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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第一章
29/43

18 不穏の欠片[前]

お久しぶりです、花井です。

2ヶ月放置申し訳御座いませんでしたorz

また、地味にこつこつと更新していきますのでどうぞ宜しくお願い致します。

「……あ奴等さえおらねば、妾が、息子が、こんな思い等する筈なかったのにのぅ」




 豪奢な部屋に響く麗しい声音はまるで歌うかの様に静かに、しかし苛烈な意志をのせて言葉を……呪詛を吐く。その言葉を聞くのはその部屋に、女性の傍に影の様にひっそり佇む壮年の男性のみ。


「ふふっ、今の内に精々偽りの王座を堪能するがよい」


 艶やかな赤の(べに)に彩られた唇から零れる言葉は惨忍性をのせ室内へ霧散する。

 そして、女性はにんまりと口の端を上げ此処に居ない相手に問いかける様に言葉を紡いだ。


「妾を追いやった罪、お前達(・・・)で贖って貰おうではないか…………のぅ、アーシェヌ」


 女性の胸元に飾られた巨大な虹色の宝石が陽の光も無しに妖しく揺らめいた。







 視界を緩やかに閉じて、感覚を鋭くする様に意識を障壁に向ける。

 そうする事で何故かある程度の対象の動きがわかるのだから、つくづく私は便利な体質になったものだと感慨深くなる。

 因みに深く考える事とツッコム事はしない、果てしなく自分が疲れるからである。気を取り直して、思考と意識を現状へと引き戻す。


 障壁の外で待ち構えている根は何かを追う様に薄い壁の外を蠢く。

 先程までは障壁を破ろうと必死の体当たりなどを試みていた様だが、それを無駄だと悟ったのか……それとも、学習能力を持ち得ていたのか、無闇にぶつかって来る感覚は無くなった。

 閉じていた瞼をゆったりと上げ、茜色に染まる空が視界に入る。


 どちらにせよ、意思を持っているか学習能力を持っているモノが厄介でないワケがない。

 根は障壁を破れはせずとも、人は永遠に障壁を張り続ける事は不可能だからだ……障壁が消えた瞬間にどのような行動を根が取るかなど私にはわからない。


 相も変わらず障壁近くに待機している根が「何もせず」という事は有得ないだろうけども。


 一見、其々の根は意志の無い様に見えるがその動きは確実な意図を含んでいる。

 根の動きを感じ取りながら、持ち上がる二つの可能性。


 実際的に有力だと思えそうなのが「力が強い者達を捕食する習性」の可能性……簡易的に言ってしまうと力を糧に成長する植物という事。

 この場にいる者の「力」は人の中ではかなりの上位、その中でも彼らが特別飛び抜けている事も。

 まぁ、私の力は彼ら以上に桁外れなのだろうけれども、フードにかけた術で抑えてあるので心配はない……筈。


 ただ、目の前の彼らを鑑みるに微妙に外せないのが「彼ら(・・)自身を狙っている」という可能性……これは、個人的な人の意思が絡んで根を行使していると捉えた場合。

 要職についている人間が誰にも反感を買わずにいられる筈がないと私は思っている。

 人の数分(かずぶん)それぞれ真実と正義と事象は存在するのだ、反発を生まずにやっていけるのは極稀だろう。まぁ、ソレを成してしまう人間を一人だけ知ってはいるけれども、言わずもがな彼女である。

 今、目の前にいる彼らの動向を良しとしない人物がいるのかもしれない……と、其処まで考えて思考をとめる。


 此処から先を関係の無い己が邪推したとて物事は変わらない、ならこれ以上思考し疲れる必要性も無いと断ずる。


 結局ドチラにしても、私がカスタフへ戻るには問題は無い……私は、ね


 そんな思考を頭の片隅で考えながら、私は視線を目の前の少女へと向ける。

 先に述べた習性うんぬんについては可能性として、そういった植物が存在しないとは言い切れないのだが。なんたって異世界だし。

 ただ、それにしては疑問が残るワケで。

 力の突出した二人だけを根が追っているというこの現状、生き残る為の糧というのであれば周囲の従者達も私も少なからず対象になる筈……だが、根が追うのは彼ら(・・)だけ。


 明らかな作為に笑うしか無かった。


 問いかけた直後に笑った私に彼女は首を傾げながらも言葉を返してくれる。


「そうですね、(わたくし)達は火急でもありますし転移の術で離れるつもりなのですけど」


 その言葉を聞いて、まずいなぁなどと思考を回す。目の前の少女は何故先程の根が襲撃したかに気づいていない…と思う、此処を離れれば逃げられるとでも思っているのだろう。

 気付いていてこのセリフであれば、楽天家極まりない思考なのかそれとも……。


 あながち彼女の内容は間違っていない……ターゲットにされていないのであれば、の話だが。

 ターゲットにされていなければ撒いて逃げおおせる事も苦ではない。

 では、ターゲットはどうやったら逃れられるのか?


 答は至極簡単 ―――――――――――― 追って来れぬ程徹底的に痛めつければいい


 降って沸いた思考に、私も随分野蛮になったなぁ等と無意識に溜息を吐き出せば、少女はソレを見てさらに首を傾げる。


「何か不都合がございますか?」

「おい」


 少女が紡いだ言葉といつの間にやら私達の傍に来ていた青年の言葉が重なる。

 先程の慇懃さは何処に消え去ったのかと聞きたくなる程に青年の態度は不遜だ。

 別にソレに関してはどうでもいい事ではあるのだが、少女が根の狙いに気付いていない時点で話を振れる相手は制限される事に、そしてこれから青年へと言葉を紡がなければならない事に再度深々と溜息をついたのだった。





「先程の根の狙いは貴方方お二人、転移を行っても追ってくると思うのですが……」


 数分後、私は不機嫌に眉を顰め鋭い視線を向ける青年に面と向かってこんな事を言う羽目になっていた。


 …………誰か、タスケテ


 心中で泣きながらそんな事を思い、未だ威圧感たっぷりの空気を垂れ流す青年にチラリとフードの下から視線を向ける。目の前の青年は私の進言にも表情一つ変える様子が無い。


「で? ソレが事実だという証拠は?」

「……障壁を解いてみましょうか?」


 彼の言葉にピリリと張られた緊張の糸が振れる。というよりは、疲れて面倒になってきたというのが正直なトコロである。

 別に、自分への評価が彼らの中でどうなろうと私には関係ないのだからと思い直して、確かに笑っていると見せる為に口角を持ち上げた。

次話でセレファン脱出(?)編は終了予定です。

舞台はお隣のアシャステーア連邦共和国に移っていく……筈です、多分。(なんてアバウト)


そして、今更気付きました…予約掲載なんてモノがアッタンデスネ(唖然)orz

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