95 俺はエリートのセンリ
アッハッハ!ファ~、何度も笑いがこみ上げてくる。誰があいつの言いなりになんかなるかよ。バカで、俺よりも弱いのに、士官学校のエリートクラスを出てるからって、簡単に騎士団長になんかなりやがった。俺だって、生まれた環境が良くなかっただけで、騎士団の中でもエリート中のエリートだ。
「おらどけ!」
「せ、センリ様!」
兵卒ごときが俺の邪魔をすんな。俺に声を掛けてきたそいつは、何故か俺の腕を掴んできた。俺はそいつを睨む。
「センリ様、地下三階が爆発で浸水中、更に連合が、その穴から侵入しています!兵達に指示を!」
「お前さあ。」
俺はそいつの首を片手でギュッと掴んだ。はは、恐怖に怯えた顔がとっても面白かった。
「兵卒のくせに俺に口出しするんだ、何で?そんなに偉いの?ねえ?」
「ち、違います、違います!センリ様おゆるしくださぐああああ……!」
つまらないから、俺は手に力を入れた。いとも簡単に、そいつは動かなくなった。今のを見ていた周りの兵士達が、怯えた目をこっちに向けた。人間なんてもんは、大体同じリアクションしかしねえ、つまらない生き物だ。社交辞令だってヘドが出る。あんな飼い犬のような態度を取り合って、何が楽しいんだか。
俺はそいつをゴミのように放り捨てて、ヴィノクールの石で出来た階段を上がり始めた。その辺の兵士が、慌てふためいて俺にしがみついてるが、大体こいつら、ここまできたのは俺を信じてたからだろ。水が怖いだの何だのって、死の恐怖に対処出来ないと、すぐに俺にすがりついてくる!気持ちの悪い、ヒルのような奴らだ。
「どけ!お前ら!」
「ひっ」
俺は兵達をかき分けて、地上へと向かった。ここから脱出して、ヴァルガもろとも、こいつらが水の中に沈むのを見たいと思ったからだ。見るには、ここからでは見れない。だから外へ行く。
階段を上がっていくが、地上に近づいたところで、何故か兵達が階段で詰まっていた。あと半分で地上階なのに、何をこんなところで突っ立ってんだよ、外に行けよ。
「おい!詰まってるぞ!早く外に出ろ!」
「やめろ、戻ってくれ!入れてくれ!」
と、叫び声が聞こえた。鬱陶しいな。俺は自分の前に立っている奴の首根っこを掴んで、後ろに放り長げながら進んだ。こうすれば前に進める。外の夕日が微かに兵達の頭の上から見えている、もうすぐ地上だ。
しかし皆、立ち止まっていて邪魔だ。バカなのか?地上階に着いている兵士達が、ぎゃあぎゃあ叫んでいる。
だが突然、階段状に居た兵士が、俺の方に向かって倒れてきた。俺はそいつを受け止めた。なるほど、頭を撃たれ、血をダラダラと流していた。だが、息がまだあったので、俺は後ろに放り投げた。誰かがきっと手当でもするだろ。
銃声が聞こえる。俺は入り口の柱に隠れながら、銃を撃つ騎士を見つめた。奴が銃弾から身を守るように、柱の影に隠れながら叫んだ。
「ダメだ、皆、ここから出るな!撃たれるぞ!湖畔にスナイパーがいるんだ!地上で待機していた者は、四方八方から撃たれてしまった。クッソ……こっちからじゃ当たらねえ!」
連合にそんなのいるのか?ああ、ユークアイランドの特殊部隊か。あれがそこにいるんだ……。しかし、どんなもんなんだ?夢中になって外に向かって撃っている射撃兵の後ろに、俺は立った。そして、俺の後ろに立っていた奴が、俺に当たってきて、俺はその銃兵の背中を押してしまった。
「おい!押すなと言っただろ……あ。」
「お前、誰に向かって口聞いてんだ?あ?」
そいつは怯えた顔で首を振った。おもしれえ、一つ実験をしようか。俺はそいつの首根っこを掴んで体を持ち上げて、地上への出入り口から、そいつの体を外に出してみた。
パンパンパンと、一気に頭だけが同時に撃ち抜かれた。それも何方向から。入り口から見る限り、周りの地上階の建物にも、遠くの湖畔にも人影は見当たらない。しかし銃弾の威力が加減してあるのか、兵士はぐったりとしているものの、まだ息をしていた。
「ふん……射撃の腕はあるようだな。お前ら、地下に行け。」
俺はそいつを別の兵士に預けつつ、下の段でアホ面をこちらに向けている奴らに言った。だが、急いで来たらしい、息の上がった兵士が一人やってきて、首を振って叫んだ。
「それが、それが下からも!最下層の水路から、大勢の連合軍が!奴らの本隊とみられます!」
一気にその場がざわつき始めた。明らかに、俺たちは押されているが、俺は面白かった。一度ぐらい、ヴァルガの困った顔を見たかった。
あーあ、だから俺は思っていたんだ、念の為援軍を手配してはいかがかと。だけどヴァルガは俺に意見を求めなかった、俺がバカだと思っているからだ。本当にバカなのは、どっちなんだろうね。
さっきから、ヴァルガから着信が来ているが俺は無視している。
「お前ら、どけ。」
俺は兵達をかき分けて階段を下り始めた。
「大軍だろうがなんだろうが、俺が蹴散らしてやる。そして俺が……。」




