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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第一章
19/43

10 何時の間にやら旅立ち[後]

暫しの熟考後。




「んじゃ、黒玲(こくれい)さんで如何でしょう?」


あっさり捻り出した私にファルが「コクレイサン?…山の名か?」とか言う。

目の前の少女もそう捉えたようで「山の名前で御座いますか?…トール様が付けてくださった名前ですもの………う、嬉しく思いますわ」とか言っている。

お嬢さんどもってらっしゃいますヨ?……激しく勘違いされている気がする。


「あ、いや、山の名前ではなく「黒玲(こくれい)」な? ごめん、紛らわしくて

 サンは敬称でサンを付けただけだから、気にしないでくれると嬉しいなー…」


慌てて訂正の言葉を入れれば、勢いよく二人から言葉が返ってきた。

お二人とも仲良くて元気ダヨネ。


(わたくし)に敬称なんて必要ありませんのよ」

「そうだぞ………それに俺には付けなかった癖に」

「…………はい、了承しましたー…ファルさんの場合はねぇ、衝撃的過ぎたノデスヨ」


ファルさんの発言に小声でボツリと呟きつつ名前で呼ぶように心がけようと思考する。


「では、(わたくし)の名はコクレイになるのですね」


噛み締める様に音を呟き少女……否、黒玲は嬉しそうに笑みを浮かべる。

あぁ、笑顔っていいなぁ。

そんな事を思いながら、その笑みにつられて口元に笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。


「ん、(ぎょく)の様に美しい黒とか言う意味になります」


「ごめんなー、ベタで」などと言いながら黒玲の頭を撫でる。

因みに「玲」という漢字に「玉の様に美しい」という意味があるのだけれども、何でそんな事を知っているのかと言いますと。自分の名前の漢字の候補だったんですってー…今更ながらにその漢字じゃなくて良かったとか思ったのは内緒デス。

だって、その意味はホンに可愛い子に適用されるべきモノですもの。


一頻り満足のいくまで撫で切った後、結界の展開を解除する。


「さて、残り時間も少ないですし≪アイオン≫に行きますか」


そう二人に声をかければ了承の言葉が口々に返ってきた。

…………賑やかでいいねぇ。

黒玲もファルと同じくSD化してもらいファルとは反対側の肩に乗って貰っている。

矢筒と黒玲本体は四次元フードの中へと仕舞わさせて頂きました。どうやら、本体自体とそれほど離れていなければ顕現は可能との事。

……しかも、黒玲さん素敵仕様過ぎでした。

実は私にしか認識されていなかった様なのですが、節事に取り外し…というか、ギミックが付いており、弦を外せば≪握り≫(弓を持つ部分の総称)の長さに全てが収まってしまう。

物質容量的に無理な話なんだろうけれども、バシレースが造ったモノなのだから何でもありかと納得しておく。

しかも一振りすれば元の2m越えに戻るという便利さ、私の必要に応じて一振りの間に弦が張られていたりする素敵仕様。

……………大好きだっ!!






そんなこんなで≪アイオン≫の受け付けにやっとの事たどり着けば、

受付のおねーさんに「来ないのかと思いましたよ?次回からは気をつけて下さいね」と言われてしまった。

………………ごめんなさい。

そして、受け取った依頼書を確認し即座に集合地である場所に足を向ける。

受け取った依頼書の内容は簡略すると「カスタフへの護送」というもの。


「急がないと…か、な」


そんなことを言いつつせっせと足を動かす。

カスタフとはこの国(セレファン)と隣国のアシャステーア連邦共和国との中継地点になる町である。

アシャステーア連邦共和国とは100以上の民族を抱えて国となっている国の様で様々な種族が入り混じっているらしい。

所謂、アメリカの人種の坩堝的なのかな。

歴史自体は部族それぞれに古いが国として成り立っているのは四百年程らしく国としては若い部類に入るだろう。

国土自体はこの世界の6分の2を占める大きな国で商業や戦力的にも強大なモノだそうだ。

その国を纏める王は歳若いながらも賢王と呼ばれ国内の支持率も高いらしい。

……………日本の政府にもそれだけ支持率あればいいのにね。

と、まぁ向こうの世界の話は置いて置き。

隣国にいく為には今から向かうカスタフを通過せねばいけない。

他にも、ルートはあるようではあるが…一番手っ取り早く近いのがそのルートなので今回の仕事は逃せないのです。







集合地に到着し、依頼受領書を提示する。

既に、他の方々は揃っており出発出来る状態の様だった。


………………重ねがさね、すんません。


「トールと言います どうぞ、宜しくお願い致します」


謝罪も兼ねて深々と頭を下げ、数拍置いた後頭をあげる。

目の前には、渋くてガタイのいいオジサマに薄青地のローブを身に着けた美人さん(男性)とやたらドギツイ眼差しを向けてくるオニーサン(多分美形分類)そして…ナイスバディのオネーサマっ!!


≪主様…とても最後の方で喜ばれましたわね≫

…………黒玲サン、今喋られマシタ?


ふと、脳内に響いた言葉に多少固まりつつ問いかける。

その問いかけに黒玲はすんなりと応えてくれた。


≪いいえ、今は思念での会話ですわ≫

…………勝手に読まれてる?

≪まさか、(わたくし)と主様は名という契約で繋がっていますの だから、雰囲気などで

 感情を微かに読める程度ですわ 先程は、視線の先が彼女に移った瞬間の空気を感じただけ…

 王の思考を強制的に覗き見れるのはファルディカーレぐらいですわ≫

……………じゃ、今の状態は?

≪主様が(わたくし)の思念に応えてくださったからですのよ 主様が応えなければ

 主様の声は私共(わたくしども)には聞こえませんもの≫


成る程と思考で感心しながら、目の前の彼等の自己紹介を聞き終わる。

渋いオジサマはリクロウさん、美人さんはファルマさん、何でか視線の痛い彼はシグルドさん、ナイスバディーのオネーサマはシェラザードさんだそうです。


目の保養万歳!!


そうして、私達をのせた馬車はセレファンの王都を出発したのだった。

さて、舞台は召喚された国から国境へと。

トーコさんの旅は始まったばかりです。

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