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団白虚録  作者: やんだやん
高校生
19/28

高1 冬

この学校では、2年生から文系と理系に別れて勉強する。

1年次は共通する部分を勉強するという目的もあるが、自身の向き不向きを見定める期間でもあった。


私は悩んでいた。

翠ちゃんはガチガチの理系、そして紅葉はどこからどう見ても文系、そして私はどっちつかずなのだ。


私の得意科目は英語。英語だから文系か?

それも一理あるが、英語は理系でも使えるため、英語以外も考慮して考えなければならない。


昨今は、理系でも文系でも英語は重要な科目となっていて、どこの大学どこの学部でも試験科目に上がってくるのだ。


だから、外国語専攻や外大でもない限り、英語だけでは決めきれないという事が起こっている。



「自分の事だから、最後は自分で決めるんだよ。悩みは聞くし、助言もするけど、後悔のないようにな。」


「腹括る時が来たねぇ〜!なぁに、あたいの信じる白ちゃんなら大丈夫さ」



至極大人な翠ちゃんと、大人になりすぎてもはやヤクザの世界を潜り抜けて来ましたと言わんばかりの久々に九州男児の魂を宿した紅葉が優しく意見をくれる。


ヤダ、あたし惚れちゃう………

と、言わんばかり2人に信じられ、逆にプレッシャーにも感じる始末であった。



「あーーー俺、理系だし、理系おいでよー?」



ダメだこいつは、やっぱりダメ皇帝だ!!

と、脳みそうんちダメ皇帝の意見は無かったことにしてゴミ箱に捨てた。そのままこのダメ皇帝自身も火あぶりに処されますように!!!




そうして決めきれないまま時間が過ぎて、いよいよ選択の時は迫っていた。



「もう決めきれないならサイコロでも振るかー!あっはっはー!」



と、翠ちゃんがヤケクソになっていた。



「サイコロ無いから靴の裏表でいいー?あーした天気になーれ!」



紅葉が一体なんのために振っているのか目的を見失いながら靴を宙へと投げた。


2人には本当に助けられている。

こうやって一緒に悩んでくれるし、真っ当な意見もくれるし、こうやって気も紛らわせてくれる。

本当に感謝しかない。


でも、これは自分で決めなければならない。

誰のせいにも出来ないのだから、自分が責任を持って決めなければ。



そう思えば思うほど、答えは出なかった。

簡単に言うと、根を詰めすぎて、視野が狭くなっており、答えなんて出すことは出来なかったのだ。だが、必死だからこそそんな事分からなかった。



私は、休日もソワソワしてしまい、落ち着かないのでとりあえず出かけてはみたものの、特に目的もなく歩いていたため、いつもの駅前へと辿り着いた。


時間潰しですら無く、本当に目的もなく本屋に入る。そこの受験コーナーで赤本がずらりと並んでるのを見て嫌気がさす。



「だから、まだ何も決められないんだよォ…」



そう思っていると、茜にあった。



▼▼▼▼▼▼



「しろちゃーーーーん!!!」



と、いつものようにオーバー気味に抱きついてくる。当然、止められると思っていた茜だが、私にはそんな元気もなく、何の抵抗もないまま、全ての検問をスルーして、私の懐に入り込んだ。


茜だー、いらっしゃーい、暖かいなー

なんてぼやっと考えていると、腕の中の茜が不安そうにこちらを見ていた。



「どうしたのー?元気ない?団長くんと喧嘩した?」



団長という言葉により、和み空間を土足で踏みにじられた気分になり、意識がハッキリした頃には空気を吸うように悪態をついていた。


あんな掃き溜め皇帝カイザー役立ずの話はやめてくれませんかね!!

と、心の中の黒花は元気であったが、その元気が白花に出ることは無かった。



「茜ー実は今、人生の迷子で〜」



と、私の腕の中で心配そうに見つめる茜の頭を撫でながら、文理選択に迷っている事を告げる。



茜はそのまま「うんうん」と、優しく聞いてくれた。

友達は2人とも別々に別れること。

英語だけでは決めきれないこと。

英語以外をとってみてもどっちつかずなこと。


2人はコンビニ前で駄べるように、赤本の前で話を続けた。


一通り話を聞いてくれた茜は、真剣な眼差しで、



「わかるよ、白ちゃん!だって、私も高専に行くか悩んだもん!」



と、私の知らない茜の物語を聞かせてくれた。



▼▼▼▼▼▼



そもそも私には高専という選択肢が無かったので余り詳しくはない。


「高専ってね、技術に特化した半分高校で、半分短大みたいな感じでイメージするとわかりやすいかな?

基本的に就職する人が多いけどね、大学に行きたければ3年生から編入できたりもするの。」



と、私の知らない高専の話を教えてくれた。

意外だ。茜は一体どう考えて高専を選択したんだ?


なんでも知っていると思っていた親友でも、私は何も分かっていなかった。そりゃそうか。私自身のこともまだ分かっていないんだから。

それにしても技術者?茜が?そう思い聞いてみる。



「茜が技術者ってなんかイメージ無いね?」



と、伺うように聞いてみる。怒るかな?意外だと思っていたのは私だけ?

なんて不安はすぐに杞憂であったことを知る。



「でしょでしょー!私も意外だった!あははー。でも、やってみると意外と楽しかったりもするんだ。きっと私はスキルを持って上達するならなんでも良かったのかもしれない。技術者って言っても色んな技術があるからね。」



茜は楽しそうにそう語った。

しかし、私はその中でやっぱり不思議に思うところもあった。



「やってみるとってことは、高専に決めた時は不安だったんじゃないの?なんで高専に……?」


「不安はあったけどね、技術の中にも私が好きな事はきっと沢山ある。就職にも困らなさそうだし、進学の選択肢もある。これから5年間たくさん悩めるなーっていうのが私にあってる気がして、高専にしようと思ったの。」



そう語る茜が私よりもうんと大人に見えた。

そして茜は続ける。



「それに私は大丈夫って思ったの。きっとやれる。高専に行っても、自分の中で満足のいく選択肢をみつけられる。そう思えたのは、白ちゃん。あなたのおかげだよ?」



私の?私は何もしていないぞ?

それこそその時期は勉強ばっかりしていた記憶しかない。



「開城高校に行くなんて、並大抵の気持ちじゃ選択できないよ。でも、白ちゃんはそれに見合うだけ勉強して、自信をつけていった。その過程を私は、すぐ近くでずっと見せてもらったから。私も自信をもって、選択しよう。そう思っただけで、きっと何とかなる!って思ったの。」



茜の独白を聞いているだけで、少し涙が出てきた。あぁ、良い友達を持ったな。そう思った。

私もあの時、勉強ばっかりだったけど、茜も葵も頑張ってるだろうなーって、ずっと傍で支えられていたんだよ。


そしてあの時の気持ちを思い出す。

今覚えば、凄く難しい挑戦をしていたのに、私は自信を持って挑んでいた。

たしかに、自分に自信を持っていた。


それはどんな選択だったか、その選択が正解だったのか?ということでは無かった。

もしかしたら、私も高専に行くのが正解だったのかもしれないし、もっと英語特化の高校が良かったのかもしれない。なんなら、英語が好きなら海外の高校に行くのが正解だったかもしれない。


でも、正解かどうかじゃないんだな。


茜の話を聞いて、何となく私は納得がいった。

この子は、高専にいって自分の人生を決めるとそう決めたんだ。



「茜、ありがとう。私も何とかなるかな?」


「うん!大丈夫ー!だって、私の大好きな白ちゃんだから。それに今の選択が良かったかどうかを決めるのは、未来の白ちゃんだから。選んだら後は頑張るのみだよー!」



茜はそう言って、ニコッと笑った。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

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