表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

SCENE-003 >> すくいて

 巨木の洞には雨水が溜まっているようだった。

 その中で、水とは違う油のようなものがのたうっている。

「なに、これ」

 灯の花を近付けて覗き込むと、()()はキラリと小さな花明かりを反射した。

「生きてるの……?」

 ぱしゃんっ、ぱしゃんっ、と辺りに響く水音の正体は、洞から這い出そうと()()が藻掻く音。

 洞の入り口が中の空洞よりも狭くなっているせいか、()()は何度這い上がろうとしても鼠返しの要領で洞の底へと落とされていた。


 この木はこうやって、この油のような生き物を捕食する食虫植物の類なのだ、と誰かにしたり顔で説明されようものなら、それをあっさり信じてしまいそうなほど見事な嵌まりっぷり。


「……そこから出たいの?」

 仏心を出して伸ばした手に、水とは明らかに違う、ぬるりとした感触の()()が絡みついてくる。

(こういうの、なんて言うんだっけ)

 手の平で掬い上げるよう洞の外へと引き上げた()()は、仄かな花明かりに翳してみると、もう油のようには見えなくて。

「――綺麗」

 なんとなく、そのまま逃がしてしまうのが惜しくなった()()を、私は腕の中へと抱え込んで目を閉じた。

(これでもう、寂しくない)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ