小学5年生 春
元々は、本当に団長と呼ばれる人と白花と呼ばれる人が私の周りにおりまして、ふざけ半分で書いた冒頭部分の様な昔話が聞きたいな〜?と言っていただけでした。
彼らから昔話は語られることもなく、大してどういう人生を歩んできたのかも知らず、何も知らないからこそ全て妄想でここまで書いてしまいました。
誰に向けた訳でも無く、誰かの暇潰しにでもなれば良いなと思う次第です。
※この物語はフィクションです。
私が学校のカーテンにくるまって遊んでいる時に初めて目が合った。話したことは無い。
窓際でいつも本を読んでいる彼だ。団長というらしい。
彼は見つめあったまま、まるで独り言のように呟いた。
「カーテンは汚いよ」
そう言って、彼は読書に戻った。
一瞬、私に向かって言った言葉と理解出来なかった。何を言ったか、どういう意味かを理解した頃には、彼に反発するようにより一層私はカーテンへと同化していった。
「し〜〜ろ〜〜ちゃん!」
後ろから誰かが抱きついてきた。痴漢か?
教室で犯行に及ぶとは大胆な!
カーテンから出た私はボサボサの頭を整えながら、痴漢の現行犯へと目をやる。
私の親友、茜はいつものようにニコニコしながら佇んでいた。
小学校5年生としては大人びた彼女は、ズボラな私とは違いとてもオシャレさんだ。なぜ、私と仲がいいのか不思議なくらい昔から仲良しだ。
今日もニコニコと楽しそうに、昨日のドラマの話をしている。もちろん、私は見てない。
しかし、どこか彼女とこうしてのほほんと話すことが私も好きだ。
いつもの穏やかな休憩時間だが、目の端にさっきの男子がチラつく。
なんだあいつ……
端的に言って少しイラつきをおぼえていた。
小学校5年生という時期は、男子と女子で精神年齢は大きく離れやすい。言ってしまえば、男子なんてみんなガキだなと私は感じる。
休憩時間には、何の使命感に駆られたのか、15分という短い時間でもドッジボールをするべく持てる力を振り絞って、我先にと駆け出していく。
そんな少年たちとは違うぞ?と言わんばかりに窓際で本を読む彼。
先ほど私に放たれた言葉も、そんな事も分からないのか?と言わんばかりに言ったのではないか?
そう思えてならないので、イラつく。
その日から私の視界には、少しずつ団長の姿が認識されることとなった。敵として。
▼▼▼▼▼▼
茜と葵は、小学校1年生の頃から仲良くなった。
家も程々に近く、低学年のうちからお家に遊びに行っては、他愛もないことをしていた。
葵は今年こそクラスは違えど、よく遊ぶし、帰りも一緒に帰る仲だった。そんな帰り道、葵から突然の奇襲を受ける。
「団長くんって知ってる?」
なんでそいつの名前が出てくるんだ。
私の中では、親父の靴下の次に触れたくない名前である。
「来年、中学受験するために塾に通いだしたんだけどさ、彼も同じ塾らしくて。とっても頭が良いんだって!先生が言ってたの!」
私はとっても頭が痛いよ。
茜は当然のように知っているらしい。
「団長くんは頭も良いし、他の男子と違って大人よね〜えへへ〜」
なんか茜がにやけている。え、好きなの?やめとけやめとけ。それならうちの親父の靴下あげるからさ。
「ちょっと、え、茜、なになに?仲良いの?あたしも話しかけてみよっかなー」
お前もか!?すまんな親父。両足の靴下が必要みたいだ。裸足で我慢してくれよな。
「えーーっ!あたしも話したことないよ」
「あら!じゃあ、あたしが先を越しちゃおっかな!白ちゃんは?」
なぜ私に話を振る。そもそもそんな色恋に興味は無いし、あんな男願い下げだ。まだミニ四駆のことを考えている方が有意義だ。
「カーテンに話しかけてる所なら見たことあるよ」
2人ともキョトンとして、笑いながらまた彼の話に戻っていった。
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