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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第一章
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08 初めてのお仕事[前]

そして、私は受けた依頼をこなす為に森の中に立っていた。




依頼受領時に受け取った羊皮紙を覗きながら移動する光景はなんとも言えない。

草木を掻き分けながらあっちへふらふら、こっちへふらふら、真剣に探している気配は毛頭無い。


「しかし、目的のキノコは何処だ」

「木々達に聞けばいいだろうに」


ボソリと漏らした言葉にフードに埋もれているファルが冷静なツッコミをくれる。

……………だって、こういうのってウォー〇ーを探せ的だから自分で探したいじゃん。

多分、木々の精霊さん達に聞いたら即座に教えてくれるとは思う、というかキノコさん自身から申し出てくれそうな気配が満載なのはわかってるっ。


だって今までのお使いがそれでどうにかなってるんだものっ。


一つ目の依頼は 【お貴族様の飼い猫が行方不明なので探して来い】 だったのだが、

お貴族様の屋敷の従業員総動員しても見つからなかったにゃんこが「あ、王様だー」とか言いながら寄ってきた時には如何しようかと。

一瞬、この世界のにゃんこは喋るのか…………とか思いきや、私にしか聞こえてなかったとかいうオチ。

基本、感情が表情に出にくいのが幸いした。他の人には喋ったように聞こえないニャンコの声に素で応えてしまうほど危険なことは無いと思う。

精神異常者扱いはされたくないからね。

王様って…多分、バシレースのことよね。にゃんこにまで知られてるって何……つか、ヒトにばれていない方が凄いのか?と悩まされたものである。

ファルさん曰く「精霊や植物、動物などは僅かな気配の違いにも敏感な様だからな」だそうで。

………ヒトとか人とか人間とかは鈍いということなのだろうか、などと呟けばファルは「リョーコは無意識でバシレースの能力を制御してる節があるからな もしかしたら、無意識にヒトには感知されぬようにしているのかもな」とか言っていた。

もしもしファルさん?

……つい、数日前に何とか一部の能力だけ制御できる様になったんですが、私。


そして二つ目は 【家の屋根に害虫が巣を作ったので取り除いて欲しい】 だったわけだが、

その家に言ってみれば巣を作っていたのはスズメバチっぽいもの。

コッチの世界でも猛毒所持で刺されれば死に至る害虫だそうです。

ただヒトにとっての害虫なので、出来れば駆除はしたくないなぁと思いつつ。先程の猫の例もあってか人払いをして蜂さんに話しかけたワケです。


「すいません、此処に巣を作られてしまうと貴方方を駆除しなきゃいけなくなるんで

 引越しって、出来ませんかねぇ」


「お引越しの手伝いは幾らでもしますんで」と付け加えて言えば、女王蜂サマが出てきて「王がそう仰られるなら、御意に」と快く了承してくれました。

後は巣を丁寧に屋根から取り外して彼等のいう餌場が近くてヒトとは遭遇しそうにない木に再度くっつけて作業終了。

厚地の服で覆う必要もなく蜂さん達は全員外に出て飛んでくっついて来てくれました。

巣はちゃんとしっかり抱えて運んだよ、木に取り付けるときには練習がてら浮遊の術を使って高いところに取り付けました。

どうやら、そっちの方が立地もよかったらしくて蜂さん達に感謝されつつそこで仕事は終了。


と、まぁ前述二つの依頼はどちらとも対象が勝手に自分で出てきてくれるとか、簡単に了承してくれるとかで済んでしまっているわけです。


今回の依頼は 【薬に使う貴重なキノコを取ってきてくれ】 なのだけれども

同じような結果になりそうな気配がプンプンとしているのですよ。


「別に、悪いことをしているわけではないのだから良いではないか」

「確かに、そうなんだけどね」


そうなんだけど、ね!こう、何ていうか自分でシタっていう感覚が無くて寂しいんです。

作業をしてる間は割と好きなんです。やる前と終わった後は面倒なのですが。


「このままでは、夕食までに戻れぬぞ」

「あー…それは面倒、今のまま平穏に雲隠れしたいからソレまでは目立った行動したくないね」


「んじゃ、お喋りしますか」そんな事を言って歩を進めつつ、「パパステラキノコさんいらっしゃいますかー?」となんとも間抜けな声かけをしてみれば「「「はーい」」」とすぐさま返事があった。

まぁ、この能力も便利ですよ えぇ、とてつもなく。

森の結構奥の方にあたる巨木の幹の虚の中、目的のキノコさんはいらっしゃいました。

結構な量ビッシリ虚のなか中に生えていたので10株程残して袋の中へと入れていく。

や、天然のキノコの養殖所になってるからこのままおいておいたらまた増えてるかなーとか思ったのです、はい。


「以外に奥まできちゃったーねぇ」

「まぁ、希少なモノだからな」


ファルと軽口叩きあいながら、きっちりキノコを入れた袋の口を閉める。口を閉めた袋は被っていたフードを取りフードの中に突っ込んだ。

どうなっているかというと、チョピッと時空魔法と空間魔法を編んだ術で四次元ポケットにしてあるんですこのフード。そのお陰で手持ちはラク。だって、手持ちが多いのは許せないんだもん、つか向こうの世界では財布も持ちたくなかったんだよ。

しかも空間とかいじくってる類なのでモノが腐ったりとかしないあたり優れもの!

まぁ、ソレまでに幾つか失敗作作ってるんだけどね。

改めて、フードを目深く被りなおして品物をお届けに行こうと歩き出せば木々がざわめく。


「なんぞや?」

「?」


行き成り風も無く騒ぎ始めた木々達の様子に耳を澄ませてみる。


≪王、ニゲテニゲテ………キケン≫


ざわりざわりとまるで「早く、早く」とでも急かすかの様に葉を鳴らす木々達。

私達を心配してくれているのが、危険から遠ざけようとしてくれているのが解る。


「………何かやばい雰囲気だなぁ」

「リョーコは暢気だな」

「ファルもね……んじゃ、ま 面倒事に巻き込まれない内にさっさと森をでるよ

 ダッシュするからファルはしっかり掴まってるよーに あ、それと外ではトールで宜しく」

「心得た」


ファルの返事を合図にダッシュで走り始める。木々や草、石達もキケンを理解しているのか私の走る先を邪魔しないように避けてくれる。

そして、ファルに与えられた身体はやっぱり性能が良かった、≪疾く≫そう願うだけで受ける風の強さが変わった。

ただ、ソレをもってしても≪危険≫からは逃れられなかったのだが。


「だーい、ピーンチ?」

「余裕だな」

「いや、虚勢」


そんなやり取りをしながら対峙しているのは3m以上の巨体を誇る 熊らしき生物×4。

しかも4体とかありえねぇ………。

そういえばキノコ採取の隣に人食い熊撃退依頼なんてモノが在りましたねぇ、【(プルプ)】ランクで。【紫】ランクであるのだからそれなりに危険度が高く人手も要するモノなのだろう。

あー…運ないわぁ。


「リョ、トール…こやつら忌石の瘴気にあてられている」

「…………ってコトは近くにある?」

「欠片がな、塊であればもっと被害は大きかろう」


「成る程」とか頷いている間に、目の前の熊さん達はグルグルと唸りながら私への距離を縮めてきていた。その熊さん達に絡み付いている、どす黒い粘着質っぽい靄状のモノが見えた。


……何じゃね、アレ 不気味にも程があろうっ!!

此方が靄状の多分 瘴気 にビビッて居ると一体が飛び掛ってきた。

ふぎゃーっ!!

ピンチがピンチに感じられない謎。

というより、表現力欲しいですorz

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