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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第一章
17/43

09 逃避行のはじまり、はじまり[後]

≪アイオン≫に寄る前に武器を物色しに武器屋へと足を踏み入れる。




何分、熊達との戦闘(?)で実感したのが己が刃物の扱いに慣れていないということだ。

まぁ、そこらあたりはしょうがない…元居た世界が平和な世界で自身で武力を身につける必要性がなかったのもあるのだから。

此方の世界でも大半がそうなのであろうけれども、女性が武を身に付けるということが少ない。

だが、この先旅路にでるのであればそうも言っていられない………動物達は基本的に害意を向けてくることはないが、瘴気に当てられたモノやヒトはそうは行かない。

道中何があるのかがわからないのがこの世界、しかも術ばかりを扱えば何れ≪バシレース≫について何か気付かれる危険性も含まれている。

なら、己の使い慣れている(・・・・・・・)武器も手にして置くべきだろうと。

ダガーの扱いは追々慣れていくとして、実際一番危険な時に咄嗟に扱えるものも持っておくべきだと考え店内をうろちょろしていると店主に声をかけられた。


「坊が扱える武器は此処には無いぜ」


無骨といえば聞こえは良いが、昔気質的な店主の言葉。

………………どうやら、私は男の子に間違われている模様です。一応、女で19歳なんですが。


「…弓を探しているのだが」


店主の言葉は聞こえないフリをして、胸元を彩るピンブローチに嵌められた石の色が彼に見えるように身体を声の方へと身体を向ける。

石の色を認識したのか店主が「ほぅ」と感嘆の言葉を漏らす。

≪アイオン≫の認証はその依頼を確実にこなしたと言う確証が確認されて改めて与えられる。

詐称はできなくもないが詐称を行うのであれば普通にランクアップを目指した方が楽だと言われるぐらいに詐称術は複雑だそうだ。

この外見ではそんな詐称術を使うようには見えないだろうし、詐称術が使えればランク換算では【灰】に分類される。【紫】ではランクが低すぎる。


「そのナリで【(プルプ)】か」

「…成り行きで ですが、ね」


続けて紡がれた店主の言葉に苦笑で返せば、「成り行きで上がれるほど易しくはねぇだろ…ホレ、弓は其処だ」正論を言いながら弓が纏めておかれている一角を指し、彼は言う。


「ありがとうございます」


頭を一度改めて下げて、弓が集められている一角を物色し始める。

ただ、依頼取り押さえには期限が設けられている為手早く見繕わなければいけない。


さて、どれにしようか。


フム、と考えながらゴソゴソと弓を手に取っては爪弾いてまた戻すを繰り返すコト約数十回。

一番直感的に引かれた弓を手に取る。その弓は奥の奥で眠っていた。

形状は和弓に良く似たしかし金属で作り上げられた弓、私の身長以上ある黒銀の金属本体に美しい紋様が刻まれた弓。全長は2mはあるだろうか……弦の部分が簡単に取り外し可能になっており、中近距離用の武器にもできる要素がある。まぁ、趣味の域を出ないモノだったが元居た世界では中学1年から大学3年の現在に至るまで続けてきた数少ない興味の持てるモノだ。

動く的…は()た事はないが、流鏑馬(やぶさめ)遠的(えんてき)ならば幾度もさせてもらっているから何とかなると思いたい。それに弓を学ぶ上で、その形状の理由なども習い一応一通り薙刀の扱いも学んでいたので間合いの取り方に困らないしな。

それに………この()に惹かれるのだ。私のこういう直感は外れない。

その直感にしたがって店主に購入を申し出る。


「店主殿、コレを購入したい」

「………ソレはやめておきな」


黒弓を彼の目の前に差し出しながら値段の確認を取れば、弓に目を留めた店主は眉間に皺を寄せた。

購入をとめるような言葉に疑問を持ち、首を傾けながら問い返す。


「何故?」

「ソレは【厄】付きだ………そいつを手に取れる(・・・・・)ヤツがいたとはな」


色々と含みのある言い方をされた気がする。そんなに曰在りの()なのだろうか。

しかも、何かその言い方だと見つけたのさえ凄い的な意味合いに聞こえますよ?


「その言い方だと、手に取れなかった方々がいるようですね」

「まぁ、な………手に取ったとしても直ぐさま此処に戻ってくる」


戻ってくるというのは、呪いとかの類で戻ってくるのか…………それとも、射手が扱いこなせていないのか。

後者っぽいんだけどな。


「………射手を傷つけて?」

「あぁ………噂位は聞いた事が在るだろう? 【射手殺しの魔黒弓(まこくきゅう)】の それでも買うかい?」


感でつい尋ねてみたらドンピシャでした、うん……ものごっつー感が冴えてる。

いや、私その噂知らんよ?…………召喚されて一週間も経ってないしねぇ。噂を拾える程外に出てないって言うのもあるけど。

精霊さん達に頼んでたのは、世界の状況に対してだったからきっと省かれたんだろう。

わー…この()そんな二つ名付いてたんだー…豪華ねぇ。

まぁ、大概のモノが私を傷つけられるとも思わないし、私は私の感を信じる………きっと、多分。

それに一番扱いやすい形状してるんだモノ………アーチェリー形状は苦手なんです。


「はい……私はこの()がいい お幾らで」

「………1セレだ、≪アイオン≫の割引もあるからなその値段でいい、矢も付けて置いてやる」

「ありがとうございます」


そう深々と頭を下げ彼の手に1セレ硬貨を渡す。その時に「坊、命は大事にしろよ」と言われてしまった。

其処まで≪危険≫な()には見えないのだけれどもなぁ。

そう思いながら弓を肩にのせ、矢筒を背負う。

うん、他に邪魔な荷物が無くてよかった……………手元が塞がってるのは苦手なんだよねぇ、実際は矢筒も如何にかしたいのだけれども。

フードに突っ込むとしても、此処は人目につき過ぎるな。

因みに、フードに入れたモノはマントの影から取り出すことが可能になるという便利使用を昨日追加しました。そのお陰で取り出すのが随分と楽になったので、お買い物も困らない筈だったんだけどな。

そんなクダラナイ事を思いつつ購入後、早々にその店を後にし人気の無い場所へと向かう。


「なんだ、≪アイオン≫へは行かぬのか」

「いや、行くよ?………その前に、ちゃんと話さないとな と思って」


良くわからぬという風に首を傾げるファルの頭を指で撫で、街と森の境に出る。

境に入った瞬間に、空間閉鎖的結界を展開し実際の街から自分達を切り取る。

何故、結界を展開したのかファルも悟ったようで何も言うことなく私の次の行動を待っている。

魔力感知等で私の存在がばれるのも面倒だし、まだ抜け出したばかりで城のお膝元の街なのだからある程度の予防策は取っておかないとね。


「さて、姿を見せてはくれないかな……麗しの黒銀の弓姫」


そう手に持つ黒銀の弓に問いかければ、その弓が一度大きく胎動した気配がして私の目の前には目も眩むほどの真白の肌に黒銀の艶やかな髪、美しい薄金の瞳を持つ少女が宙に浮いて其処に居た。


「王に喚ばれるなれば、幾らでも」


鈴を転がしたような声音で、笑みを称えながら少女は言う。ただ、浮かべる笑みは歳若い少女達の浮かべる無邪気なモノとは異なり艶を含んだモノ………弓で在るからして見た目通りの年齢とはいかない様である。

まぁ…此処まで、姿を顕現できる武器が数年モノとはないだろうしねぇ。


「【厄】付きには全く持って見えないのですけれども」


姿を見て核心した、【厄】と聞いて一瞬忌石に関係しているのかとも思ったが彼女の顕現した姿からは瘴気のしの字も感じられない。

その感想でボツリと一言漏らせば、少女は冷めた目で紡ぐ。


(わたくし)は王の為だけに造られた武具ですもの、王以外の者に扱われるのは

 ご遠慮致しますわ」


その言葉に続けて彼女は「それに、扱われるのを拒否して射手を傷つけただけで 殺してなんかいませんわよ……確かに遣り過ぎた感もありますが」と言う。少女の外見でむすくれる姿は可愛らしいが、言っている内容は空恐ろしい。

しかし、始めに紡がれた言葉の意味がどうしても気になった。


「…王の為だけに造られた?……王はバシレースのコトでいいかな」

「はい、(わたくし)を造りしは2代目バシレース・ニュスですわ その方が≪4代目(あなたさま)≫の為だけに造られたのが私ですの」


私の問いかけににこやかに返してくれる美少女はとても可愛い、ってそういうことじゃなくて。

今、4代目とか聞こえたのですけれども?ピンポイントで私って言われませんでしたか、ね。


「………………………………はい?」


惚けたような私の言葉を無視してファルが納得したように「そう言えばアヤツは未来視が得意だったな、鍛治を生業としておった脳筋だったのにな」そう呟く。

…2代目は脳筋ダッタンデスカ、ファルさん。


「ファルディカーレ…ファネス様への侮辱は(わたくし)への侮辱と取りますわよ」


剣呑な雰囲気を醸し出しながら美少女は紡ぐ、ファルもファルで「はっ、事実だろうに」などと言って煽る。

どうやら、2代目のお名前はファネスサマと言うらしい。

なにやらバチバチっと火花が飛び散りそうな二人のやり取りに置いてけぼりな私です。

アンタ方仲いーねぇー…。


そんなコトを思いながら、どうやってこの二人の言い争いに収拾つけようかと思い悩むのだった。

まだ、城下街から抜け出せておりません。

次こそは、街の外へ…出れたらいいなぁ。


そして、新しいコが登場しました。

美少女はイイですよ、ね。

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