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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第二章
36/43

21 先立つモノ

 似ている所などなければ、この胸が締め付けられる事もないのに




 そんな栓ない事を思いながら、青く晴れ渡った空を見上げる。何処までも続く蒼天は、ムコウと変わらず頭上に在る。流れる雲も見慣れた白い色。空だけ見上げていれば、見慣れたものである。


 まぁ、たまに視界に入る巨大な影は横に置いておくとする


 視点を空から、目の前へと降ろせば視界一杯に広がるのは、鬱蒼と緑生い茂る密林(アマゾン)


 うん、巨大蛇とか出てきそうだ


 そんな事を思いながら、止めていた足を動かし草木を掻き分ける。

 次の目標が決まったのに何故、密林なのか。答えは至極簡単、先立つものがなければ動けない。と、いう現実問題に直面したからである。ならば、稼げばいいじゃなーいを合言葉に現在、私は依頼遂行の真っ最中である。

 そんな事でもない限り、こんな奥深そうな密林には入る気はない。好奇心に駆られて、自分をいじめる趣味も私には無い。

 と、いっても既に依頼はこなし終わった後で現在は帰途の途中となる。そう、急ぐこともない為、ファルと黒玲の植物講座を聞きながらまったりと歩いている。何分、私に襲い掛かってくるのはヒトか忌石に狂わされた動物だけなので、野生の動物を警戒しなくて良い分楽をさせて貰っているなぁとシミジミ思うのである。

 前者の場合は、身体強化した上での全速力で逃げる予定であるし、後者であれば、チャクッと掃ってササッと忌石を回収する予定であるのは言うまでもない。


 戦闘はご遠慮願いたく思いマスデスヨ、私は善良な一般人ーっ!!!


《一般人?》


 心中の大絶叫にファルが首を右に傾ける、黒玲も聞こえていたのか彼と同じ様な仕草を行う。

 特に聞かれても問題はない、というよりは気を張っていないと大絶叫の類はこの二人には駄々漏れらしい。無意識に気を張っていたり警戒していたりすると漏れないもとい、聞こえないとの事。

 気を抜いている時に聞こえないようにする場合は、常に意識する事を心がけなければならないのは実証済みである。


 意識し続けるって大変


 まぁ、二人が言うには駄々漏れと言っても、常々の思考が聞こえるワケではないし、絶叫している内容が聞こえるのはファルと黒玲だけとの事。精霊達には、大まかな喜怒哀楽の分類ぐらいしか認識出来ないから、気にするなとは言われた。

 気をつけるに越した事はないので、日々精進したいと思います。

 そんな事を思いながら、ファル達への【一般人】の単語の解説に入る。


「一般人って言うのは、ムコウの世界で人の中でも特別的な身分ないし地位を持たない人間の事を指すのデス」


 ここで説明すべきは、人の中でと添えておく事である。ここで、添えておかねば確実自分は一般人ではないという言葉を受けそうなので。

 実は、説明で省いた部分もある事を此処にコソッと記しておく。本来なら地位の後に「或る事に特別に関係していない」という言葉が入る筈だったのだが、コレを入れると自分を自分で一般人と言えなくなるので、記憶の闇に粉々に砕いて埋めて置く事にする。

 自覚はしているが、他に言われたくないので自己防衛である。


 自己防衛大事!


 周囲にヒトがいないという事もあって、声に出して説明を行えば二人からも「ふぅん」や「そうなのですね」なんて言葉が返ってくる。

 その間にも黙々と足を進めて、この密林から出ようと努力はしている。例え、ソレが途中で忌石の影響で狂った猪もどきに突っ込んでこられたり、貴重な医療用の植物の採集や甘味ゲットの為に横道にそれたとしても。


 敢えて、努力 は していると私は言おう




 なんだかんだと、密林を抜けライールに戻ってきた時には、受けた採集依頼3件プラス討伐2件と採集1件の計6件をこなしていた。


 疲れたと思ったら、そら疲れるわな


 討伐対象の動物さん達は勿の論、忌石に因る被害者なので殺す事無く瘴気を掃って密林の奥にお帰り頂きました。アイオンに依頼取り下げ交渉用に、牙や爪等を回収させて頂いた事を追記しておく。交渉が終ればアイオンが武具や防具、道具に使えるものであれば、買い取ってくれるので有り難く買い取って貰う予定である。

 当然、彼らに案内してもらって、忌石は瘴気を一掃して懐にイン。ちっこい忌石がジャラジャラと溜まっていくのが今後、予想される。


 別に量が多くなる事は気にしないが、何かに再利用出来ないかなー?とか、思いながらアイオンのカウンターにて依頼の完遂を告げる。そして、マントの中から依頼内容の採集植物を提出し、確認処理が終れば受けてはいないが処理を済ませてしまった依頼の処理をお願いする。

 確認の手続きに多少の時間を要するが、待つのは苦手ではないのでそこそこの時間をかけて処理を受領され、部位を買い取って頂きアイオンを後にする。


《トール》


 脳内にファルの声が響く。その声に心中で「うん」と頷く。素早く手渡された稼ぎをマントのうちへ、ポイッと入れてしまう。

 なんせ、後ろからなんとも微妙な気配の方々がくっついてきているのを認識したからである。どうやら、アイオンで処理を待っている間に目を付けられたようだ。

 人の努力を横から掠め取ろうとする人間は、世界が変わってもいるらしい。


 働かざる者、食うべからずっていうのにねー 


 心中で思いながら、軽く溜息を吐く。真面目に相手をしては疲れるだけなので此処はサクッと術で逃げてしまうに限る。自分がかける手間は最小限に、そして効果は最大限に。


 暴力はんたーい


 無詠唱にて魔術仕様を隠す為の術と平行し、後をつけてくる害意ある者には幻術をかけ、細い裏路地へと誘導する。その間に、裏路地とは反対側の人気の無い場所へと歩を進め、近くに人や何らかの術関係の気配が無いかを探り、転移魔術を展開する。

 向かいの路地から、だみ声の悲鳴が響いたがそこは聞こえなかったフリを決め込む。


 まぁ、二度とこんな事をしない程度にはトラウマになればいいと思う

 うん、善良な一般人に手をだしちゃいけないよ 不幸になりたくないならね


 なんて事を思いながら、宿屋の裏手に到着したのだった。




 悲鳴を聞きつけて駆けつけた警邏がみたのは、誰もいない虚空に土下座しながら謝り続ける男達の姿だった事は余談である。 

いつの間にやら、お気に入りの件数が凄いことに(あわあわ)

読んで下さってありがとうございます(平伏)


ブログを引越ししまして、web拍手追加してみました。

いつか、web拍手に主人公達の絵を上げるんだ。(死亡フラグ的な何か)

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