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7話 私、魔法が使えそうです。

今回も長くなってしまいました……。

 あの大規模な爆発は、どうやら街まで爆音が響いたようでした。

 わざわざ町長さんがお話を聞きに丘まで訪ねてきました。爆発の後だから危ないと思ったのですが、母の魔法で危険は無いと分かっているようです。


 お母さん凄い。


「それでは、あの爆発はレオナルド様でも、ソフィア様でもないという事ですね?」


「はい、間違いありません。私は爆発属性の魔法は使えませんし、レオは娘と一緒に居ました。そんな危険な真似はしません。

 疑いがあるようでしたら、使用魔法履歴を鑑定できる魔法師を手配して頂いても構いません。」


「まさか、そこまで疑ってなどおりません。ソフィア様の魔法が使われたという事は、危険なことはもう残ってはいないでしょう。その辺は信用しておりますとも。」


 私は大人しく席に座って話を聞いているだけ、何が起こったのか何一つ理解できていない。

 町長さんは普通のおじさんだった。薄い茶色のスーツを着て、顎鬚を生やしている。いかにもデスクワークしてますといった体型で筋肉質な父とは正反対だ。


「それはありがとうございます。魔法で丘ごと調べたのですけど、爆発魔法の使用者は分かりませんでした。私が魔法を使う前に丘から降りていたんでしょう。」


「捕まえることが出来ていないという点が不安ですな。この街は精霊の力が大きい。それに名家であるヘイデン家があるというのに、不審な魔法事故が起こるとは……住民が心配しているのですよ。先日の魔石の件も相まって。」


「あの件はじきに魔法師団から報告が上がるはずです。私からはそれまで何も言えません。ですが、危険な事が起きている訳では無いので安心してください。私から言えるのは本当にここまでです。」


 母の言葉は歯切れが悪い。当事者だからと言って、纏まってもいない情報を知っているがままに話す訳にはいかないのだろう。

 だが、使節団が王都に着き、報告してシルフィセレフに届くまであとどの位かかるだろうか。


「そうですか……。もうすぐ春華祭の時期です。住民の不安を取り除いて、例年通り行いたいと思っているのですが、それは問題なさそうですかね。」


「全く問題は無いでしょう。春華祭は2ヵ月後、早ければ王都から報告が届いているはずです。」


「……それもそうですね。先の事ばかり心配してもしょうがない、本日はこの辺でお暇させて頂きます。わざわざありがとうございました。」


「こちらこそ、お忙しい中ご足労頂きありがとうございました。」


 母が町長を玄関先まで見送り、その姿が見えなくなるとほっとした様に肩を下した。


「どんどん事が大きくなっていくわ。もう、どうしましょうか。」


「町長の心配事もわかるな。魔法の不審事故なんて滅多に起こるものじゃない。だが、危険でないことを証明することが出来ないからな」


 魔石に関しては、当事者が精霊だから説明のしようがないだろう。私にはどうしてあんな事になったか説明するのは不可能なのだ。


「とりあえず、町長さんの所にお詫びの品を送りましょう。ヘレン、用意してもらえる?」


「かしこまりました。」


 すぐ後ろに控えていたヘレン動き出す。


 まだ我が家に来て数週間だというのに凄まじい馴染みっぷりだ。私も見習いたい。


「俺の方からも検査結果を早く下ろして貰えるよう上に打診しよう。暫く部屋にいるから子供たちを頼んでいいか。」


「わかったわ。食事も部屋に運ばせるから、落ち着いて仕事して頂戴。」


 父が部屋に向かい、私も私室に戻ろうとすると母に止められた。


「ティア、何があったか本当に何もわからない?どんな小さなことでもいいのだけれど。」


 母は鋭い。父が事情を話している時点で、私の表情から違和感を感じ取ったのだろう。だけど、言うことは出来ない。

 妖精は言っていた、これは()()だと。

 私が居た場所が、抉れて穴になっていた。あそこに居たら死んでいたのだ。真実を言うことは出来ない。


「ごめんなさい。怖くて何もわからなかった。あっという間に私のいた場所がバーンって弾けたんです。」


「そう……そうよね、怖かったわよね。今日は部屋でゆっくり休みなさい。ご飯は部屋の前に運ばせておくから。お腹が空いたら自分で食べれるわよね?」


「はい、お母様。ありがとうございます。」


 あんな目に遭ったのは人生で初めてだ。怖かったし、本当に命の危機を感じた。

 誰かに明確に命を脅かされる恐怖は、何にも代えられないほど恐ろしいものだった。


 けれど、とりあえず頭を整理したい。私が考え事をしている間にぼそぼそと話している内容が、5歳児から逸脱した内容だったら誤魔化し様が無いのだ。

 そのリスクは避けたい。だから多少怖くても1人の方がありがたい。

 それに、魔法を諦める訳にはいかないのだ。


 広い屋敷にも慣れたもので迷うことなく自室に着く。


 私には気配を読むなんて繊細なことは出来ない。できないのにも関わらず、自室から何かの気配を感じる。1つじゃない、沢山いるから気配が漏れてきてるんだ。


「……。失礼します。」


 恐る恐る扉を開けると、無数の妖精が私の部屋を飛び回っていた。


 おい、何してんだ。


 急いで扉を閉める。喉に出かかった言葉を飲み込んで1人の妖精を捕まえる。


「今日は死ぬ所だったんだけど!!!」


 遠慮はしない。人を殺しにかかるという事は、殺される覚悟があるという事だ。

 前世の何かで見た台詞である。


((ご、ごめんなさい))


((わぁ!!悪気は無いんだよ!!放してあげて!!))


((その子のせいじゃないよ!!苦しそうだよ!!放して!))


「冗談じゃないわよ!またそうやって爆発させる気!?」


 実感が無かったのだが、こうやって元凶を見ると沸々と怒りが湧いてくる。そうだ、私は今日一回死んでいる。父が居なければ確実に死んでいたのだ。


((そんなことしないよ!!))


((偶然、ちょっとやんちゃな妖精の目に留まっただけだよ!!))


((もうその妖精居ないよ!!))


「ちょっとやんちゃなだけで、人を殺しても良いの!?父が居なきゃ死んでたの。害が無いように見せかけて、都合が悪くなると殺そうとするなんて、恐ろしいよ!」


 気まぐれに姿を見せる妖精が、自分の味方ではない。それだけでも、異世界で生きるようになって数ヶ月程の私にとっては十分恐怖なのだ。

 私はこの世界に自分しか信用できる人がいない、脅威ばかり増えて、前途多難すぎる。


((こわくないよ))


((嫌われたい訳じゃないよ))


((わかった!お願い一つ叶えよう!))


 お願い……?そんなもの結構です。私の前に現れず、害さえ与えなければ。


((うん。君が望んだお願い、1つ叶えるよ!))


((悲しいのはダメだよ、楽しいのがいいよ!))


 すっごい無視されるじゃん。要らないって言ってるのに。

 それにお願いかぁ……欲しいもの、特に無いしな。でもお願いの権利を捨てるのは勿体ない気がする。


「私が本当に欲しいものができたら、そのお願いの権利を使っても良い?それと、言いたいことがあるなら、攻撃じゃなくて口で言って。私人間だから話せるし。」


((いいよ!))


((欲しいもの出来たら呼んでよ!))


((それと、危ないことしてごめんなさい))


「うん、ありがとう。ほんとに怖いからやめてよね。」


 一言お礼を言うと、スッと何事もなかったかのように消えてしまう妖精。気まぐれなのは直してくれないのか。


「さぁて、切り替えて魔法の練習でもしますか。」


 妖精に邪魔されて今日の練習なんて無かった様なものだが、私は1日でも早く魔法を使いたい。     


 面白そうだからなんですけど。


 今日分かったことは、魔力を感じることは出来るけど、それを発現する術が無いという事。

 魔法を系統に変換するには妖精の力が必要らしい……。それの意味が分からないんだけど。

 魔力を感じることは出来るから、とりあえず父のように指先に魔力を込めてみよう。


「それ、どうだ」


 指先が震える程力を籠めるが、光出すことは無い。


 まぁそう簡単に上手くはいかないだろう。

 魔力を込めた父の指先は力んでいるようには見えなかった。恐らく力を籠めるだけでは魔力を集めておけない。だが魔力を込めるという行為に、全く力が要らないなんて事があり得るのだろうか。


「……。」


 ゆっくりと深呼吸をして、自分の中に流れる魔力を感じ取る。心臓から胴体、両腕、両足、頭、淀みなく流れている。

 魔力は水の様だ、さらさらと流れて、留めようとすると溢れてしまう。とめどなく流れる小川、それが一番イメージとして近い。


 目を開けて、魔力を集めたい指先を凝視する。流れている物をせき止めることはできない。力を込めてみても、止まる気配は無い。


 暫く奮闘していると、息切れと眩暈がしてきた。


「っ……。」


 魔力に集中するのをやめて、ベットに倒れこむ。


「魔力……切れ?」


 前世ではよく聞いた言葉だ。魔法を使いすぎれば魔力が切れる、伴って体調が悪くなる。

 この世界に、魔力回復薬という便利な物は有るだろうか。

 もう少しでコツを掴めそうだったからこのまま訓練してみたい。


 体感10分程、ベットの上で休めば眩暈が収まった。気だるさは残ってるが、支障はない。


「回復薬が存在するか聞いてみよう。」


 部屋を出ると、3つほど離れた部屋からレラが丁度顔を見せた。


 ナイスタイミング!


「レラ!魔力を回復させる薬はありますか?」


「ティアお嬢様、回復薬など何に使うのですか?もしかして魔法を!?1人ではいけません!魔法の練習をするならせめて誰かが見ている時にですね、」


 あ、変なスイッチを入れてしまったかもしれん。


「あらティア、もう寝る時間でしょう?」


 面倒になると思った時、母がティーポットをもって上がって来た。父の部屋にもっていくのだろうか。


「お母さま、私魔力回復薬の事が気になったのです。家にありますか?」 


「ティア……貴女魔力を使ったの?」


 母の顔が曇っていく。まずい、どうやって誤魔化そう。今日爆発事故があったばかりなのに自室で休まず魔力練ってました!なんて言えない。


「使ってないですよ?レラと街に行った際に、回復薬を見た気がするのですが、とても綺麗な色だったので見たくなってしまっただけです。」


 大分苦しい言い訳だろうか。この言い訳は殆ど嘘だ、回復薬を街で見た事も無ければ色も知らない。回復薬なんてものがこの世に存在していない、または無色透明だったら嘘がバレてしまう。


「街で回復薬を見たのね。良かった、1人で危ない事でもしているのかと思ってお母さん心配しちゃった。倉庫に保管してあるから、1本飲んでみましょうか。」


 そんな簡単に飲んでいいものなのかと伝えると、回復薬は魔力だけを回復させるのものでは無いらしい。

 効果的には、魔力、体力、気力までも回復させるそうだ。前世で言う栄養ドリンク的な感じかな?

 今日の事で疲れているだろうからと、試飲許可がでた。


 回復薬を見せてもらうと、瓶に入った青色の液体だった。ブルーハワイみたいな濃いめの青。綺麗ではあるけど飲むとなると話は別だ。


「これが回復薬よ、確かに綺麗な色だけど、味は独特かもしれないわ。なんて言うんだろう……刺激的かもね?少しずつ飲んでみて?」


「いただきます。」


 青々している液体は、前世だったら絶対健康的な理由で飲んでない。

 なんか、見た目は完全に人工甘味料と食紅って感じ。


 恐る恐る口に含むと、シュワシュワと音を立てる。

 ……懐かしい感覚、炭酸なのか。この世界に炭酸を作ることが出来る技術があるなんて凄い。


「シュワシュワして不思議です、それととっても甘い。」


 味はシロップだ。柑橘系の爽やかさも、某黒いソーダのような爽快感もない。砂糖水(濃)が一番近い。


「ティアは炭酸が初めてなのに余り驚かないのね。お砂糖をたっぷり使ったお菓子より甘いでしょう?」


「すごく甘いです。」


「私が小さい頃は、その味が好きで勝手に2、3本飲んじゃって怒られたな~。」


「確かに美味しいですが、1本で止めておきます。余ったお薬はお部屋に持ち帰っても良いですか?」


「あら、ティアは良い子ね。回復薬はそのシュワシュワが切れると効果が無くなってしまうから、早めに飲んで早く寝なさい。」


 元気よく返事をして自室に戻る。先ほど少量飲んだ程度で、魔力が回復して怠さも無い。


 異世界の薬凄い。


 それはともかく、せっかく回復したのだからまだまだ練習したい。魔法薬の効果が無くなる前に全力で魔力を練り、魔力切れを起こして回復する。


 前世で観たアニメではこの方法で魔力量が増えたという。だから私も例に習おう。

 これで魔法の片鱗でも起こせれば万々歳だが、そう上手くは行かないと予想。


「はいはいただいま。」


 誰もいない部屋に戻って早速魔力を練る。

 練るという言い方が正しいかは分からないが、普段は知覚できない魔力が、意識を集中させることで感じることが出来る。

 感覚的なことだけど本も読めない、周りにも頼れないとなれば自分の感覚を頼りにするしかない。


「沢山魔力を練ると、体の周りを覆う光が強くなる。お父様が魔法を使うときはこんなに体が光っていなかったから、ここまで沢山の魔力を纏う必要は無いのかな?」


 意識して魔力量を減らす。

 コツを掴めば体を覆う魔力量の調節は簡単だった。問題はここからで、魔力を体の一点に集めることが出来ない。


「無理矢理集めようとしたら流れが滞る感じはあるけど……留まりはしないんだよな。」


 練習して約1時間、回復薬は3分の1ほどしかもう残っていない。一向に進まない、どうしようかな。

 前世の魔法はウォーター!とか言ったら水出たりしたんだけど……。


「ウォーター」


 呟いた私がバカだったんです。はい、認めますよ?魔力を全身に練った状態で、なんとなく水って言っただけなんですけどね?


 部屋中水浸しです。どうして水が出たんだろう、特に何も意識してないのに。

 頭上から半径約1mでの降水、綺麗に私は避けられている。バケツをひっくり返したような水が降って来たのだ、足元は水浸しで拭かなければどうしようもない。


「怒られるよなぁ。」


 飲み水が入ったポットを、濡れていない場所を濡らしながら落とす。片付けるときに、不自然に乾いた所があるとまずい。

 

ーコンコンー


「ティアお嬢様?私の部屋に水が降って来たのですが入ってもよろしいですか?」


 私の部屋の真下はレラの部屋だ。あふれた水が下に滴ってしまったのだろう。

 申し訳ありません。


「はい、入ってください。」


 レラを迎え入れると、顔が青ざめていく。


「け、怪我はございませんか!?ポットを落としてしまったのですね、硝子で怪我はしていないですか?お嬢様はベットの上で座っていて下さい。」


「精霊よ、我が意思に応えよ」


 レラが魔法を使うと1人の妖精が目の前に現れた。


「ヘレン、雑巾とバケツを持ってティアお嬢様の部屋まで来てください。」


 そう伝えると妖精は消えてしまった。


「今のは何ですか?」


「私は音魔法に適性がありますので、妖精にお願いして私の声を届けて貰いました。音魔法が使える者ならば、比較的ポピュラーな魔法です。」


 なにそれ便利そう。どれぐらい遠くの相手まで届けられるんだろう、何か制約とかあるのかな。


「レラはマナーだけでは無くて、魔法も上手なんですね。」


 レラの顔を見ると、はっとした顔をして気まずそうに眼をそらした。


「申し訳ございません。ティアお嬢様が魔法を使えない中、私とした事がうっかり魔法を使ってしまいました。お許しください。」


 ん?なぜ謝られる?確かに魔法を使えることは羨ましい限りだけど、この世界では殆どの人が使える力だ。別に咎めたりしない。


「魔法は使っても大丈夫ですよ?羨ましいとは思いますが、それだけなので。」


 レラは私が魔法を使えないから、自分もできるだけ魔法を使わないように制限していたのかもしれない。


ーコンコンー


「ティアお嬢様、レラ様、ヘレナでございます。雑巾とバケツを持ってまいりました。」


 ヘレンが部屋に入ると、床を見て目を丸くする。


「想像より水が多いですね……。もしよろしければ私の魔法で乾かしてしまいましょうか?」


 よし、私の前で魔法を気兼ねなく使ってもらえるように、ぱぱっと乾かしてもらおうかな。


「よろしくお願いします。雑巾で水を拭いても、カーペットは乾きませんから。」


「かしこまりました。」


「精霊よ、我が意思に応えよ」


 濡れたカーペットがふわふわと浮かび、瞬く間に乾いていく。すごい便利だな、魔法。こんなことが出来るなら洗濯も楽だし、体が濡れていたら魔法で乾かせば良い。使った食器なんかもこれでいけるな。


「乾きました。それでは私は仕事に戻りますので、失礼いたします。」


 ヘレナは魔法をを颯爽と使い、仕事に戻ってしまった。確かにあの魔法は、この仕事にとって必須だろう。もしかして大活躍してる?


「お嬢様、ご体調は大丈夫ですか?普段ならばポットを落とすようなことも無いですのに。」


「大丈夫です、手を滑らせてしまっただけなので。レラも仕事に戻るなり休むなりしてください。心配させてしまってすみませんでした。」


 レラをなだめると心配そうな顔をしながらも、渋々自室に戻った。

 本当に手のかかる子供でごめんなさい。


 さて、私が考えなければいけない事は何故突然水が出たかという事。

 やっていたことは2つ、魔力を大量に練っていた事、ウォーターと口に出して言った事。

 水と口に出しただけで魔法が使えるなら、周りはわざわざ(精霊よ、我が意思に応えよ)なんて言う必要はないだろう。


 魔法は産まれながらに一緒に居る妖精に依頼して使う。

 要するに魔力をあげるから変換はお願いねって事だ。という事は、人間は魔力を何かに変換する力は持たない……。


 待って、でもそれじゃあおかしい。私は依頼する妖精がいないから困ってるのに、今まさに魔力を水に変換できたじゃないか。


 でも感覚的には、自分で水を出したというより、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って感じだ。


 もしかして……。誰か助けてくれた?


「誰か、私に水をくれた妖精さんがいるの?いたら姿を見せてよ。お礼がしたいの。」


 何もいない空中に向かって声をかける。


((わ、私です))


 ベットの上に水滴が落ちる……気がした。現れたのは水色の長い髪をうねうねと動かした人魚だ、半魚人だ。

 思わずポカンと口を開けていると物凄い勢いで 人魚が話し始めた。


((ご、ごめんなさい!水という余りにも抽象的で突然なご命令でしたので、焦って水浸しにしてしまいました……。))


 大きな瞳に涙を溜めて必死に訴えている。もしかして私が泣かせてる?


「私、命令なんてしてないよ?もしかして貴女は、私のアーティフィカル妖精なの?」


 私の事を助けてくれたという事は、父母に寄り添っている妖精と同じアーティフィカル妖精だと期待していいのだろうか。

 産まれながらに一緒に居てくれた訳では無いけれど、ようやく私にも妖精が現れてくれた。


((ご、ご命令では無かったのですか!?た、大変失礼いたしました!私としたことが無礼なことをしてしまって……。))


「失礼なんて思ってないよ?逆に魔法を使ってくれてありがとう。それと、質問に答えてほしいんだけと……。」


((はぁ!失礼を重ねてしまい申し訳ないです……。私は上位精霊ウエンディ、アーティフィカル妖精ではございません。水の精霊王ウンディーネが眷属でございます。))


 ほぉ、めちゃくちゃ凄そう!そして私の妖精ではないと!悲しい……。

 そして上位精霊か、シルフィさん以外に初めて会った。シルフィさんはとっても人間に近かったけど、ウエンディさんは人魚なんだ。


「シルフィさんとはお知合いですか?私、一度だけ会ったことがあるんです。」


((シルフィは風の精霊王シルフィード様の眷属ですね。そして、貴女の父君の事を大層気に入っているとか……。何度かお会いしたことがあります。))


 風の精霊王?なんか凄い話になってる。という事は、あの人の事も知ってるかな……?


「それじゃあティターニアさんの事は知ってる?」


((勿論です。ティターニア様は、我らが精霊の王。全ての精霊・妖精を統べるものです。とても美しく、優しい方でした。))


「どうして過去形なの?」


((……。遠い昔の話、人間は精霊の力を支配しようと禁忌を犯しました。その過ちを命を賭して止めたのが、精霊王ティターニア。この世界が健在しているのは、ティターニア様が尽力したお陰です。))


 命を賭して!?


「ティターニアさんって生きてないの……?」


((生きてはいるはずです、この世界とは違う場所で。精霊王は、己の魔力を半永久的に注ぎ続けるという方法で、禁忌を犯した人間を封印したようです。直接見たわけではございませんので、他から聞いた話ではありますが。))


 あの広大な緑があふれる世界は、ティターニアさんがこの世界を守った代償に存在することを強いられた場所だったのか。

 あんな広い場所で、独りぼっちなのか……。


「助けてあげられないの?」


((残念ながら、助ける方法は見つかっていません。相手方を封印した場所も見つけられていないのが現状です。

 ですが、焦る必要は無いと思います。我が主ウンディーネ様や、他の精霊王も動いていますし、放っておくようなことはしないでしょう。))


 精霊王なんて凄い人たちが動いてるのか、それなら時間の問題だね。もう一度ティターニアさんに会いたいな。


「というか凄く脱線しちゃったけど、そもそもどうして私が命令してると思ったの?」


((……?貴女からの言葉なら、どんな妖精や精霊でも反応するかと思うのですが……。))


「え?どうして……?」


((貴女が精霊王ソロモンの生まれ変わりだからです。万物の精霊が、貴女に従い、服従します。))


……。


……。


……。


「はにゃ?」


 リアルではにゃなんて初めて使ったよ。もうJKじゃないのに。

誤字、脱字などありましたらご指摘をお願い致します。

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