01 終りと始り-死せる者と蘇える者-[後]
あらすじ関与部分は以下の[後]で出てきています。
「ぶっちゃけ、私は手違いで死亡した、と」
「はい」と神妙にそして申し訳なさそうに頷くミュケーさん。
いや、別に過ぎたことをどうこうでキレる気は毛頭無いので気にしないで下さい
それに怒るのもキレるのも……疲れるから好きじゃ無いんだよねぇ
内容整頓の為に適当に纏めてみる。
「本当なら百合さんを軽い事故に合わせて昏睡状態にし、その間に聖女として別世界を救わせるつもりだった、と そういうことでいいんですよね」
確認を取りながらも自分の紡ぐ内容に「……ありえない、どんだけふぁんたじー……」そんなコトを言えば、ミュケーさんが「本来なら軽く当てるだけの死者がでるような事故になるはずではありませんでした」と軽く補足を入れる。
「でも、あの車轢き殺す勢いで突っ込んできましたが」
「はい、ソレが手違いなんです 本来なら御巫 百合さんにのみの影響で留まる筈のものだったのですが…」
「ソレがあった為に百合さんを車の軌道から逸らした私は死亡し、百合さんは重症を負って 生きてはいるが死に掛け一歩手前だと」
「そうなります」
ミュケーさんが頷き肯定する。
まぁ、百合さんが生きてるなら私が死んだ意味はあるのか、なとも思うのだが、本来の予定で、こんなことになれば私超無駄死にだったね等とそんなコトを思えばミュケーさんがふいに「ああぁぁ」と嘆きの声を上げている。
……あぁ、そういえば考えたことある種筒抜けでしたっけ
「まぁ、私が死亡したことは置いておき 百合さんは今、昏睡状態なんですよね」
「えぇ、彼女の魂は眠っているので そのまま予定通り異世界に渡って頂く手筈になっています」
「…………ちゃんと、私達の世界で蘇生されます? というか、そのまま目覚める、とかではないんですね」
紡がれた言葉に今は眠っている彼女に思う。
百合さん…………アンタどんだけトラブル招来属性なんですか
「はい、ちゃんと蘇生されますよ……聖女としての役割をこなせる魂と言うのは、中々いらっしゃらないんですよ」
困った雰囲気を出しながらミュケーさんがイイワケを述べる。
他に代わりがいないからって……
「……どんだけ時間が掛かるかも解らないんですよね」
「いえ、貴方方の世界では3日目には目覚める様になっています」
「時間については問題は生じませんのでご安心を」そうミュケーさんが続けるがその後に続いた言葉に一瞬固まった。
「ただ、役目を終えるまでは戻ってこれませんが」
それは体感時間では偉く途方も無いような気がするのはキノセイデショウカ?
魂と体のタイムラグって言うのは存在しえるのだろうか
「えぇっと、百合さんにしてみれば蘇える条件は「世界を救うこと」ってことデショウカ」
「そういうことになりますね」
このヒトサラリと言った
いや、まぁ死神だし時間の感覚って人間よりはないだろうしな
しょうがない、はしょうがないんだろうけどっ
「そして、本来死ぬ筈の無かった貴方の処置なんですが 肉体が蘇生できない程に損傷しており、貴方の世界では生きていくことが出来ません」
「確かに、そらそうだ」
「なので、精査無しに転生して頂けるようになっていますし、自分で生まれたい世界などを決めて頂けます」
「…………ソレ、いいの?」
「今回ばかりは上のミスですからね、許可は取ってあります」
「そうなんだ……」
上って神様の事だろうか、そんなことを思いながら言葉を紡いでミュケーさんの説明に聞き入る。
「ただ、ソレにも条件がありまして」
「条件つきナンダ」
「聖女と共に異なる世界に行って頂いた後、ということになります」
「………………私、精査も選べなくてもいいから遠慮し、マ」
そう言ってお断り申し上げしようとした私の言葉をミュケーさんがぶった切った。
「既に決定事項となっています」
「……私なんざつれってっても意味無いと思うのですが、というか私も救わないといけないのデショウカ」
「いいえ、貴方は聖女と共に行って頂くだけです。「救う」のは聖女の役目ですから」
「? どいうこと?」
「向こうに行かれた後の行動は貴方が選び取って頂いて構いません まぁ上はあわよくば、聖女のサポートをと思われているでしょうが……命を摘み取って置いて、ソレを強要を私共はできませんから」
「……百合さんがその世界を「救う」手伝いをするも良し、好きに生きるも良しってこと?」
「はい、期限は彼女が世界を「救う」までとなります」
「結局は百合さんの期限に合わせると」
「そうなりますね、ただ先程の転生の話以外に貴方に希望があれば、出来るだけ添うことが出来ます」
「何か希望がありますか?」とミュケーさんは私に訪ねる。
希望つったって、ねぇ……ってさっきの手配しておきますはそういうことっ!?
「はい」と頷くミュケーさん。
「私が居た世界の事でも……私に影響が無いことでもOK?」
「内容を聞かないことには何ともですが、出来るのであれば」
「…………私の存在の痕跡全部消して欲しいってのは」
その言葉にミュケーさんから戸惑うような気配がした。
こういう望みは少ないのだろうか?
でもそれは残してきた最愛の人達に送る、孝行
「全て消す……ですか? 出来ますが……よろしいのですか?」
「うん……出来れば、両親の元に私じゃない子供も……それも出来る?」
「え、えぇ可能です」
「ならそれで……私さ、遅くに出来た一人娘なのね?それなのに……先に死んじゃったじゃない? 親を悲しませるのは嫌なのよね、それなら元から私が無かった事になる方がマシ」
「…………わかりました、それらの内容に添う事は出来ると思いますので」
真剣な雰囲気で了承の意を告げるのミュケーさんに私は深々と腰を折り最大の感謝を示す。
私の最後の孝行を叶えてくれてありがとうございます
「じゃ、宜しくお願い致します」
深々と下げていた頭を上げ目の前の死神さんをに視線を向ける。
私の視線を受け止めながらミュケーさんは優しく穏やかな声で「それでは、他は宜しいですか?」と紡ぐ。耳を打つその声音は、安堵を誘い私はその言葉に「大丈夫ですよ」と淡く笑んで返す。
そしてこれから行く先について少しだけ説明をつけてくれた。
「世界に渡った時点で魂に応じた身体と力と補正を≪世界≫から与えられると思います 貴方が進む為の力となるでしょう…………決して悪いモノではありません」
一端、紡いだ言葉を切りミュケーさんはまるで小さい子にでも言い聞かせるかのように、御伽噺でも読み聞かせるかのように続ける。
「認めたくないモノも在るかもしれません、しかしそれも貴方の魂の資質なのです 貴方の自身とも言えるでしょう……受け入れて、認める事で進めることもあります
大丈夫、貴方の魂はとてもしなやかで美しくそして、強かだ…… ≪エクセスティン≫の魂が此処に今、現存している事を嬉しく思います」
「え?」
言われた意味が解らず聞き返すがミュケーさんはそれ以上言う気は無いらしく、穏やかな声のまま別の言葉を述べる。
とても、不穏な事を言われた気がする上に流された感があるわ
「では、今から貴方と彼女を向こうにお送りします」
そう言って頭を下げるミュケーさんは段々と姿が薄れていく。
最後に見えた彼のヒトの唇が「ご武運を」と動いた気がして、会ったばかりの……輪廻の環上では塵芥の一つでしかない魂にまでそう告げる律儀さに笑みが浮かんだ。
死神さんは≪魂≫には弱いです、ただ上には腹黒いかもしれません。
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修正履歴
H22.7.20. 感情部読点削除、改行追加+文頭空白追加