高1 春
廊下がなんだか騒がしい。
男子というのは何歳になってもアホなようで、この開城高校でも男子はアホであった。
逆にすごい。頭がいいのにアホな男子どもすごい。
そう思いながら、外の喧騒には関わらないようにしていた。
この開城高校であっても、髪を金髪にして、ピアスを堂々と開けている輩やら、派手な髪型に着崩した制服の輩など目立つ人の多い軍団を見かけるのだ。
ただ他校と違うのは、不良でもなく、勉強はするし、ガラスを割って回るなんて馬鹿な事はしない。
ただたむろって、イキっている。単純に気が大きくなって調子に乗っているような所謂、輩程度のもの達と私は認識していた。
そんな軍団とは程遠い生活をしていた頃、その眩い金色猿たちの中から聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
「あ、いたー!白花ー!」
さんを付けろよデコスケ野郎!と、思わず嫌な顔をしながら振り向く。見覚えのない猿がこちらに駆け寄ってくる。見覚えがないというか、目が腐りそうだから直視してない。見てない。
そしてぶっきらぼうに会話を続けて差し上げる。崇めろ?猿が。と思いながら。
「え、誰?」
「酷いなー団長だよー!」
一瞬の間。私の焦点はまだ合っていない。
朧気に視界の中でぼんやりと金色で眩しいこの物体Xが今なんて言った?ん?
「え、誰?」
念の為、私はタイムリープした体でもう一度同じ質問を繰り返す。
「だから、団長だってー!一緒に勉強しただろ〜?」
時間軸の変更に失敗したらしい。
てか、え??????????
私は混乱する頭で焦点を合わせてみる。
そこには出来杉カイザー皇帝の顔をしたちょっと控えめの金髪?茶髪?くらいの物体Xがこちらを見ていた。ピアスは耳だけで常識の範囲内ではあるが、私の中の彼ではなかった。
「きもっ」
思わず私はそう言って、混乱する頭でその場を立ち去った。
▼▼▼▼▼▼
なにあれ、なにあれ、なにあれ!!!
えっーーー!なにあれ!!!
「なにあれ?」
私が脳内でリフレインしている言葉を紅葉が言葉にする。さてはお前サトリかー!!!
「いや、私がなにあれだよ!!!」
「団長くんと知り合いなの?」
世界の良心、翠ちゃんが知ってる風で聞いてくれる。そうか。翠ちゃんは内部出身だったな!
「知り合い………あれが本当に団長くんなら…」
私は自信なさそうにそう答えた。
「なんか高校になってはっちゃけたもんねwあっはっはー」
お姉様!!!あれははっちゃけたという程度の事で済ませていいんですか!!!?
確かに見た目は思ったより控え目だったかもしれないけど、私の中では勉強してる時の真面目なイメージと、小学生の頃の本を読んでいる物静かなイメージしかなかった。あんなイキリ猿集団にいるなんて………
というか、会ったら合格のお礼とかしなきゃとかちょっとは考えてあげてたのに!!!
なんかもう全てが無に帰した感じ……
「誰」と「きもっ」だけで会話終わらせちゃったよ………
でも、逆にやっぱりあれだな。
あいつは敵なんだな?
よーし、OK。分かった。ステイステイ。
あのイエローモンキーへのスタンスを確認できただけでも、儲けものではないか?
あいつは敵だ!!!!!!
そう私が心に決めた時、傍らで翠ちゃんが呟く。
「あれで学年6位だからすげーよなぁ」
私の心が折れる音が聞こえた。
▼▼▼▼▼▼
高校では、選択授業や体育で他のクラスと合同で行われる授業がある。
その選択もことごとく異なり、体育は男女別。
おまけに私は教室引きこもりで端の教室という事もあり、本当にこれまでイエローカイザー皇帝モンキー6位とすれ違う機会が無かったようだ。
私から見ればあっちは廊下でやかましい連中なので、何となく存在は知っていたが、向こうから私を見つけることは難しかったらしい。
そして、ついに?見つけたと思いきや、皆の前であの対応である。私は若干、話題の人になってしまったが、きっとこれもそのうち終わるだろう。
そう思っていたら奴が来た。
「白花ー!受かって良かったなー!」
イエローモンキーがマジックのように突然現れ、けたたましい鳴き声でオーケストラを始めたのかと錯覚した。
「知らない人が来た」
私は冷たく呟くと、翠ちゃんが、
「ツンデレでかわいい〜」
なんて囃し立てるので、外を眺める以外にできることが無くなった。
「6位様がなんの御用ですか。」
ずかずかと窓際の席までやってきたカイザーYMOに向かって、私は外を見ながら冷たく言い放った。
「用事はないんだけど、一緒に勉強した仲として受かってて良かったなー!と思って!おめでとう!」
彼は満面の笑顔でそれだけ言って教室から去ってった。
「あっ………」
彼が立ち去るのが思いの外早く、私はそこまでしか言葉に出来なかった。
ありがとうを言いそびれた。
だから、感謝くらいはしてやるって言ってるのに!!!
私がプンスカしているのを翠ちゃんや紅葉だけでなく、他の人もニヤニヤしながら眺めていた。
「もーツンツンしちゃってー」
つんつんと紅葉がつついてくる。
「だって……」
と、私は言葉にならないこの感情にヤキモキしながら、答えるのであった。
「まぁここはお姉さんがフォローしといてあげますか。」
と、翠ちゃんが艶めかしく微笑んでくる。
いや、ちょっとこんな美人にこんな間近でこんな顔されるとドキドキするんですけどw
一体何をするんでしょう………
まぁでも翠ちゃんは地頭がキレるので信用出来る。勉強の成績については、勉強が出来ない訳ではなく、本人曰くまだしてないとの事。
というか、この間の話では中学から分かってない部分がないかを見直しているという。
恐ろしい……やるとなったらとことん追求するタイプなので、開城高校だけではなく全国の名門高校の過去問とかも解いているらしい。
▼▼▼▼▼▼
そんなこんながあり、クラスでもお陰様で?なんだか皆見知ってくれる存在となって、高校生活も楽しくスタートを切った。
相変わらず、大将黄猿カイザー皇帝はうちのクラスにもちょいちょい遊びに来て、ちょっかいをかけてくる。きっと翠ちゃんが何かの手段で彼に何かを吹き込んだお陰で、険悪になることも無く、奴は奴で大将黄猿を楽しんでいるようだ。最近は金髪も落ちて、だいぶ茶色いのでうんち皇帝ですね。
お礼?ちゃんと言ったよ?
翠ちゃんには、
「お姉さんにもカバー出来ないことはあるから、自分でなんとかしなさいよ〜?」
と、小言を言われながらも、私は窓ガラス越しに映る彼へ向かって、
「おかげで………ごuk…ムニョムニョ……rgto」
と、これまでで最もネイティブな感じに伝えた。
大将うんち黄猿カイザーはニカッとモンキースマイルを浮かべて去っていった。
それから暫くは、紅葉と翠ちゃんにはツンデレと揶揄されながら過ごした。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
もしよければ、評価欄に★★★★★、いいねで、応援していただけると励みになります!
ブクマもしてもらえると泣いて喜びます!!




