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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第一章
21/43

11 道中語り[後]

曖昧に暈していますが色々シュールな表現が出ています。

苦手な方はサラッと読み流して頂けたら幸い。

足音を立てずに馬車の御者台まで回れば、案の定。




山賊のオジサマに襲われそうになってるオニーサン。


「黒玲っ!!」

≪御意に≫


小声で黒玲に声をかけ 四次元フードの出口 基、マントの中から取り出すとシッカと握りしめ一振り軽く彼女を振る。

そして、山賊に向かって距離を詰める。


「ガキに何が出来る」


山賊のオジサマが鼻で笑いながら勝ち誇った様に言ったその言葉を無視して、御者さんとの間に割り込み黒玲を持つ手を横に薙ぎ払う。


ゴリッと金属が生身に食い込む鈍い音が聞こえ、黒玲を握る手には嫌な感触が伝わる。

手に伝わる感触に黒玲を持つ手が緩み取り落としそうになるのを堪える。

ヒトを傷つけるという恐怖に萎縮する身体に言い聞かせて、渾身の力で黒玲を振り抜く。


「でぇぇえいっ」


振り抜いた瞬間の状況は意外に呆気なかった。鈍い音がしたと思えば、その山賊は目の前から姿を消していたのだから。視界に移ったのは遥か向こう、林の方へと吹き飛ばされる山賊のオジサマの姿…。


あー…れぇ……………いつの間にワタクシこんな馬鹿力になったのかしら。

遠くに飛んでいくオジサマの姿に切なくなったのは、しょうがないと思うのです。


≪他の精霊達も手助けをしたからな≫


不意に脳内に冷静なファルの声が響く。


………解説ありがとう だが、この前も言ったよな?

ヒトの思考を読むな、と んで、精霊さん達の手助けがなんで馬鹿力に繋がるのデショウカ?


米神に指を当てながらナイスなタイミングで解説をしてくれた彼をねめつける様思考を紡ぐ。

その思考にファルはしょげながら≪すまぬ≫とだけ返してきた。

まぁ、私の為を思って言ってくれたのは解るので、しょげたファルに苦笑を浮かべながら感謝の意で頭を撫でる。

読まれること前提の思考はどうやら黒玲にも聞こえていたようで彼女がしょげたファルの後の説明を続けてくれる。


≪基本的にはトール様の腕力は変わっておりませんのよ? 私を持つ事で振り抜き等の威力が

 かなり上がっているのですわ それに加えて風精霊達(フーリル)がかなり頑張っておりましたからね≫

あぁ、そいうこと 吹き飛ばし効果にありえない程の追い風って事か

≪なので、日常生活でお困りになる事は無いですわよ≫

うん、そだね…………あんな馬鹿力になってたら力加減難しいだろうなぁ

≪其方ら、のんびりしてる場合ではないだろうに≫


黒玲の解説にのほほんと心中で応えていたら、復活したファルさんが呆れた様に声をかけてくる。


そういや、そうだわな


一応、此処は戦闘の真っ只中。

対峙しているお人一人を吹き飛ばしただけでは事は治まらない場所である。

まぁ、御者のオニーサン助ける為に動いたので戦闘が激しかったわけではないのですけれども。


「大丈夫ですか?」

「あ、はいっ!! ありがとうございます」


今の状況を呆然と見ていたオニーサンは、私がかけた声に深々と頭を下げる。

いやいや、遅れて申し訳ありませんーなどと心中で返し、荷馬車の中へと避難を促す。

荷馬車の中に完全にオニーサンが消えるのを確認した後、振り返り言葉を投げかける。


「さて、其処の方々 何用かね?」


虚勢を張って、恐怖を見ないフリをして僅かに震える身体を叱咤し、余裕をかまして彼等を見据える。

彼等から見えているのは見据える瞳では無く、クッと弧を描く口角……作った口元の笑みで彼らはどう、己の存在を捕らえるだろう?


 → ただのガキの虚勢

 → 余裕の笑み

 → 恐怖に引き攣っている


多分、最初か最後の自信はあるが……まぁ、挑発ぐらいにはなってくれるといいな。


「ガキ一人でこの人数の相手か?」

「一応、アンタ達一人ずつ吹き飛ばす事は出来るけど?」


先程の情景を見ていたのかそうでなかったのかは知らないが、目の前で対峙するオジサマ方は鼻で笑いながらそんな事を言う。

その言葉に冷静に聞こえる様に声を平坦にして首を傾げながら返す。口元には笑みも忘れずに。

余裕に見せかけた態度が気に食わなかったのか、すぐさま彼等の纏う空気は気色ばむ。


「そんな口も利けねぇようにしてやるよ」


私へと駆け出しながら、その中の誰かがそう言った。

誰とまでは覚えてもいないし、覚える気も無かった。


此方に向かって斧を振りかざすその姿を微かに視界に入れてそのまま立ち尽くす。

恐怖に怯えることも無く、迫り来る武器から身を護る為に武器を構える様子も見せずに。


「アンタ達の不幸は此処にいるのが彼女(・・)でなかった事だな」


静かに目の前の彼等だけに聞こえる様に呟く、ただその言葉を彼らが聞いていたかどうかは私には知る吉もないが。

そして、目の前の事実から目を逸らす事の無い様にしっかりと見据える。


焔の軌跡(アウル・ソート)


一人の男の斧が私の首を刎ねようと皮膚に触れそうになったその時、艶を含んだ静かなアルトの声音が響く。

男達の喚く声の中、その麗しい声音は不思議な程にしっかりと言葉として私の耳に届いた。

次の瞬間、目の前の情景は高温の青き炎に巻かれる。蛋白(タンパク)質の焼ける臭いと生きながらにして炎に巻かれ死に逝く断末魔が鼻と耳を攻撃する。

突然の炎に巻かれた目の前の男から数歩下がって距離を取り、斧の刃から逃れる。

火精霊(アーヴ)との契約により生じた炎それ故に、私に危害を加える事は無い。燃え上がり飛び散る火の粉すら私に触れる前にその姿を消す。

私はただ静かに見つめていた、目の前の男達がのた打ち回り、こと切れるその時まで。


燃え盛る、元ヒトであった肉塊を前に立ち尽くす私に穏やかな声が掛かる。


「あぶなかったわねぇ」

「シェラザードさん………ありがとうございました」


肉塊から視線を外しお礼を述べる為に、彼女の方へと身体を向け頭を下げる。

そんな私の様子にシェラザードさんは苦笑を浮かべ「道中一緒の子に死なれても困るからねぇ」と言葉を紡ぐ。


「なぁ、聞いてもいいかい あの時、何故動かなかったんだい?」

「あの時………ですか?」


問いかけられた内容の「時」を何処か取りかねて聞き返す。

彼女曰く、斧を振り込まれた時に動く事をしなかったのかが疑問だったらしい。


「んー…シェラザードさんがいっらっしゃるのが解っていましたし、

 呪文詠唱されてるようだったので」


そしてついでに「入り乱れると的って狙い難いかなーとか思いまして」とか返しておく。

その返答に一瞬、シェラザードさんがキョトンとした様子になったが次の瞬間には大笑いされてしまった。



私、何か大笑いなネタやりましたっけかー?


目の前で起こる事実から目を背ける事をトーコさんは自分に許さない、かもしれない。


人肉が焼かれて出る臭いはかなりキツイらしいです、ヨ?

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