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LOZ:彼は無感情で理性的だけど不器用な愛をくれる  作者: meishino
まるでエンジェル火山測定装置編
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64 スコピオ博士のプレゼント

 博士の言っていた通り、その三階建ての寮は、グレン研究所に隣接して建てられていた。研究所からも直接入ることが出来る作りになっているので、これは羨ましかった。仕事で疲れても、すぐにベッドに入れるのだから。


 そして部屋は、通常二人一組で使用する様で、船でも最終的にそうであった様に、私はジェーンと同じ部屋になった。クラースさん達は隣の部屋を使うことになった。その不思議な部屋割りを見て、スコピオ博士は首を傾げていた。


 暑い場所で作業をしていると、思ったよりも体力を消費するものだ。ジェーンが一日三時間と決めてくれたのが少し有難く感じた。私は二台あるベッドの内、入口側のベッドに座って、勢いよく水筒の水を飲んだ。お湯になっていた。


 やはり、男女分かれて部屋を使用した方が、良かっただろうか?しかしこの疲労感で、リンと同じ部屋にはちょっとなれない……睡眠は大事だ。クラースさんには悪いけど、彼女のことは彼に任せよう。


 ぼーっとしていると、すぐにドアがノックされて、リンが入室してきた。すぐに後からクラースさんも入ってきた。彼女は両手を背中に隠していて、何か持っているようだった。リンはそのまま私の隣に座って、元気な様子で話しかけて来た。


「さっきスコピオさんが言ってたんだけど、もうすぐ夕飯の時間で、今日は食堂でビュッフェらしいよ!それまでここに居ていい?」


「いいよ、別に。」


「やった!へっへん~!そしてそして~これを見て!」


 そう言うと、リンは背中に隠してた銃を私に見せてきた。おお!私はその銃を受け取り、色々な角度から観察をした。それはピンク色の、やや大きめな銃だった。持ってみると、大きさの割には軽い感じがする。


 でも何故ピンク色……これでは目立ち過ぎて、戦場で狙撃され放題なのではと苦笑いした。クラースさんも私のベッドに座り、銃を眺めながら言った。


「色はともかく……これは、短機関銃の様だな。これがリンにぴったりなのか?」


 リンは頷いた。


「ぴったりだよ!何でかって言うと、私がFPSゲームの大ファンだって言ったら、スコピオ博士もそうだったらしくて、もう止めどなく話が盛り上がっちゃって……それで、ハンドガンじゃ物足りないだろうって、これをくれたの!因みに色は?って聞かれて、そんなの選べるのかなって思いつつ、冗談半分でピンクって答えたら、博士が研究所の塗装設備を使って、カラー変更してくれたの!可愛いでしょ!?早く連射したい!」


 リンがサイコパスの様な発言をしている……彼女に銃を持たせて、本当に良かったのだろうか。まあいいか、はは、と苦笑いしながら、私は言った。


「ギルドでもガンナーの人は居たけれど、連射系は誤射が多いから、リン気をつけてね……。」


 リンは口を尖らせた。


「大丈夫だって!私、FPSでは最高ランクなんだから!魔獣でも、お手のもんよ!って、あれ?ジェーンは、まだ貰ってないの?」


 窓側の方のジェーンのベッドを見ると、彼は枕をクッションにして、ベッドフレームに寄りかかっていて、読んでいた本を、ぱたっと閉じて答えた。


「私はまだ頂いておりません。まあ、私は策を練るのが仕事ですから、戦闘は、あなた方に任せますよ。」


 トントン、とドアから聞こえた音に、真っ先に反応したリンが、ドアに飛んで行って、ガチャっと開けると、そこには笑顔のスコピオ博士が立っていた。


「よお!お待たせ!ジェーンさんの持ってきたぜ……とっておきの奴をな……ククク」


 そう言って入ってきた割には、手に何も持っていない。変次元装置という、物をコンパクトにする技術かもしれないと考えていると、やはりスコピオ博士は白衣の袖を捲って、彼の手首にある、何やら大きめの白いブレスレットを見せてくれた。


 ジェーンもベッドから立ち上がり、興味津々にブレスレットを見つめている。スコピオ博士がブレスレットのボタンを押すと、みるみるうちに内部からパーツがモリモリ湧き出て、それらが組み立てられていき、あっという間に細長い銃になった……今度は真っ白だった。


「おおお!」と、クラースさんが銃の形に興奮したらしく、博士の持っている銃を、食い入る様に見つめて呟いた。


「これは……スナイパーライフルか?」


「しかもこれだぜ。」


 博士がライフルのボタンを押すと、銃口よりも少し下の箇所から、地属性の細長い魔力の刃が輝き出た。博士が説明をし始めた。


「これはボタンを押すことで、こうも出来る、銃剣だ。銃弾の連射は出来ないけど、一発一発の威力が高いし、遠くの敵でもスコープを覗けば、狙撃出来るという、遠近共に対応出来る銃だ。この剣の部分は、俺が地属性だから茶色く光ったが、まあご存知の通り、これは持ち主の属性に左右される。そして~、最近流行りの変次元装置付きのタイプだから、普段はこうして、ブレスレットに出来る!どうだ!」


「ずるい!」


 噛みついたのはリンだった。両頬をフグの様に膨らましている。


「リンのも、ちゃんと変次元装置付いてるよ……はは、それに女性は小ぶりな銃の方が、俺は可愛いと思うけどな。」


 リンは短機関銃のボタンを押した。するとジェーンの物よりも細い、ピンク色のブレスレットになり、彼女は満足げに手首のブレスレットを眺めて、言った。


「まあ、それならいいけど。」


 ジェーンの銃をよく見ると、白いボディの他に、グリップには何故か……。私は顔を引きつらせて言った。


「ちょっと待ってください。この銃も、スコピオ博士が白く塗装したんですか?他にも気になるのは、このグリップなんだけど……。」


「え?」


 私の言葉で、ジェーンが博士の持っている銃を観察した、次の瞬間に、彼は顔を引きつらせた。それもそうだ……それほどの理由がそこにはある。にも関わらず、博士は何がおかしいの?と言った顔で、銃を眺めながら言った。


「うん、リンの銃のついでに、これも塗装したんだ。やっぱり個性って必要だからな!ジェーンさんは、なんか白が似合いそうだと思ってさ、これに決めたんだ!だってほら、白馬に(またが)ってそうなイメージだろ?はは!それからこのグリップには、ジェーディアって掘ったんだよ!だってリンが言ってたけど、それがジェーンさんのお気に入りのワードだって……あれ?」


 気が付けば、ジェーンがリンの足を踏んでいた様で、リンが足の爪先を抑えて悶絶していた。それもそうだ……これのお蔭で、ブレスレットになった状態の時に、上手いことグリップの文字が表示されてしまい、まるでジェーディアブレスレットをつけている様なものなのだから。どうしてこうなったのか。無料だから文句は言えないが、私は言った。


「スコピオ博士って、ちょっとセンスが暴走してますよね……。」


 博士は笑って答えた。


「え?そうかな?どういう訳か、職員にもよくそう言われるよ!はは!でもさ、この方が個性的でいいと思うんだよな~。」


 クラースさんがスコピオ博士から銃を受け取って、まじまじと眺めている。因みにクラースさんも地属性なので、刃の色は変わらなかった。


「しかし外見はともかく、これは素晴らしい武器に違いない。持ちやすいし、男の体にしっくりくるな。」


「ああ、それは一昨年だったかな、帝都で行われていた射撃大会に行った時に、貰った景品なんだ。」


 博士の発言に、私は驚いた。


「へえ!あの射撃大会って、プロのガンナーも出場しますよね!?それで賞を取ったのですか?」


「いや、射撃大会を見に行った時に、近くでやってたビンゴ大会でビンゴした時の景品だよ。でもそれが目玉の景品だったんだから!……でも期待に添えない感じでごめんね。」


 クラースさんが何度か銃を構えながら言った。


「そうか。だが景品にしてはいい銃だ。実戦にも向いている。惜しくは、これを使う人間に、戦う意志が無いことだな。」


 クラースさんの一言に我々は笑った。ジェーンがクラースさんから受け取ろうと手を伸ばすと、クラースさんは銃剣をしまってから彼に渡した。


「彼の言った通り、私には戦意皆無ですが、念の為に頂いておきます。スコピオ博士、有難うございます。」


 ジェーンはウォッフォンとは逆の、右手にブレスレットをつけた。スコピオ博士は満足げに頷いて、それから部屋を出て行った。少ししてリンが、私とクラースさんの付けているブレスレットを、まじまじと見ているのに気が付くと、彼女が私達に聞いた。


「ねえ、それも一見、ただのブレスレットだけど、変次元装置を使ってる武器なんだよね?」


 クラースさんが答えた。


「ああ、キリーは確か、剣だったか?俺はこれだ。」


 クラースさんはブレスレットのボタンを押した。瞬時に大きな長身の武器が出現した。持ち手にはグルグルと獣の皮が巻きついていて、先端には三日月型の刃の他にも、手裏剣の様な刃が上と横方向についている、変わった武器だった。リンが興奮している。


「これは……槍?斧?」


「これは(げき)だ。祖父の形見なんだ。そう言えば傭兵の時以来、実戦では使用していないな。」


 そう言ってクラースさんはボタンを押して、ブレスレット型に戻した。次にリンが私の方を見てきた。


「キリーのは?」


「私のはいいよ……普通のだし。」


 クラースさんが私のブレスレットを見る。


「そう言えば、お前のその武器は、広げているのを見たことが無いな。調査部の鍛錬の時も、いつもその場にあるものを武器として、使用してばかりで。」


 私は頷いた。


「私はこれもあるけど、どちらかというとこれは、お守りの様な感じで、いつも身につけているんだ。それに戦うときは変次元装置を利用していない武器の方が好きかも。ほら、この前ヴァルガ騎士団長だって、腰に剣を(たずさ)えていたじゃない。彼も私と同じだと思う。」


「なるほどね~」


 リンが一言を放ったところでノック音がして、研究員の方が、食事が出来た事を知らせに来てくれた。ぐうとリンの方から音がして、確かにお腹が空いていたことに気付いた我々は、急いで食堂に向かった。


 その日の定食は、焼き魚に漬物と野菜スープだった。聞けば、その定食の漬物は、グレン研究所周辺の火山灰を利用して、野菜を漬けたものだった。初めて食べるスモーク的な味に舌鼓を打ち、我々は一気に平らげてしまった。

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