高1 7月2
そして土曜日。
昔と変わらない様子の図書館に私は入っていく。半年も経っていないのだから、変わっているわけはないか。
カイザーYMOうんちが来るまで、先に勉強始めておこうと、カバンの中を広げる。
懐かしい。
たった半年前だけどあの時もこうやって勉強していたっけ。あの時は足りないところをどんどん吸収するような勉強だったけど、今回は違う。
基礎は基本的にできていると思うけれども、新しい内容も暗記内容も随分と高度になってしまった。
その上、応用問題も解けるように色々な問題パターンに対応しなければならないので、数をこなす必要があると思っていた。
でも、学校のテストに至っては、授業でやった問題を解いていくことで点数は取れるだろうと踏んでいる。
6位。この学校では相当高い目標かもしれないけど、頑張らなければ。
そう決意しながら勉強をしていると、集合時間となり彼が静かに隣に座る。
私は席取りで置いていた荷物を少し避け、挨拶する。
「おはよ」
「おはよー」
ニカッと少しボリュームを落とした声で挨拶が返ってくる。
そして、黙々と勉強しながら、分からないところは前のように聞きながら勉強を進める。
▼▼▼▼▼▼
お昼を過ぎ、お腹が空いてくる頃に気が付いた。
そういえば、彼から分からないところ聞いてこないな?
そうして隣を見て、私はこの学校の上位にいるということをどういう事か理解をする。
彼が持っている参考書は、2年生のものだった。
「え、それ数ⅡB………?」
「あぁー数学は得意だからどんどん進めてるところなんだ。」
この開城高校という授業進度の早い学校においても、彼は周りを置いていって次の学年の勉強をしていた。
「テスト勉強は………え、あれ?」
「するけど、ちょっと歴史ものを復習するくらいかなぁ〜暗記以外は全部もう理解してるし。
白花が数学してるみたいだったから、俺も数学してるだけ」
この高校に入って、私はようやく同じ土俵に立ったと思っていた。だが、違った。
このイエローうんち皇帝は、学校のテストなんて眼中に無かった。
「どうして、そんなに先に進むの………」
縋るように、置いていかないでとそんな気持ちが見えるくらいに儚く漏れた言葉だった。
「大学受験のために、2年生の間に全部の範囲を終わらせたいんだ」
衝撃だった。
でも、ヒントはあった。同じく内部出身者の翠ちゃん。
彼女は中学の内容を復習していると言っており、高校に入ってまでどうして?と、不思議に思っていたが、それは大学受験を見据えて自分のペースで勉強していたのだ。
開城中学出身者という事は、中学の頃から名だたる名門大学に入学するために勉強してたきたという事だ。
その彼ら彼女らはこうして目の前の学校のテストではなく、もっともっと先を見据えて勉強していた。
学校の授業を捨てる訳では無いが、あの時間すらも復習や思い出しに使っている。基礎の強化として授業を受けている。
あとは学校のテストなんてやってみたらきっと解けるだろうという心持ちでいるんだ。
わざわざその場しのぎの勉強なんてしない。
私は自分が酷くちっぽけな存在だと強く感じてしまった。
▼▼▼▼▼▼
お昼を食べた後も、お互い静かに勉強はしたものの、私はあまり身が入っていない様子が分かるほどだった。
その帰り道、
「焦っても仕方がないよ」
彼はあっけらかんとそういった。
私は少し涙目になっていたかもしれない。
でも、できる人からそんな事言われたくない。
そう思って鋭い目付きで彼を見据えた。
「まずはこの授業の速さについて行く。
そこから自分の得意なものから先に進めちゃうと俺はやりやすかったよ。まずは今の授業だ。」
彼は学校で見せるおどけた態度とは違い、真剣な表情で続けた。
「数学だったら俺が助けられるし、理科系統は翠さんが強いと思うよ。
英語は白花なら出来るだろうし、そうやってわかんない所は出来るやつに聞いていこう」
「でも…………」
思わず否定の言葉が出た。それは誰にだって出来ることじゃないのでは…?そう思って出た言葉であったが、彼はそれすらも汲み取った。
「俺も最初は置いていかれた。でも、それに慣れてからは意外とすんなり進めたよ。」
意外だった。別次元にいると思われる彼ですら置いていかれていたなんて。初めから何でも出来るくらいに見えるけれども、出来ないこともあった。
そう思って、英語の参考書を手に取る小学5年生の頃の彼を思い出す。
「先に気付いて、先に始めた奴がどんどん伸びていく。だから、まだ間に合うよ」
彼はそうやって自分で気付いて初めていったんだ。
けれども、現状、私にとっては得意な英語の授業進度も早く、今の所ついて行くだけで精一杯だ。簡単に言うと、中学の頃の自信は勉強についてはもう無くしていた。
「どうしていつもそんなに自信満々なんだよ…………」
しょぼくれたと言って過言では無い私の口からは、自然と弱音が出てきた。
「皇帝になるからさ」
ニカッとまた屈託のない笑顔を見せてくる。
私は一瞬キョトンとして、フッと鼻で笑った。
「あーー!笑ったなー!白花も我が帝国の市民にしてやろうと思ったのに!」
「あは、あははーうふふ」
私は自然と笑っていた。バカにしているのでは無い。
自信なんてものは何でもいいんだ。
自分を信じるか、信じないか。ただそれだけじゃないか。
そんな単純なことに気が付いたのもおかしかったし、まだ彼が皇帝になるって言っていることが懐かしくもおかしくて笑った。
「私より英語の出来ないバカ皇帝の国民にはならないからな!」
私はそう言って彼に笑ってみせた。
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