在するモノの場所を指すのだがな」

「あ、やっぱいらんです」


 彼のあっさりとした一言に、掌を返すかのように言葉を返せば「そうだろうな」という同意が返ってきた。一番近いモノからって・・・手当たり次第浄化しなきゃいけない聖女だから使えるモノであって、私はいらんわぁ等と思う。

 私としては、今現在叩きたいのはあの根っこの忌石(もと)であって、一番近い忌石ではないのだから。


「つか、ホントどうしようかなぁ・・・この件に関わるって事は、あの人達に遭遇する可能性があるって事だしなぁ」


 かーなーりっ(結構前の何処ぞのライダーなノリでどぞ)、面倒だとかそんな事を思いながら一番安価な通貨である、灰色のシン硬貨を積み重ねる。気分はちょっと、賽の河原である。


「だが、邪魔なのだろう?」

「邪魔というよりは、うざい」


 素で言い放った言葉に、「リョーコ様、口が悪いですよ」なんて黒玲に窘められる。その言葉に「はーい」と素直に返しながらも、特に直す事はしない。ソレをわかっているのか黒玲はただただ、苦笑を浮かべる。


「無意識の術展開があるとは言え、いつ何時不測の事態があるか分からないしねぇ」


 術が使用できなければ、私はあの根に串刺しにされて殺されるのが予測出来るし、逃げ延びたとしても何処までもあの根は追って来るだろう。

 二度も殺される・・・と、言ってはなんだけれども、死というモノを軽々経験したくもないワケで。その事態を誘発しそうなモノは排除しておくに限る。


 まぁ、うん 正当ぼーえー せーとーぼーえー


 等と自身を納得させるように思考し、頷く。その様子にファルも黒玲も首を傾げるが、「なんでもない」と返しておけば深くつつく気もないのかあっさりと引き下がってくれる。やはり、持つべきは理解力のある友人である、等と思ったのは追記にしておく。


「では、やはり 対処なされるので?」


 静かに問いかけてくる黒玲に「そう、なるかな?」なんて返しながら、選り分けた紙幣を袱紗の中へとしまっていく。出来れば、紙幣の種類事に分けたいんだけどなぁ・・・今度布でも買って作ってみようかな、なんて事を考えながら言葉を紡ぐ。


「彼らが対処するまで待ってるなんて程、気長じゃないしねぇ」


 他人事ならいつまででも待ってる自信はあれど、他人事じゃないし。そんな事を思いながら、心中で溜息を深々とつく。黒玲はそんな私に、お茶と茶菓子を出しながら「どうなされるおつもりですか?」と問いかけてくる。

 上記の話でいけば、今は手詰まりの状態なワケだが。差し出された茶菓子を口に運びつつ、一応思考してみる。そして、気付くのだ。


「無いなら、作ればいいじゃなーい」


 パンが無いなら、お菓子を食べればいいじゃなーい的なノリでポソッと呟く。この世界の一般人ならぎょっとする事だろうが、周りにいるのは世界と気性。何にせよ、規格外ばかりである。


「あぁ、その手があったな」

「ですわね」


 何分人との付き合いが薄い二人は、その手があったか・・・なんて納得している。普通にツッコミなしだったので、さっくり話が進む分至極楽である。


 そっすね、二人とも私と関わってなければ放置ですもんね。


 なんて事を思いながら、いそいそと袱紗と小袋をマントへとしまい、羅針盤モドキを作る為の準備を始めるのだった。


 ちなみに、余談ですが。

 現在の所持金は

 セレファン硬貨、残金5セレと12ファンズと86ファン

 アシャステーア紙貨幣が3ツェア、85ツェド、102ツェン、179シンズ、473シンとなります。


 ツェア、ツェド、ツェンは紙幣 シンズ、シンは硬貨に分けられます。

 因みに、金額的比較は ツェア>>>>ツェド>>ツェン>シンズ>シン な感じです。

 生活を行う上では硬貨2種と紙幣1種で事足り、たまに大きな買い物をする時に必要な感じらしい。日本円との対比は面倒なので割愛いたします。

 一応、今回は5日間ほどみっちり働いたので荒稼ぎの意気です。採取に行ったら、希少有用植物や鉱石などがゴロゴロ発見できたのでアイオンに売ったり、武具屋さんに買取してもらったりして貯めましたとも。


 まぁ、武具屋さんが涙目だったりとかしたのはなんででせうねぇ?


今年ももうそろそろ、終わりですね。

皆様、良いお年を。

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