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LOZ:彼は無感情で理性的だけど不器用な愛をくれる  作者: meishino
まるでエンジェル火山測定装置編
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67 噂と横暴

 しかも辺りをキョロキョロと見て、内緒話をするのか、口に手を添えている。あまり聞かれたくない話なのかな、そう考えるとちょっとワクワクしてしまった。


「最近さ、各地で税率を上げたり、レアな高級食材を全て奪い取ったり……知っているか?ニュースを見たか?」


 誰が、と言われなくても私は分かった。頭に「ネ」のつく、今まさに酒池肉林を楽しんでおられる、あのお方のことだろう。皆も分かっているようで頷き、特にアマンダは頬を膨らましている。


「分かるよ博士!あの人でしょ?この前も、ヴィノクールのキャビアを取られちゃったもん。」


「しーっ!言うな言うなアマンダ。どこに新光騎士団が潜んでいるかも分らん!あのお方について悪く言ったものは年齢関係なく収容所行きで、いつまで経っても、そこから出られないんだから。」


「こわーい。」


 アマンダの言葉に私は頷いた。本当に、世も変わったものだ……ああ、色々な事を思い出して、ぼーっとしてしまった。すると私の顔色を見たのか、アマンダが話しかけてくれた。


「キリちゃん大丈夫だよ。何かあったら、博士が得意のハンドガンで守ってくれるから。」


「何言ってんだよ!」スコピオ博士が苦笑いした。「俺がハンドガンで守れたら、今頃俺は騎士団のトップだよ!」


 スコピオ博士の言葉に皆が笑い、私はアマンダに言った。


「ありがとうアマンダ。優しくしてくれて。」


「それでさ、」まだ話したいのかい。スコピオ博士は、また口に手を添えて、話し続けた。「俺たち帝国民は、あのお方に苦しめられているという訳だ。俺たちみたいな平民は、何の拒否権も持っていない。全てはあのお方のために、生きているからだ。それで……知っているか?あの…………。」


 スコピオ博士が、かなりの小声で話し始めた。しかし火山のゴオーっという音でかき消され、博士が口パクで、身振り手振りしている様子しか、分からなかった。私は聞いた。


「え?何?ちょっと声が小さすぎて、聞こえないです。」


「あ?小さかった?まあこんな場所、誰も来ないか。」


 スコピオ博士が洞窟の入り口の方を見た。私も一応振り返ると、いつの間にか、私の背後にリンが立っていた。ちょっとビビった。


 博士は言った。


「今朝、聞いた話なんだ。うちの研究所の寮には、売店があるだろ?そこの店員はタマラの村の商人が、派遣で来てくれているんだ。それで昨日の晩のことだが、店員がタマラの村に戻って物品を調達した時にさ、ある出来事に遭遇したらしくてな。その時のことを、俺に話してくれたんだよ。」


「ある出来事?」


 私はスコピオ博士をじっと見た。彼と目が合った。


「どうやら、帝国の何処かに、レジスタンスが居るらしい。」


「えっ!?」


 驚いて、つい声を漏らしてしまった。ジェーンも手を止めて、スコピオ博士を見つめている。博士は続けた。


「これは本当かどうか確証は無いが、どうやらその新しい組織は、騎士団から派生したレジスタンスらしい。と言うのもな、店員によると、最近タマラでは新光騎士団の連中に、黄金イチゴを無償で出すように脅されていたらしい。黄金イチゴってのは、年に数個取れれば上出来の、かなり美味しいらしい食材だ。高価すぎて、俺は食べた事ないが、ユークの富豪には売れているようだな……それは置いといて、兎に角、そのイチゴを出すように、農民が脅されているところを、同じ様な騎士の格好をした連中が現れて、農民を庇って、新光騎士団から助けてくれたんだとよ!そして新光騎士団の連中が去った後に、村人が新しい騎士達に礼を言おうとしたら、彼らはこう言ったんだ……我々レジスタンスのリーダーは……何だっけな。前のルミネラ騎士団の団長をしていた人物。ああ、何だっけ!」


 ああ、もしや。


「ギルバート……騎士団長?」


「そうそう!……しーっ!……ギルバート騎士団長らしい!」


 やはり。ああ。そうか。ああ。無言で衝撃を受けていると、ジェーンが腕を組みながら、スコピオ博士に聞いた。


「そうでしたか……新たな組織の人間かと思われる数名の騎士が、農民を新光騎士団から救い、その組織のリーダーはギルバート騎士団長と申したと言うことですが、それは確かな情報なのでしょうか?」


「ああ、それを実際に、売店のお兄ちゃんが目の前で見たんだ。あいつが嘘をつくとは思えないよ。親父さんの代から、いつもグレンの売店で出張してくれててさ、長い付き合いだし、俺たちにそんな嘘をつくとは思えないよ。しかしまあ、新しい騎士団は、新光騎士団に対抗する姿勢を取っている様だから、こりゃ近々、大規模な戦争があるかも分からんな。」


 博士の言う通り、もしかしたらその二つの勢力は、ぶつかる可能性が高いだろう。そしてアマンダが不安そうな顔で、スコピオ博士の白衣の裾を掴んだ。博士はアマンダの小さい頭を撫でた。


「大丈夫だって。お前には俺がいるだろ?それにお前の家族だって、お前のことが大好きなヴィノクールのみんなだって、お前を守ってくれるさ。」


「そうかな?街のみんなも守ってくれる?」


「ああ、大丈夫だ。怖がらせてごめんな。さ!俺たちは俺たちのやることをやるか!」


 スコピオ博士の言葉に頷いた。真剣な表情のジェーンと目が合った。クラースさんもコクリと頷いている。リンは……目薬を差していた……。


 しかし、進展はあった。何と、ギルバート騎士団長は、レジスタンスを結成しているのだった。


 その夜、私達四人は、私とジェーンの部屋に集まって、ウォッフォンで研究所の皆とビデを通話をしながら会議をした。画面に映るアリスが言った。


『つまり、ギルバート騎士団長は、ライネット博士の話だと自分の属性を気にして辞めてたらしいけど、それからレジスタンスとして復帰したのかな?』


 それに答えたのはジェーンだ。


「その様ですね。確証が無いので理由は不明ですが、この情勢です。引退していましたが、レジスタンスとして反旗(ひるがえ)した兵士達に頼まれ、リーダーを務めているのかもしれません。何であれ、これで彼が生きている可能性は、極めて高い。ライネット博士の捜索依頼も、自ずと解決していくでしょう。」


 アリスの隣にいるケイト先生が言った。


『そうね、騎士団から他にも兵士達が消えているのでしょう?不自然といえば不自然だけれど、ネビリスは気付いていないのかしら。』


 彼女の疑問に、ジェーンが思案顔をしながら答えた。


「今思えば、サウザンドリーフの村を必要以上の人数で襲撃したのも、もしや、彼ら、レジスタンスに対する威嚇のつもりだったのかもしれません。まだ彼らの存在が公になっていないことから、兵力差の壁は厚いでしょうから、陛下は大袈裟に事を立てて、力を示した可能性もあります。先程の売店のお兄様の話では、レジスタンスの人間は新光騎士団に対して、強気に振舞っています。ネビリスが知っている可能性は高いでしょう。」


 画面のアリスとケイト先生が、同時にため息をついた。アリスが言った。


『そっか~……そんな事で、リーフの村を利用して欲しくなかったけどね。じゃあこれから二つの勢力がぶつかることになるんだ……でもレジスタンスのリーダーがギルバート騎士団長なら、私としてはレジスタンスを応援したいな。前のルミネラ皇帝の意志を継いでいるだろうし。』


 急に、私の隣で興奮して立ち上がったリンが言った。


「それは私個人としても、多分帝国民の意見も、同じだと思うよ!だってギルバート騎士団長は優しくて、力持ちで、頼り甲斐があって、帝国に住んでる女達の理想を具現化した様な存在だもの!きっとあの仮面の下も男前で、リン、君を妻にしたい……なんてこともあるかも!「兎に角、レジスタンスの人間が人助けをしてるんだとしても、本来ならまだ、態勢が整うまで、慎重に行動をしていたい段階だろう。我々はともかく、この話は内密にするべきだ。」


 クラースさんの意見に皆は頷く、リンを除いて。彼女はちょっとクラースさんを睨んでいる……。


『キリー、それでいいよね?』


 気付けば、皆の視線が私に集中していた。私は頷いた。


「う、うん。内密にする。我々は兎に角、やるべきことだけをやる。そうしよう。」


「あなた大丈夫ですか?先程から無言ですが。」


 私はジェーンの質問に答えた。


「そ、そうかな。別に大丈夫だよ……みんなの話を聞いていただけだから。兎に角、彼が生きているんだから、良かった。これで依頼もクリア出来るね。」


「そうそう!」リンが笑顔で答えた。「ああ~愛しのギル様!リンは貴方様の為なら、身命を()す!」


 それから暫くの間、何故かリンに肩を掴まれて、ゆらゆらと揺さぶられてしまった。揺れる視界の中で、何度も真顔のジェーンと目が合った。

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