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世界は無常に満ちている  作者: 花井
第一章
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06 選択肢

旅の準備の為、百合さんと私以外の人たちは慌しく動き始めた。




「どうしようか?」

暢気な様子で訪ねてくる百合さんに「どうするもこうするも、ねぇ」と返しながら二人してあてがわれた部屋に戻ったのだった。

部屋に入り一人になったのを確認し、ふむっと顎に手を当て椅子に腰掛ける。

さて、ここで考えよう、私の目の前には幾つかの選択肢がある。


 → 百合さんと一緒に世界救済の旅にでる

 → 早々に此処からトンズラこく

 → 此処に残って職を探す


あ、後 何にも言われなかったから今の今まで思いつかなかったけど。


 → もういっぺん死んでみる


この手段もあるか。

で、先ず無理そうなのを上げてみる。

仮初めの身体でももう一度死んでみるのはゴメンなので却下、それに自分から命を無駄にしたくはない。

此処に残って働くっていうのも手だけれども、エルピスと共に召喚されたってのが筒抜けなので却下。

色々気を使わせて働きにくかったり、エルピスを掌中に納めようと画策する輩がいないとも限らないし国を巻き込んでの大掛かりな面倒事になんて関わりたくない。


では、残る二つ。


百合さんと旅に出る、これが一番の良策ではある。

私の心身の疲労を除けば、の話であるが。何分既に彼女は王太子を落としているしこれからもその被害者(?)は増えると容易に予想される。

ヒトの惚れたはれたに関わるほど無粋じゃないし、そんなことはめんどくさいのでそれは避けたい。

いっつも、いらぬ妬みを買うのは私なのだから今回ばかりは避けたい。

あの王子にネチネチとなんだかんだ言われるのは絶対的にイヤだ。


とるとすれば、残る一つ「早々に此処からトンズラこく」なのだが。


………………トンズラこくって行っても、何処に行くよ私。

見事なセルフツッコミでペシャンコにされるわけだが。

一番とりやすく、心労的には最も優しい策ではある。ただ、私が途中で野垂れ死にしないかどうかが怪しいが。

ていうか、この世界に着いた時から言語に違和感はないけれど…日本語で喋っては、ないわよねぇ。

これもこれで、補正の内なんだろうけど…文字もかけるのかしら。

この世界の識字水準ってどんなものなのか、そしてどれぐらいあったら外へ出てやっていけるか…そこらを調べないといけないか、な?

この国に留まるにしても旅に出るとしてもある程度の常識は仕入れないとね。


……………しっかし、まぁ監視がウザったいことこの上ないコト


チリチリと首筋を走る違和感に眉間に皺を刻みながら思考を巡らす。

多分この国に留まればこの監視は私がこの世界から居なくなるまで続くのだろう。

異世界から来た者は大きな力を顕現する…というのだからソレをむざむざ放置しておくことを上はしないだろう。

聖女とはいかないにしろ利用価値は在るのだから。

それも、またウザイ。


「部屋だけでも如何にかならんものか」


そう、ポツリと漏らせば不意に直ぐ脇…右腕の辺りから言葉が返ってきた。


「其方のバシレースの力で拒絶すればいい」

「いやいや、その≪バシレース≫っていうのは気付かれたくないの、ね……って

 ファルさんナンデココニイラッシャルンデスカ?」

「リョーコと話がしたかったから具現化してみたのだが……変か?」


私の右腕の腕にチョコンとSDサイズでのっかっている、翡翠の髪と薔薇色の瞳を持つ褐色肌の世界(ファルディカーレ)は首を傾げながらそんな事を言う。


「変かって、変じゃなくてべらぼうに可愛いんだけどって、そうじゃなくて……具現化って」

「そうか…変じゃないんだな、ならいい」


可愛いという言葉に満足そうに頷くファルは可愛いんだけれども、だけれどもっ。

とてつもなく撫で繰り回したい衝動を抑えつつ、憮然とした口調で言葉を紡ぐ。


「良くない………私には今監視がついているのね、ファルのことがばれると色々厄介なんですが?」

「リョーコにしか感知できないようにはしてある」


私の心配をよそにファルは「それに、この手の監視は音は伝えていない 風の精霊共が動いていないからな」そう飄々と言う。


「私が下手に動かない限りは変に思われることはないと」

「そういうことだ、それにこういう術はバシレースの力で書き換える事が可能だ」


ファルが言うにはバシレースの能力で行使されている魔術が感じ取っている動きを書き換える事が可能だそうだ。

簡単に行ってしまえば、録画したビデオを延々流し続けるようにすることも可能だと言うことらしい。

録画した内容が動きの少ないもので在れば在るほど見ている側には気付かれにくい。


「そうすれば、私はその時間に色々な情報収集が可能……でも気配でわかるんじゃ」

「そこは気配を誤魔化すように精霊達に頼めばいい、リョーコの言うことなら喜んで聞くぞ?」

「………その肝心な精霊さんが見えんのデスガ」

「我が与えた身体だ………出来ないと思うから出来ない」

「…………出来ると思えば見える?」

「見たいと思えば、出来るのではないか?」


何てアバウト。

首を傾げて楽観的にそんなコトをいうファルを指でつつきながら、精霊さん見たいですとか念じてみる。

特に何も起こらない…………やっぱり、ただ念じるだけじゃ駄目か。

………これじゃぁ、修練とかしないと使いこなせないのかねぇ、どんだけ掛かるんだ。

そう頭を抱えて先のことを思い浮かべて、目を閉じる。


「我が行うか?」

「それで世界の力使っちゃ駄目だろ」


ファルの言葉にパッチリと目を開きそう言えば、ファルがショゲた。

SDサイズのちみっこがショゲルのも可愛いなぁ、などと思えば視界に何かが映った。

視線を何かの方へと向ければ、半分以上透けてる美人さんがいた。

しかもこの部屋のいたるところにフヨフヨと色んな色の方々が浮遊してらっしゃるのだ。


「………………ファルさん、これが精霊さん?」

「そうなるな、エルピスとリョーコの存在に引き寄せられて色んな精霊がさっきから

 構って欲しそうにしていたからな」


私が漏らした言葉にファルがうっとおしそうに冷静なお言葉を添えて返してくれた。

よく、取り乱さなかったものだと自分を褒めたい。

しかし、何でそれだけ、精霊さんには愛想悪いんだお前……と、そんなコトを思えば平然と「我がリョーコに構ってもらえる時間が減るからだろう」とのたまわれた。

……………というか、また読まれた?


「ファル…………今度、読んだら怒るよ」


にっこりと笑んでそんな事を言ってみればファルがびくっとしたが気にしない。


「で、さっきのバシレースの能力使うにはどうしたらいいわけ?」

「先程から既に行使してるだろう」

「へ?」


何とも間抜けな言葉を返した私にファルが呆れた視線を向けてきた。

ひどいよ、使い方も知らない人間なんだから仕方ないでしょうに。

そんな事を思えば視線から感じ取ったのかファルが戸惑ったように話す。


「先程の我の説明で既に行使しているから解ったものだと思っていた………

 無意識で行っていたのか」

「…………え、私無意識で使ってたの? ソレって結構危険じゃない?」

「危険…という程では無いが、不便だとは思う」

「デスヨネー………如何したら、いいのかねぇ」


そうボツリと呟けば、ファルが私を見上げながら「バシレースであれば直ぐに制御できるようになる」そう言う。

どうやら、これまでのバシレースは使い方は勝手に理解したらしい。

というか、力の行使を無意識にやってのけたのは私だけらしい……そういや、さっきからあのチリチリと感じる首筋の違和感がないと思ったらそういうわけか。

まぁ、現在進行形で監視はそらされているようなので周りの精霊に頼んで内から外に音が漏れないよう、外の音に異変が在れば直ぐにわかるようにしてもらった。

なんてラクチン。

改めて体を楽にしてファルと話し始める。


「リョーコは何にしても今までのニュスとは違うな」

「其処まで違う?」

「先ず、性別が違う」

「…………………………ハイ? 其処からデスカ」

「其処からだ」


妙な沈黙が二人の間に落ちるが、其処を気にしては話が進まないので息を大きく吸い込んで改めて問いかける。


「……一応確認、今までのバシレース・ニュスは全員男の人だった?」

「そうだ…もともと、バシレースとは「王」を指す 「王」とは男で治める者を

 指すことが多い、ただ居たといってもリョーコが来るまで3人しか居なかったがな」

「……少ないねぇ、何か理由があっていないとか」

「まぁ、単純に見合う魂が居ないというだけなのだが」

「見合う魂とかって如何見分けるのさ」

「…見分けるワケじゃない、魂に触れた瞬間に理解するんだ コレダ と」


ファルの話に「へぇ」と感嘆の言葉を零しながらその後、軽く今までのバシレース・ニュスについて聞かせてもらった。

話を聞く分には私は何から何まで規格外だと言うのは解った。

嬉しくないけど、ね!

能力の行使然り、性別然り、魂の在り方然り……そもそもここの世界に飛ばされたこと自体が突発的なものなので仕方ないのかもしれないが。

ファルが「そういえば」と言葉を紡ぐ、何か思うことでもあったのかと視線を向ければ、特に重大でも何でもないように言った。


「ニュスは魔法や魔術は無制限に意のままに操れるからな、(ここ)から出るのであれば

 それで生計が立てられると思うぞ」


「それで生計を立てていたニュスもいたからな」とか続けて言う。


「それだっ!!」


魔法と魔術が使いたい放題なら外でもやっていける、その事実にグッと右手で握りこぶしを作る。

そういったものには資質が必要な様だがソコは問題ないようだし。

よし、コレで外でやっていくことに目処はついた。

なら後はどうやってこの城から雲隠れをするかということと、情報と必要な資金の調達になってくる。


「役に立てたか?」

「大いに」


ファルの問いに満面の笑みで彼の頭を指で撫でると、彼も嬉しそうに笑った。

あぁ、可愛い。

ファルの可愛さに現実から逃避しかけた気力を引っ張り戻して確認したいことを彼に訪ねる。


「そういえば、ファルは世界なんだよ、ねぇ?」

「そうだな、この世界が 我 だが」

「世界の常識とかってわかる?」

「国の情勢などは興味が無いから知らぬが、基本的なモノなら少し」


そう言う彼に深々と頭を下げて「教えてください、ファルサマ」と教えを請うたのは言うまでもない。

SDがたファルさんとのやり取りが書けて満足。

ただ、会話ばかりになってしまった(汗)

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