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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第一章
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09 逃避行のはじまり、はじまり[前]

さて、期限の日まで後一日を切ったワケですが。




夜の帳がまだ上がりきらぬ頃、コトリと羊皮紙の隣に羽ペンを置く音が一室に響く。

掛けられた監視の術はいつも通り上書きを施してあるから、朝が来て侍女の方々来るまでばれる事はない……と、思いたい。


「出るのか」

「今日、出なければもう機会はこないだろうしね」


ファルの問いかけに答え、「百合さんの………物語が終わるまで利用され続ける囚われの身なんてゴメンこうむるわ」そう続ける。羊皮紙に綴られたのは、まるで書留の様な短文が数文。

そして、


「ごめんね、百合さん 友達甲斐のないヤツで」


それだけ呟いて、マントを身に付ける。

マントは部屋に置いておくといつ見つかるか解らない為、基本はファルにしまっておいて貰っていた。

そんな手間も今日でお終い。

此方に来た時に身につけていた服は既に四次元フードの中へ、マント自体破れて使い物にならなくなると困るので術で強化させている。その強化に気配を消す術も含まれていることは言うまでもない。


また、いつか…ね。


そう口だけで紡いで転移の術を発動させる。

部屋自体にファルが魔術の発動の気配を消す術を施してあるから、遠慮なく使わせてもらう。

そして、二人が姿を消した後にはそれら術の痕跡を消す術も平行して施す。

私が力を覚醒させているということに気づかれてはいけない。

バシレースはあくまでも世界と同等、ヒトに扱われ利用される存在になってはならない……と、心の奥底で誰かが囁く。

意識を集中させると共に私を中心に足元から仄明るい光が複雑な陣を形成する。


≪外へ≫







陽が昇り、人々が活動し始める頃。

彼女にあてがわれた部屋からその人物は忽然と姿を消した。

友人である聖女へ置手紙だけを残して。

城にいた魔術師が部屋を検分しても魔術が使われた形跡はなく、監視の術も歪められた気配も無く正常に作動していたとのことだった。


残された置手紙にはこう書いてあったそうだ。


『 百合さんへ

  この手紙が手元にある頃には私は居ないと思う。

  すまんね、私は別行動とらせて貰うよ。

  ちゃんと生きてはいると思うから心配せんで?


  アンタも頑張んなさい、無事であることを祈ってるv

                                亨子

  P.S.

  狼にはお気を付けあれ

  またね                                』








「…………っ、トーコさんのっ ばかぁぁあああっ」


その日、城の者達は初めて聖女の怒った声を聞いた。

お城から出立、珍しく聖女様は大絶叫。

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