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9話 ダンスとヘイデン家

ブックマーク増えてた……嬉しくて震える……。

 父が仕事に戻って、もう1ヵ月経ちました。

 課題のダンスに関しては、何も言わないで欲しいです。はい。

 サボって無いですよ?ちゃんと練習しているけど、人間なので得意不得意があるのです。決して、リズム音痴な訳では無いのです。


 そして今日は、我が家に珍しく来客があるそうなので、お迎えを頼まれました。


「本日はお忙しい中、お招きいただきありがとうございます。」


「ようこそ、お待ちしておりました。母と兄が待っておりますので、こちらへどうぞ。」


 来客は線の細い女性だった。栗色の髪を片方で編み込んだ、大人しそうな女性。30代だろうか、この世界の人は見た目年齢が若い上に美形が多いからさっぱり分からない。


 母とテオが待機する1階の客間へ案内する。扉をヘレンに開けさせると、ふわりと母が立ち上がり、少し遅れてテオも立つ。


「初めまして、ローナ教師。遠い所申し訳ございません。」


「こちらこそお忙しい中申し訳ございません。お時間を作って頂きありがとうございます。」


 母の美しすぎる挨拶に気圧されながら、ローナと呼ばれた女性も挨拶する。

 聞いた話によると、この女性はテオがこの夏から通う予定の、王都立騎士・魔法師育成学校初等科の先生らしい。所謂学校の先生だ。

 この世界にも学校は幾つかある。しかしテオが通う学校、通称王都校は貴族が通う学校である。

 校舎は王都にあり、テストに合格すれば身分も関係なく通う事ができる。だが、寮の費用が高額であり、高度な教育の為に学費も相当かかる為、自動的に貴族が多い様だ。


 母に席を進められ、ローナが椅子に座ると、私もテオの隣に腰掛ける。

 ここからは大人の話だ。


「早速ですが、ご子息の入学に関してのお話をさせて頂きます。ご子息は8歳という事で、初等科入学となりますね。入学するにあたって、魔法適性検査兼学力テストを受けて頂きます。」


 ほうほう、学力テストがあるのかぁ。テストって響きがもう苦手だもんな、コツコツ勉強とか苦手だから授業だけは死ぬ気で聞いていたっけ。


「はい、承知しております。小耳に挟んだのですが、今年は模擬戦があるとか。」


「その通りです、耳が早いですね。今年度から模擬戦を勝ち抜いた上位250名を新入生として迎え入れる予定です。

 毎年、入学希望者が右肩上がりで増えているのです。しかし人数が膨らみ過ぎると学習にも影響が及びますので、筆記試験とは別に厳正な模擬試験の元、合格者を生徒として迎え入れる運びとなりました。」


 模擬戦!?テオは大丈夫なのだろうか。父との稽古は見た事があるが、魔法どころか何かに攻撃する所も見たことが無い。温和な兄が、誰かに向かって剣を握る姿が全く想像できないのだが。


「国1番の学校の品格を保つためにも、実力重視は逆にいい流れだと思います。生徒自身の品位は、それこそ学校で学べばいいのですから。」


「全くその通りです。模擬戦の詳しいルールは、決まり次第入学希望者に伝達されます。初めての事で少々遅れが生じておりますが、大目に見て頂けると有難いです。」


「わかりました。急ぐ必要は無いでしょう。模擬戦は知識ではなく経験です。ルールの発表が遅かれ早かれ、実力はそんなに急には変わりませんから。それより、来ていただいてるにも関わらず頼みたいことがあるのですが……。」


「頼みたい事ですか?」


「校長先生に渡して頂きたい物があるんです。荷物を増やす様で申し訳ないのだけれど、私が家を空ける訳にはいかないものですから。」


 母の渡したい物に心当たりがある。毎晩私に手伝ってとお願いしていた薬の事だろう。

 庭の小屋に、薬草庫と小さな台所がある。その台所で、母は良く薬を作っていた。評判も上々で、街からわざわざ買いに来る人も居るぐらいだ。


 手伝いの内容は、私の練った魔力を母が液状化して、薬瓶に流し入れるというものだ。だからあの薬は私の魔力たっぷりです。何に使うのかと聞いたら、悪戯な笑顔で内緒と言われてしまった。内緒という事なので、詳しくは聞かないことにする。

 私に害が及ぶことを、母はしないと信じているので。


「どの程度の大きさでしょうか。あまり大きな馬車で来ていないもので……」


「回復薬の瓶と同じ大きさです。布に包んでいますので少々大きいですが、圧迫してしまうほどの大きさでは無いと思います。」


「それでしたら問題ありません。責任をもって運ばせていただきます。瓶という事は割れ物ですよね……?差し支えなければ、保護の魔法を掛けましょうか?」


「いえ、大丈夫です。包んである布自体に保護魔法を掛けてありますから。腐ったりするものでは無いので、ゆっくり運んでいただいて結構です。お手数をおかけしますがよろしくお願いします。」


 その後は入学書類の記入、必要な物のリストを貰い、約3時間ほどでローナさんは帰路に立つことになった。


「ティアさんは、とても可愛い妖精を連れているのですね。ここまではっきり主人を好いている姿を視るのは初めてです。」


「ありがとうございます。私の妖精は、このルスだけなんです。大切なお友達です。」


 実はこの1ヵ月の間に、妖精が来ました。正真正銘のアーティフィカル妖精です。

 魔法を思いっきり練習したいので、光の精霊を呼び出して創ってもらいました。これで、大人の前で魔法を使っても怪しまれることはありません。

 母やテオは大変驚いていましたが、ルスと仲良しの所を見せると納得してくれました。


「そうなんですね。光の妖精ですか、お母様の魔法特性を引き継いでいるのですね。」


「ティアは少し魔法の発現が遅くて不安でしたが、今は無事に一属性ながらも使えるので良かったです。近い将来、そちらでお世話になるかと思いますので、その時は宜しくお願いします。」


 幾つもの属性を使う為には、沢山のアーティフィカル妖精を用意しなければいけない。妖精をペットに例えるのはどうかと思うが、いきなり沢山のペット(妖精)に囲まれては、多頭飼育崩壊になりかねないのだ。

 別に使える魔法が光だけでも、今のところ困ってないしね。


「楽しみにお待ちしております。それにしても本当に美人ですねぇ。お母様とお父様の良いとこ取りって感じです。」


 まじまじと顔を覗き込まれ、思わず母の後ろに隠れる。

 異世界に来てから、人と話すことが極端に少なくなった。同世代の街の子供たちとすら、遊んだことがない。

 どうやらコミュ障になってしまったようだ。


 今生の容姿は自分で見ても100点満点、成長したら母より美しくなるだろうと思う。その顔を他人に褒められたのは初めてで、何だか気恥ずかしい。


「あら、ごめんなさい。普段は大人びた子なんですけど、余り人と会わないから恥ずかしくなったみたい」


「良いんです。街に出るようになったら、引く手数多で大変そうですね……。あ、長居してはいけませんね。ヘイデン様、本日はありがとうございました。テオ君、試験まで精進するように。学校で待っていますね。」


「こちらこそ、遠い所ありがとうございました。夏からテオを宜しくお願いします。」


 ローナは母から預かった薬の包みを大切そうに持って、王都へ帰っていった。時刻は丁度昼過ぎ、昼食を摂れば、すぐにダンス練習の時間だ。


「さぁ、軽く昼食でも食べて、テオは魔法の勉強、ティアはダンスの練習をしましょうか。」


 来客が長引いても良い様に、3人共朝食の量と時間を調節している。いつもの量では多いし、かと言って食べなければ夕食の前にお腹が空てしまうだろう。


「お手伝いします、お母様。」


「今日の昼食はサンドイッチとフルーツサラダ、そして朝食の残りの鶏のグリルです。簡単なのでヘレンに任せてしまいましょう。」


 珍しく母はヘレンに厨房を譲るそうだ。普段なら補佐として台所に立たせるのだが、今回はメインで料理を作るらしい。


「料理ができるまで、ティアは私に付き合ってくれる?テオは、ヘレンのお手伝いしてくれないかしら。」


「わかりましたお母様。ヘレン、厨房に行こう。早くお昼を終えて、魔法の訓練がしたい。」


 グイグイとヘレンの腕を引っ張る。

 ローナさんに会って、一層勉強や訓練に対する意欲が増したようだ。


「お母様、私は何に付き合えばいいのですか?」


「まずはフィッテングルームに行きましょう。お話はそれからです。」


 フィッテングルームとは、私の家にある前世で言う更衣室みたいなものだ。

 広さは前世の学校教室2つ分程の馬鹿げた広さだが、ドレスは嵩張るから部屋は中々に一杯だ。部屋の壁沿いにズラリとクローゼットが備え付けられており、半分ずつ使っている。

 勿論、私の分のクローゼットは殆ど空だ。目覚める前に母が見繕ってくれたもの以外、数着ほどしかない。ヘレンが定期的に手洗いしてくれるので、それでも困る事は無かった。


 部屋に入ると、見覚えのない老紳士と、キリっとした眼鏡をかけた女性が待っていた。


「お待たせしました。」


「いえいえ、年寄りは待つのが得意ですからね。一向に構いませんよ。そちらが、ソフィアお嬢様の愛娘さんですか?」


 ゆったりとした動作で座っていた椅子から立ち上がり、こちらへ向き直す。グレーにも見えるが、濃紺にも見える、不思議な色合いのサイズぴったりなスーツを着て、同じように仕立てられたハットを胸の前に持ち、恭しく体を折った。


「ティアお嬢様、お初にお目にかかります。仕立て屋のダグラスと申します。ソフィアお嬢様、いえお母様のドレスの仕立てを任されております。この度は春華祭のドレスの仕立てに参りました。」


「そんな他人行儀にしないでください、今日は遠いのにお呼び立てしてすみません。」


 母が困ったように言うと、折っていた体を戻し、皮肉を言って見せる。


「この老体は、服を繕うことしか取り柄が無いのです。実際は、屋敷に立ち入る事も出来ないような身分なのですから。」


 ケラケラと笑う老人に、簡単に挨拶をする。挨拶は全ての基本なのです。


「初めまして、ダグラス様。本日はよろしくお願い致します。」


「こちらこそよろしくお願いします。初めての春華祭とお聞きしたので幾つか案を持ってまいりました。」


 女の人が封筒をダグラスさんに手渡すと、中から大量の図案を取り出した。


「やはり春ですから明るく、淡い色をメインに使いたいと思いました。その白金の髪を活かしたいので、同系色の黄みのあるものは避けました。

 薄桃色や、薄橙、鮮やかなグリーンや、青みがかったエメラルドグリーンなどがお勧めです。薄橙ですが、上にたっぷりの柳葉色のドレープを付けることで、髪色との差別化を図っています。黄みがある色ですが、印象をガラリと変えてくれるでしょう。」


 飛び出してきたのは怒涛のマシンガントーク、この人もしや服オタク?楽しくなっちゃうと、ひたすら話し続けるタイプ?


「ティアは瞳の色に合わせて、青みがかったドレスを着ることが多いの。だから今回も寒色が良いと思うのだけれど……。」


 母の言葉を聞くと、大きな一歩を踏み出して私の顔を覗き込む。この人は私の顔に耐性があるらしい。褒められたり、囃し立てられたりするのは得意じゃないからありがたい。


「お言葉ですがソフィアお嬢様、春の祭りで青のドレスは勿体ないかと思います。明るく若い桃色や橙を身に着けられるのは、幼い今のうちだけです。

 例えばですが、桃色のドレスに紫のチュールを重ねてみてはどうでしょう。瞳との統一感が出て良いと思いますよ。」


 私の意見より先に話が進むのも、幼いころの衣装決めの醍醐味だど思います。前世の七五三とか、親が勝手に決めたって言ってたなぁ。

 まぁ記憶に無い頃の話だし、全然良いんだけれど。


「言われてみればそうかもね……。それに、私の娘としてでは無くヘイデン家の娘として紹介する為にも、私と同じ瞳より、レオの瞳を取りましょうか。青いドレスは何着かあるしね。」


 残念そうに眉を顰める母を尻目に、ダグラスさんが畳みかける。


「形はどういたしましょう。基本的にはプリンセスラインや、Aラインが人気ですな。逆にスレンダーラインやマーメイドラインは、上品すぎて可愛らしいお嬢様の印象を消してしまいかねません。私のお勧めはエンパイヤラインや、ベルラインですね。上品さの中に可愛らしさのあるデザインになります。」


「いつも通りお勧めの中でお任せするわ。その方が確実だもの。ティアはこうして欲しいとか、何かお願いはある?」


 ドレスの形とか、イマイチ分からないしなぁ……。しいて言えばミニスカートは嫌だと言う位か。でも社交ダンスがある場で、ミニスカートを着る訳ないし……。


「特にありません。ダグラスさん、可愛いドレスをお願いします。」


「かしこまりました。サンプルが出来次第お見せ致しますので、よろしくお願い致します。」


「金額はいつも通り出来高で構いません。まだ春華祭まで時間があるので、是非こだわってください。」


 母が冗談交じりに言うと、再度かしこまりましたと体を折った。ダグラスさんは、いい案が思いついたと足早に帰っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 見送りが終り、食堂へ戻るとテオが席について待っていた。テーブルには先刻言った通りのメニューが並んでいる。


「お母様遅いですよ。料理が冷めてしまいますし、早く魔法の練習がしたいです。」


 子供らしく頬を膨らまして拗ねるテオ。何とも可愛らしい。


「ごめんなさいね。それじゃあパパっと食べて練習しましょうか。」


 私の魔法は、はっきり言って未完成だと思う。頭のイメージを(ライト)という抽象的な言葉で表現し、魔法を発現しているためスピードは遅い。

 プラスして光というもののイメージ能力が私に無さすぎる。母は光の魔法を使って回復魔法や浄化魔法を使って見せるが、私にはめっきり使うことが出来ないのだ。


「ティア、余りぼ~っとしていないで食べないと。お腹空いてない?」


 考え事をしていると、注意としては優しい母の小言が飛んできた。


「そんなことないです。ごめんなさい、考え事をしていて」


「考え事って?」


「以前にも相談していた魔法の事なんですけど……。」


 私は魔法のスペシャリストと言っていい母に、色々な相談をしていた。大きな相談は1つ、魔法のレパートリーについてだ。

 現時点で、私は空間を光らせる魔法しか使えない。光の強弱の調整は母よりも上手いし、強くすればきっと人を失明させることも可能だろう。

 しかし、それだけなのだ。


「そうねぇ、ティアの妖精は変わり者だからね……。」


 この世界の人が共通で使っている言葉、()()()()()()()()()()()に、当たり前だが私の妖精は反応しない。

 私のアーティフィカル妖精は光の精霊に創って貰ったもので、この子自身は魔法を使えない。他の人と同じような妖精を創り出すことも可能らしいが、精霊に少なからず負担があるようだ。(詳しい事は良く分からないが)

 ただ、分身として妖精を創るだけなら負担が無いとのことだったので、その通りにしてもらった。


「私は、ライトが光るものだという事を知っています。それに対して回復や浄化の仕組みを知りません。だから使えないのでしょうか。」


「それは前にも行ったけどあり得ないと思うわ。私だって別に、回復や浄化の仕組みを知っている訳ではないもの。

 魔法を学んだ時に、魔法書に書いてあったのよ。光は癒しの源って……だから練習したわ。怪我をしている鳥や馬を見つけては、協力させてもらったの。」


 それじゃあ私も魔法書を読んだら理解できるのだろうか。私の語学レベルは少々上がって、ひらがなは読めるようになった。前世で言うところの漢字の様な複雑な字体はまだ読めない。

 魔法書の様な専門書には、漢字も多く、専門用語も多い。今の私が読んでも理解できないだろう。


「私に魔法書を読むのは無理です。レラに読み聞かせてもらうのが精一杯ですので、まだ回復や浄化は出来そうにないですね。」


「他の魔法を使うのは、もう少し先でもいいと思うわ。私だってティアの年の頃は、まだ指先を光らしたり、光の玉を出して辺りを漂わせたりしかできなかったもの。焦る必要は無いわよ。」


 でもお母様は、水も、光も、音の魔法も使えますよね?という言葉を寸前で飲み込んだ。私はまだ5歳で、光の魔法しか使えない情けない存在なのだ。今はまだそれで良い。全種類の魔法を使おうと思えば使えるのだが、天才少女と囃し立てられるのはごめんだ。


「わかりました。焦らないようにします。」


 そうこうしている内に昼食も食べ終わり、私はレラとダンス、テオは母と魔法の練習に移った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ティアお嬢様、そのように力む必要はありません。全て、お相手に体を預けて優雅に回るのです。」


 ダンスの中にある回転の動きが一番嫌いだ。足に力を殆ど入れず、手のひらに全体重を乗せて殿方に支えてもらうのが美しいターンらしい。

 私の今のターンは、この素晴らしい大地を精一杯踏みしめている。回る前に鈍い音が響き渡り、スピードのある力強い物だ。


 女性は守られるだけではないという事を表現したターンだが受けが悪い……とくに淑女の代表の様な母やレラからは。


「こんな小さな手のひらに、全ての体重を支えさせては転んでしまいます。それに、近い年の男の子が支え切れるとも思えません。」


 私の主張はまともだろう。片足、しかもつま先でターンするのにも関わらず、5歳やそこらの男の子に体重を預けては転んでしまう。


「転ばないように体幹を鍛えたのです。少し力を抜いて回っても簡単には転びませんのに。全体重を乗せると言っても、体幹があれば軸がブレずに回ることが出来るのでお相手にも負担にはなりません。」


 さぁ踊りますよっと言って、レラが手拍子を始める。この世界は気軽に音楽を鳴らすことが出来ない。物凄く貴重な魔法具に、貝殻のような形で好きな音を録音できるものがあるらしい。各国の王室に1つあるか無いかの代物なので、我が家にはもちろんありません。


「お相手がそこにいることをイメージして、優雅に踊ってください。硬い動きではなく、リラックスしてのびやかにです。他のご令嬢よりも華やかに出来ねばなりません。」


 手拍子をしながらアドバイスが飛ぶ。踊る相手が特にいないので、相手の両手を握るような体制でステップを踏んでいる。

 前世で音楽の授業があって良かったと心の底から思う。だって、手拍子とステップの踏み方だけで出来る気がしないもの。4拍子とか、半端な知識でもあって良かった。


「レラ、もう2時間近く踊りっぱなしです。少し休憩しませんか?」


 わざとらしく溜息をついてみせる。やりたくない事を2時間も続けてやるなんて、前世に比べて私も成長したものだ。

 別にできていない訳ではないのだ。ここからは見栄えの美しさを上げていくだけだろう。基本のステップは出来ている。

 もう時間は夕方に差し掛かろうとしているし、魔法だって練習したい。


「ですがティアお嬢様、ヘイデン家としてですね、「あら、上手になって来たじゃないのティア。」


 ダンス練習をしていたホールに、魔法の練習を終えたテオと母が入って来た。魔力が枯渇しかけているのか、テオは怠そうだ。


「お母様、お兄様。」


 思わず動く足を止めて体を向けてしまう。


「テオ、ティアの相手をしてあげたらどう?その方がティアも練習しやすいでしょう。」


 母がそう言うと、テオは怠そうな表情を消して、一歩前へ踏み出した。


「ティア、僕と踊ってくれる?」


 これが、レラの言ったヘイデン家の何たるやだろうか。


 そう言った兄の顔は、いつもよりずっと大人びて見えた。


誤字、脱字などありましたら指摘をお願い致します。

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