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2話 異世界転生

2023/2/9~2/10修正完了

(これが選ばれた魂ね……随分と衰弱してしまって元の形に戻すことはできない。身勝手でごめんなさい。せめてものお詫びに、貴女をこの世界に転生させます。)


-------------


「産まれました!奥様!産まれましたよ!女の子です!」


 苦しい……私今どこに居るんだろう、頭がひどく痛い、自分の体じゃないみたいだ。腕も、足も、目も、自分の意志で動かすことができない。


 突然浮遊感が体を襲う。

 ……何かで運ばれてる?そりゃあトラックとぶつかったら只ではすまないよね。


「やっと逢えた……。ほら、お母さんよ?声を聴かせて?」


 誰の事だろうか。まるで私に語り掛けているようだ。

 

「奥様、産声を上げません!失礼いたします!」


 再度浮遊感に襲われ硬い場所に置かれる。硬いというか木の感触がわかる。病院のベットは知らないけれど、こんなに硬いものだったのか。そもそも木で出来てるベットなんて病院で見た事は無いが。

 

 その後も男女が話している声が聞こえる気がするが、内容は聞き取れそうにない。先ほどから襲ってくる強い睡魔に邪魔をされているからだ。


 駄目だ眠たい……。

 

 眠気に逆らうことができず、意識を微睡の中に手放した。


-------------


(ようこそ。私の世界へ、春川雫さん。)


 とってもふわふわしている。

 睡魔に勝てず眠ってしまったから、夢を見ているのだろう。高原に美人な女性がいる夢を見るなんて、よっぽど心が傷ついてしまったんだな。


(ふふ、夢ではありませんよ。これは現実です、綺麗だなんてありがとう。)


 あ、美人さんが喋った。


 広い高原で私は美人さんと向かい合うように立っていた。美人さんは困ったようにこちらを見つめている。

 

 少し頭がはっきりしてきた所で、美人さんから目を離し辺りを見回す。透き通るような晴天に、どこまでも広がる緑の大地は、まるで西洋の絵画みたいだ。


 ……早く起きないと。事故に遭って、一体私はどうなった?

 ……秋人はどうしたんだろう。私を庇って怪我はしていないだろうか。


(彼は無事ではないですが、命に別状はありません。安心してください。)


 美人さんから答えを貰うことができた。というか、美人さんと会話成立してる……?もしかしてお喋りできる存在的な?


(はい、ここは私が作った空間。貴女と意思疎通ができます。貴女がどうしてこうなったかという経緯と、今置かれている状況を説明させて貰えますか?)


 私の状況……。歓迎会の帰りの後の出来事?


(あの時、貴女は事故に遭いました。でもそれは、貴女自身の運命ではありません。他人によって捻じ曲げられてしまったのです。)


 結局私はあのトラックを避けることはできなかったのか。

 でも当たり前の話、いくらゆっくり見えたとしてもそれは私の錯覚なのだろう。


 そして運命を捻じ曲げられた?というか本当に運命なんてあるの?


 っていうか誰だよ勝手に私の運命捻じ曲げたのは。


(それは、この世界の()()にです。それ以上詳しいことは分かりませんでした。)


 まぁ運命という言葉は飲み込むとして、どうして私の運命は捻じ曲げられたんだろう?


(それは……全くの偶然なの。とある儀式のために必要な生贄として、貴女は選ばれてしまった。)


 生贄が必要って……。世界で生贄が必要になりました、なんて突拍子もないニュースは見た覚えがない。

 それこそアニメや漫画なら別だけど。


(生贄になったのは貴女1人ではありません。1000を超える人々が巻き込まれてしまいました。)


 そんなに沢山の人を巻き込んだ儀式って、何のために必要だったのだろうか。


(その儀式は、精霊・妖精の力を支配し、魔法を極め、人外的な力を手に入れる悍ましいもの。これは禁じられていて、もう2000年も前に封印したはず。それがどこかで解読され、実現してしまった。)


 妖精・精霊・魔法……。お伽噺みたいな話だ。その人は魔法を極めて、沢山の人々を犠牲にして、何をしたかったのか。

 命を犠牲にしたと仮定すれば、見上げる覚悟が必要だっただろうに。

 でも私には関係の無い事だ。危ない儀式に巻き込まれても、女神様がいるという事は、私は元の世界に戻れるラッキーな人なのだろう。


(もう戻ることはできないの。貴女はこちらの世界で転生してしまったから。)


 …………。


 …………。


 …………。


 え?


(貴方はこの世界に転生してしまいました。だから、地球には戻れません。)


 ちょっと待ってそれは聞いてない、帰らなきゃ。

 家族だって友達だって、秋人だってあっちにいるんだもん。

 私の大切なもの、全部地球にある。


 会うことも、声も聴ないんですか。きっと心配させてしまっています。お別れも、ごめんなさいも、ありがとうも、何一つできてないのに!


(本当にごめんなさい、私も帰してあげたい。でもどうすることもできないの。)


 どうしてですか。元の世界に帰す為に現れたんじゃないんですか?

 もしかして今話してくれた事を説明するためだけに居るんですか?

 嫌だ転生なんてしたくない。家族に、秋人に会いたいよ……。


(元の世界に帰るという願い以外なら、私の力で叶えることができます。)


 今まさに唯一、一番のお願いを却下されたばっかりなのに?


(その願いだけは叶えられないの。他の願いであれば私の権限で叶えられるのですが……。)


 元の世界には帰れない。


 それ以外の願い。


 …………。それならもう決まっている。


 私の願いは、秋人を助けること。元の世界に帰ること以外の願いはそれだけです。

 秋人は、私に巻き込まれて事故に遭いました。怪我をしているなら治して欲しい、もう会えないかもしれないけど、元気でいてほしいです。


 地球に帰りたい、帰って秋人の無事を確認したい。でもきっと無理なんだ、なんとなく解る。


 これがもう、夢だなんて淡い希望は抱いていない。


(わかりました。工藤秋人を事故前の姿に戻しましょう。なので安心してください。)


 女神様は綺麗な顔で微笑みながら言った。


 ありがとうございます。女神様、一つだけ質問していいですか?


(私が分かることであれば、なんでも答えましょう。)


 ……地球で私は、トラックに轢かれて無残に死んだ。ということになっているんですかね?


(残念ながらその通りです。)


 それじゃあ、秋人も、家族も、私の大切な人たち全員が悲しんでしまいますね。


(酷く悲しむことになるでしょう。ですが必ず乗り越えられます。貴女がそれを望んでいないと、大切な人たちもわかっているはずですから。)


 ……我儘ですが、私の大切な人をお願いします。助けてなんて言えません、でも見守ってもらえますか?


(わかりました。ここから一生を見守り続けると約束しましょう。力になれずごめんなさい。)


 いえ、私こそ我儘言ってすみませんでした。


(……それでは、これからの貴女の話をしましょうか。)


 私はもうこの世界に転生してしまっている、ということですよね?


(そうです、貴女はレオナルド・アーサー・ヘイデン夫妻の子供として転生しました。)


 レオナルド……。それがこの世界の父の名前。

 実感はないけれど、私も名乗ることになるんだ。


 それに、睡魔が襲ってくる前確かに()()()()()()()という声が聞こえた。もしかして生まれたのって私!?


(はい、貴女の記憶にあるのは産まれた瞬間の物でしょう。)


 中身は18歳なのに新しい世界では産まれたてなのか。上手くやっていけるのかな……どんな世界か想像もつかないけど。


(私が作ったこの空間は、外の世界と時間の流れが違います。目が覚めた頃には5歳まで成長しているはずです。)


 5歳!?まぁ0歳からやり直すよりいいはず。18歳の記憶がある状態で乳児みたいには振舞えないし。

 新しい家族とも仲良くしていけたら良いな……。


(とても人柄の良い人たちですから、心配無いでしょう。私が保証します。そして私から、貴女に言っておきたいことがあります。)


 言っておきたい事?


(禁じられた儀式で力を手に入れた人間は、人外と言っても過言ではありません。ですが不完全な状態で儀式を終えた為、完全な状態にはなれなかったのです。)


 人間の命を犠牲にして手に入れた力は、さぞかし壮大な物だろう。それはそれは強大でなくては話にならない。

 でも、そんな凶悪な儀式に欠陥……?


(その儀式は、簡単に言うと精霊の命が必要なのです。沢山の精霊が儀式の犠牲となりましたが、光の精霊の命を刈り取る事が出来なかった。)


 どうして光の精霊だけ助かったんですか?


(光の精霊は、すべての精霊を導く精霊王だったの。)


 その精霊王さんは、生きては居るんですよね?


(……残念ながら消えてしまったわ。でも精霊王は禁忌の手に堕ちる前に抵抗した。具体的には、この世で最も不安定な魂へ避難したの。儀式の生贄になったのにも関わらず、魔力に帰ることを拒んでいた異世界の女の子に。)


 異世界の女の子……?

 それってもしかして……私!?私の中に精霊王が避難してる?って事は人間じゃない……?人間と精霊のハーフって事?!


(精霊王は弱っていました。最早自我は無く、純粋に力だけが貴女の魂と混ざり合っています。貴女は人間のままですよ。)


 そっかよかった。じゃあ私は精霊の力がある人間って事ね。


 口には出さずにほっとしていると、女神様は複雑そうな顔で笑っていた。


(そうです。()()()()()()()精霊の力を使える人間です。)


 制限もなく……?他の人には制限があるんですか?


(この世界の人間は、妖精の力を借りて魔法を発動します。ですが精霊王の力を持つ貴女は、妖精に力を借りる必要がありません。)


 それってつまり、儀式をした人が本当になりたかった状態ってこと?


(そういうことです。全系統の精霊を殺し、その魔力を吸収する。それが禁忌の儀式の概要です。光の精霊を取り込み損ねたという事は、光魔法は全く使えないでしょう。)


 それ以外の魔法はバンバン使えるけど、光だけは無理なのか。


(それだけではありません。魔力量は人間のままなので、種類は多くても回数は使えないという事になります。)


 光の魔法が使えない上に、バンバン使えないってこと?

 

 魔力量は人によって違うんですか?


(生まれた時から皆平等に魔力はあります。しかしそこから、妖精に気に入られたり、努力をしたり、その他諸々で魔力量は変わってきますね。)


 じゃあ私も頑張って努力しないとな。吸収できなかった精霊王が逃げ込んだ体だってバレたら恨まれそうだし。

 自分の身は自分で守らないと。


(貴女は魔力量の心配はありませんよ。)


 え?どうして?


(魂に精霊が混ざっているからです。精霊や妖精は、万物に宿っている魔力を吸って魔法を使うの。貴女も精霊と同じように魔法を使えるはずです。)


ードンドンドンー


(あら、もう時間切れみたい。貴女を両親の元に帰さないと、随分と乱暴なんだから。)


 何かを叩く様な重い音が、美しいこの空間に伝播する。


 もうお別れですか。まだまだ聞きたいことが沢山あるのに。


(きっとまた会えますよ。他に聞きたいことは、己の力を使って調べなさい。貴女には沢山の味方が居るのですから。それに、早く帰さないと貴女の両親を本気で怒らせてしまいそうだわ。)


 この音は両親のせいなんですか?


(そうですよ、貴女を攫われたと思われているようだわ。愛されているのね。だからワクワクした気持ちで帰ってください。)


 分かりました。女神様から聞いたことを頼りに、私なりに生きてみたいと思います。

 それと、秋人を救ってくれてありがとうございました。寂しさはあるけど、元の世界の家族が私を見守ってくれている気がするんです。


 後は……意味の解らない儀式をした人に責任を取らせます。

 私や他の関係ない人たちを巻き込んだんです。なんとか懲らしめてやります。


(貴女は一人ではありません。そして、力不足で本当に申し訳ありませんでした。

 貴女を死なせないように転生させる事が、私にとって最善の策だった。儀式をした人間の素性はわかりませんが、気を付けるように。私はずっと見守っています。)


 まだ全てを理解したわけではないけれど、秋人や家族が生きていると分かれば大丈夫。寂しくなったら思い出せる。心の中に思い出がたくさん詰まってるから。


 ふわふわとした不思議な感覚が遠のき、意識が覚醒していくのがわかる。目が覚めれば私は5歳の幼女だ。


 不安だらけの異世界生活、上手くやれるといいな。

 

誤字、脱字などありましたらご指摘をお願い致します。

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