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団白虚録  作者: やんだやん
小学生
4/28

小学5年生 登校日

夏休みには、なんの意味があるのか分からない登校日というものがある。

先生たちも休みたいんじゃないのか?

休みにすれば全員ハッピーなのにこんな日が必要かい?


私は心の中で悪態をつきながら登校している。

というのも、あれから一週間以上経ったが、まだ奴に連絡をしていないのだ。


気まずい………

連絡すると言って、していないのはかなり気まずい……


しかし、もう連絡していないものは仕方がないと開き直り、家からあまり出ていないであろう白い肌を日差しに晒しながら、ぶっきらぼうに登校する。


自分のクラスを見据え、教室へ入ろうと中へ目を向ける。奴はまだ来ていないようだ、と安堵したその瞬間、後ろから心臓を一突きにされる。



「おはよう」



まるでそのように錯覚させるほどの見事な不意討ちを、この出来杉カイザー奴隷皇帝から食らってしまう。

私は驚きのあまり教室の入口でしばし硬直し、油の切れたロボットのようにぎこちなく振り向く。



「Oh……aow」



ハワイにいたのは私の方かもしれない。

そう思わせる程にはネイティブな挨拶をかます。


彼は少し焼けた顔で、クスッと笑みを浮かべて席へつく。

私は深呼吸をし、ロボットから人間に戻り、平常心を取り戻して席へつく。



「そういえば、遊ぼうって言ってたよね?」



私の平常心は、儚い花のように花弁を落として崩れ去った。



「はい」



はいってなんだ。

自分で言った言葉に疑問を呈する。



「せっかくだから、予定とか今日決めちゃおっかな〜って思ったけど、どう?」



気の利く男子かよ。ていうか、少し楽しみにしていました!!みたいな、はにかんだ顔をするんじゃない!

そんな顔、茜と葵が見たら、発情を通り越して蒸発するぞ!!!


頭では流暢に色々と考えて、1人でノリツッコミを決めていたが、



「はい」



自分不器用なもんで………どうやらお口はまだ夏休み気分のようで、はいか、いいえか、関係ありませんしか言えなくなってしまったようだ。

今の私はウミガメのスープのゲームマスターに適任です。



「じゃあ、放課後みんなで集まって決めようね」



しかし、そんな私を他所に、楽しそうに微笑みながら彼はそう言った。


その後も私は崩れ去った平常心を取り戻そうと深呼吸したり、脳内でディズニーシーのクラッシュを召喚して尋ねてみたりしていた。

頭の中のクラッシュはとても優しく色々提案してくれるが、最終的にお前たち〜〜最高だぜぇ〜〜で全部片付けるパリピウミガメとなっていた。

お前、そんなんじゃスープにされちゃうぜ。



▼▼▼▼▼▼



そんなくだらないことを考えていたら、あっという間に放課後になった。



「モジモジ…」



茜が言葉でもじもじをアピールする。



「だ、団長くん久しぶり…」



葵が言葉尻をすぼめながら、頬を染める。



「じゃあ、この4人で遊ぶということでよろしく」



ぶっきらぼうに、綺麗な花には刺があるぜ??と言わんばかりに私、白花が話を進める。



「うん、よろしく」



彼が言葉を発するだけで、その吐息を全身で浴びてしまったと錯覚した発情期の2匹がソワソワする。これ大丈夫か?体に触れたら溶けて消えたりしない?



「えっと、じゃあどこ行きたいとかあるんだっけ?」



私がまだ自分の世界から帰ってきていないであろうと思しき茜に話を振る。



「はっわえsdrtfgyふいjk」



どうやら茜の召喚には失敗だったようだ。

仕方が無いので、葵に目を向ける。



「あっ………ん、えとね……」



葵は塾で話しているだけまだマシなようだった。

意外と塾の予定もたくさん入っており、隙間をぬって遊ぶ予定が決まった。


というかどんだけ塾行ってんねん。

本当に勉強好きなんだなぁ。と感心してしまう。

奴の心を射止めるには、勉強を上回るほど気を惹かないとダメみたいだぞ、親友共よ。

私が心の中でそう唱えていたころ、同じことを思ったのか葵が口を開く。



「すごいね……そんなに勉強して。今でも十分頭良いのに。」


「開城中学に行きたいからね」



開城中学と言えば、この辺からも通えるが天才しかいないと言われている中学である。わざわざ遠くから寮に入って通う子もいると言う。

入るのが難しいのは当たり前だが、入った後も名門高校、大学へと大半が進んでいく。


まさかそんな所を目指していたとは。

というか、中学受験なんてぼんやりとしていてどこに行きたいとか、どうなりたいなんて考えたこともなかった………



「それってどれくらい難しいの?」



私は何の気なしに聞いてみた。



「うーーーん、とりあえず、2×4=8を間違えていたら無理かな〜」



発情期を迎えていた2人は、よく分からない発言に平静を取り戻すどころか、通り越してポカーンとし、平静を保っていた私は鬼神の如くと言わんばかりに怒りと恥ずかしさで我を忘れる。

怒髪天というのは今の私のことを言う。



「あれは!!!たまたまなんか!!間違っdtfygふいjこl」



もう言葉になっていなかった。

ここは最終手段ゴッドハンドクラッシャーでこの場の全ての敵を葬るべし!!!

そう思って振るった右手も易々と片手で受け止められ、「冗談、冗談」と彼が取り繕うのも聞かず、私はひたすらに拳を握る。

こんな所でへばっていては世界は取れないぞ白花!

右!左!左!ジャブからアッパー!


私の中の範馬勇次郎が暴れ狂う。

そして、埒があかなくなったのか両手を受け止められてしまい、為す術がなくなったころ、葵がこぼす。



「仲良いな〜」



その一言でハッと我に返る。

誰がこんなヤツと!

奴隷皇帝カイザーは楽しそうに笑っていた。


その後、私たちは予定を確認し家へと帰り、今日を振り返る。世界を取れなかったこの拳たちを見つめ、アイツに触れられたんだから、洗っとくか。ぺっぺっと思いつつ洗面台で手を洗う。


全く勉強だけかと思いきや、私の拳を受け切るとはなんて奴だ………そう悪態をつきながら、手を洗う。

洗いながら一つの事実に気がつく。


もしかして、これって手を握ったことに?


最後まで読んでいただきありがとうございます!

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