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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第一章
11/43

07 資金調達と通貨の話[前]

それは異世界に来て二日目とは思えない朝だった。



「ふひゃぁー」

妙な声を上げながらムクリとベッドから身体を起こした私は大きく伸びをする。

無為に時間を消費するわけにはいかないからだ、基本私に与えられた時間は後六日。

その間に、この世界での常識、知識の収集と旅立つ資金の調達をしなければならない。

百合さんみたいに国が出してくれるわけでもないから、バシレースの能力を駆使して時間を作って自分で収集するしかないのだけれども。


「ファル、おはよう」

「うぬ……おはよう、リョーコ」


ちみっこいファルが眠そうに瞼を擦りながら身体を起こすのが見え、声を掛ける。

昨日の夜は勉強にかなり付き合ってもらったからなぁ、などと思って頭を撫でれば穏やかな笑みと声音で挨拶を返してくれる。

実際、勉強したといっても身体は眠っていたのだけれども。

先日の状態の様に精神だけ抜け出した状態でファルに基本的な常識や魔法・魔術というものを叩き込んでもらっていたのだ。

なので、身体は疲れてないが脳は眠いという状況に陥っているわけだが。


時は金也!

ちゃきちゃき活動して資金調達しなければいけない。

そんな事を思いベットから勢い良く出れば「のぁっ」と言う声が聞こえた。

………………どうやらファルを巻き込んでしまったらしい、すまん。


精霊に頼んで外の音を伝えて貰える様にしてある為、こっそりと耳打ちしてくれた。

ファルの前じゃあんまり意味ないんだけどね。


どうやら、百合さんは旅の準備で午後以降数日間忙しくなるらしい。

その前に捕まえなきゃ、だね。ただ、どうやってお付きの人達を巻けばいいものか……。

ずっと傍で控えて内容を漏らされても困るし、…………百合さんも長期黙っていられるかといったら微妙なトコなんだけど。何分、嘘の付けない人だからな…お偉いさん方相手に迂闊に漏らしかねない。

それだと、私が至極困るワケで。

うーん…………、私がトンズラこくとくに置き手紙でも置いておくか?

あ、それいいかも。日本語であれば他の人は読めないだろうし。


おし、決定。


トンズラ前日に手紙を残すという方向性に決めれば後は行動するのみ。

情報収集は、風の精霊さん達に投げました。だって私の体は二つには分裂できないのだ。

くそう、私が二体居れば効率がいいのに。

そんなことを思いながらファルを頭に乗っけて侍女さんが運んでくれた朝食に手を付ける。


しかし……此処って、朝ごはん 米 じゃないんだよね。

米大好き人間としては切ない限りのパンの朝食……力が出ないヨ。


しょげた私をファルがよしよしと撫でてくれるが気力はちょびっとへしょげたまま、こっちで米ってないのかなーなどと思っていたのでした。

その朝食が終われば私は特にすることの無い暇人、だが部屋からは出してはもらえない。

一応部屋の中に御付の方はいないものの、一応賓客扱いに近い形で聖女の隣部屋を与えられているので部屋の扉の脇には人がついているんですよ、ね。


出してもらえない………ならば、出てしまおうホトトギス…ちと、古いか。


精神での勉強会のお陰である程度は使いこなせる様になったバシレースの能力、ただ他にどういう力を有しているか今一私はわかっていない。

まぁ、自分の身丈にあった能力が使えるだけでいいんです。

目下は、うまーく城から抜け出せればそれだけで充分。

そんな事を思いつつうまーく能力で誤魔化しつつ精霊さんたちの手助けを借りて城外へ。








「ビバ、しゃばっ」

「…びば???しゃば???」


ばんざーいと両手を挙げながら言った言葉にクエスチョンマークが山と浮かんでいるであろうファルに「外はいいなぁってこと」と簡単に訳して伝える。


「リョーコは外に出たかったのか?」


「なら、いつでもだしたのに」などと言ってくれるファル。

お前さん、ホント可愛いわぁ……ただ、力技で外に連れ出してくれるのは無しね。

やりそうで怖いから今のは聞かなかったことにしておく。


「まぁ…ソンナトコ 自力で出てやったからいいけどね!」

「リョーコが良いなら別に良いが……………」

「さーザクザク稼ぐぞーっ!!」


それから数日は昼間は資金調達に出稼ぎに、夜は夜とて能力や魔法・術の練習に明け暮れたわけですが。

稼いでいたのは精霊達が見つけてきてくれた果物を魔法で凍結させて砕いた氷菓子を売っておりました。ほら、擬似アイ〇の実、あんな感じ………丸くはないけどね。

これがちっちゃい子からおじいちゃんおばあちゃんまで好評で結構な稼ぎになったのです。

もの珍しさも相まって、色んな方々が買いに来てくれたしねぇ、ラッキー。

二、三日で結構な額が溜められました。


この世界で、貨幣は国ごとに分かれるらしい………これは城の侍女さん達に数時間紛れて仕事をこなした時に仕入れてきた知識である。

ファルさんは貨幣の単位までは認識してなかったんです。

一応この国では硬貨が主体、他の国は紙幣があるところも在るらしいが今回そこは置いておく。


白っぽくてアルミ素材っぽい一番小さなコインが【1ファン】

銅素材っぽい赤いコインが【1ファンズ】

銀素材っぽいコインが【1セレ】

金素材っぽいのが【1セレズ】となる。


硬貨の単位的には昇順で並んでいる状態。

1ファン×10=1ファンズ 一円と十円の関係だね。

1ファンズ×100=1セレ 1セレ×100=1セレズになる。

日常のやり取りはファンとファンズでやり取りされ、セレとセレズは滅多にお目にかからないのが常のようである。

余談ではあるが1ファンは10円あたりの換算で見積もってみよう。


この国では市場単価がそれ程高くは無かったから5ファンぐらいで売ってたんだけど、それでもかなり儲かったのはありがたい事です。

素ではタダだし、其処まで裕福な人達じゃなくても食べて欲しかったから基本お安くがモットーでした。

大量の氷菓子を売り切った後、ドコゾの悪徳商人宅の倉庫の果実がごっそりなくなってたらしいとかそうでないとか噂で聞いたけど………………しーらんぺ。

セレファンでの通貨のお話でした。

他国ではまたちょっと変わってきます。

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