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LOZ:彼は無感情で理性的だけど不器用な愛をくれる  作者: meishino
命は一つ!想いは無限編
221/253

221 攻略の方法

 シルビアさんはその後、ユークの仮設住宅エリアに行くことになった。彼女が研究所を去った後、LOZの皆で電話会談をすると、皆は帝都の民とチェイス、それからチャーリーを助ける事に賛同してくれた。だが、やはりジェーンは浮かない顔だった。


 それもそのはずで、今回は抜け目のない帝都の地だし、時間だって、必要な兵器だって揃っていない。策がなかなか浮かばないようで、彼はずっと黙っていた。


 研究所での一般業務が終わると、私はLOZの訓練施設に立ち寄り、LOZエリアの治安の確認と、ヴァルガ達との訓練をしてから、帰宅した。リビングでは、先に帰っていたジェーンが、パジャマ姿でソファに座りながら思案顔をしていた。


 彼の見つめる先にあるのは、いつものでっかいホワイトボードだった。そこには、円形の帝都の地図と思われる図が書いてあり、地下通路と見える箇所にはバツマークがついていた。高速道路から帝都の中に伸びている矢印にも、バツマークが付いている。所々、文字が書いてあるが、殴り書きでよく読めなかった。それを彼がじっと見つめている。


「ただいまジェーン。ずっと考えてたの?」


「お帰りなさい。ええ、ずっと考えておりますよ。」


 彼はこちらを見ないで答えた。


「やっぱりホワイトボードがいいんだね。」


「ええ、私は太古昔の人間なので、このほうが思案し易い。」


 ソファに鞄を置いて、私もホワイトボードを見つめた。確かに、どこにも死角が無い。外壁には一定間隔で自警システムが配置されている上に、街の中にも自警システムがある。範囲内に入れば、一瞬で蜂の巣にされるだろう。今のままでは難しい。ジェーンがこれだけ悩むのにも、訳が分かるのだ。


 ならば、自らチャンスを作るのはどうだろうか。私はジェーンに言った。


「ねえジェーン、」


「はい?」


 彼は私に体を向けた。私は彼の隣に座り、説明をした。


「ネビリスに謁見(えっけん)を頼むのはどうだろうか?私とネビリスが、一対一で和平に向けての対談をするんだ。その時に、彼を襲う。」


「いけません。その時にあなたも、何らかの攻撃を受けるでしょう。しかもネビリスを確実に殺せる保障はあらず、代わりにあなたは確実に騎士達の餌食になります。あなたの死亡確率が高い、その案は極めて危険であり、私は反対します。私がどうにか考えますから、あなたは少し、待っていてください。卵焼きでも作って。」


「た、卵焼きですか……はは。」


 私は立ち上がって、彼の言った通りに卵焼きを作ろうとキッチンへ向かった。冷蔵庫を開けると、中にはお店で買ったと思われるサンドイッチが入っていた。そうか、ジェーンはまだ夕飯を食べていないんだ。ならばと思い、卵と野菜を取り出して、調理台の上に置いたところだった。


 ピピピと私のウォッフォンに着信があった。通話ボタンを押すと、陽気な声が聞こえて来た。


『よおよお!こんばんは~!俺だよ、スコちゃんだよ~!』


「……酔っているんですか?さっきとは全然違うじゃ無いですか。」


 さっき、LOZのポータルで皆と電話会談した時は、もっと静かで神妙な顔つきで黙っていたのに、今はこのザマである。ビデオ通話じゃ無いだけ良かった。ちょっと私も疲れているのだ。私は通話したまま、料理を続けた。


『なあなあ、さっきは真面目な会話だったから聞けなかったんだけどさ、あの求人案件のやつ、まじでまじなの?ジェーン様とハグとかキスしてるの?ヤダァキルディア、やることやっちゃってるんだからウゥ~!』


「ああもう……それだけなら切りますけど。」


『ちょっと待ってよ!それだけな訳無いんだぜ!なあそこにさ、ジェーン様いる?なんか俺、さっきから電話かけているんだけど、全然出ないんだよな。』


 ボウルに卵を割りながら、私は大きな声でジェーンに聞いた。


「ジェーン!スコピオ博士の着信どうしてる?」


「ああ……着拒にしています。」


『な~ん!』聞こえていたようで、博士がそう言った。『じゃあ仕方ない、この世紀の発明の報告、不本意だがキルディアに伝えようじゃないか。あーあ、ジェーン様に伝えたかったのにな。どうしてキルディアなんかに。』


「もう切っていいですか?どうせくだらない発明でしょ?」


 卵を混ぜる私の手が乱暴になり、黄色い液体が荒々しく揺れた。


『嘘だって!キルディアでも全然いいんだって!あのなあ、全然くだらなくなんかないんだよ!ついに、完成したの!ネッ!遂に完成だ!しかも完成したんだからな?文字通り、完成したの!』


 この興奮具合、どうせ火山関係の発明だろう。私はつまらなさそうな声色で彼に聞いた。


「何が完成したんですか?火山測定装置の新しいパーツ?」


『甘いなキルディアちゃんは。』


 早く切りたい。この卵をフライパンに流したら、もう通話終了しよう。そう決めて、私は勢いよく卵をフライパンに注いだ。博士は続けた。


『まあまあ、そう思っちゃうよね?でもね、チッチッチ!違うんだよな~。なんだと思う?ねえ、なんだと思う?』


 早く手を洗おう。そして早くブチ切りたい。そう思いながら手を勢いよく洗っていると、ジェーンがホワイトボードにキュッキュッと書きながら私に言った。


「彼のことは無視した方が、時間の節約にもなりますよ。あなたの気が散って料理の邪魔にしかなりません。ですから私だって、着信拒否にしているのです。お分かりでしょう?」


「そうだね、ジェーンは本当に正しいことを私に助言してくれる。じゃあまたね、博士。」


『待って!待って!』スピーカーが音割れするぐらいの、でかい声だった。『本当にすごいから!ねえ、聞いてよ!ねえったら!』


「何この人……何ですか?」


『ええ?そんなに面倒くさがる?まあいいや。あのね、電磁パルスを改良したんだよ!俺たちが得意としている、っていうか俺が得意な、磁気砲の電磁パルスね。ボットを狂わせるやつあったでしょ?覚えてる?』


「ああ、ふーん……。」


 私はシンクに寄りかかって彼の話を聞く姿勢をとった。


『だろだろ?ちょっと興味あるだろ?そうそう!あの磁気砲を改良したの!先日のイスレ山の戦いでさ、悪趣味な蜘蛛のボットをノーモアオヤジ狩りで破壊した時に、天からアイデアが舞い降りたんだよな!それをそのまま設計して、それをそのまま形にしたら、今宵、遂にうまく行ったんだよ!でもその機械、大きくて量産は出来ないけどさ……でも、E109なら遠くから破壊出来るぜ!』


 それをジェーンが聞いていたのか、ホワイトボードにキュッキュッ書く音が止まって、私の方に駆け寄って来て、興奮した様子で手首ごと私のウォッフォンを奪った。


「それは本当ですか!?スコピオ、それは、実証済みですか!?」


『ああやっと、ジェーン様の声が聞けた!勿論実証済みですとも!ミニチュア版でだけどね……でも上手くいきますよ!』


 私は聞いた。


「E109って何?」


 ジェーンが興奮した様子で、私に教えてくれた。


「E109は、エリーザ109の略称で、帝都にある自警システムの型番です!彼はそれを、遠くから破壊出来ると言っているのです!」


「ええっ!?じゃあ帝都の自警システムを黙らせることが出来るんだ!すごっ、すごすぎるよ!スコピオ博士!」


 本当にすごい!これは来た、これは我々の時代が来たぞ!私は笑顔でパチパチ拍手をした。


『まあ、はは!そこまで嬉しく思ってくれて俺も本望だぜよ!でもね、量産は出来ないの。LOZの材料と金銭面を考えると、二つしか作成出来ない。』


「しかし」ジェーンが満足げに前髪をかき上げた。「それでも破壊出来るのなら話は変わります!なるほどスコピオ、あなたをみくびっていましたよ。ふふ。因みに、その二機で、どれほどの自警システムを破壊出来ますか?」


『……二つ。』


 私はジェーンと顔を合わせた。何とも言えない沈黙が、我々を包んだ。だって、二つである。帝都にある自警システム、外壁だけでも悠に百は超えるのに、二つである。二つって何?二つを考えすぎて、ゲシュタルト崩壊が起きた。するとジェーンが言った。


「……その設計図を見せていただけますか?着拒を解除するので、私の方に送ってください。」


『了解ですとも!ジェーン様!……よし、はい、はーい!送りましたよ!ご確認くださいましね!』


 早速、隣で立ったままジェーンがウォッフォンの画面からスコピオ博士のメールを開いて、設計図を確認し始めた。指で図をなぞっては、しきりに考え込んでいる。彼に任せて、私はスコピオ博士と会話した。


「でも本当、タイミングよく、磁気砲を改良出来ましたね~。」


『だろ?あれって射程が短いのがネックだなって、コンプレックス抱いてたんだよね~、それにさ、いつか帝都に何かあるかもしれないと思ってさ、あれからずっと考えていたんだ。あとはまあ、ラブ博士の自警システムが完璧すぎて、ちょっとヤキモチ焼いた。ははは!何あいつ、何であんな出来るの?しかもジェーン様から信頼されちゃってさ。でも今回のこれで、ジェーン様には俺の方が優秀だって、伝わったよな?な!』


「あ、ああ。伝わったんじゃないですかね……。」


『ん、な~ん!』


 早く、ジェーン確認終わらないかな。しかし彼はまだかかりそうだ。真剣な瞳で、ホログラムの設計図を回転させて、何かを確認している。


『まあ、ラブ博士が開発したSシリーズはまだ突破出来そうにない。本当はそれを破壊したくて、これを設計したんだが、Sシリーズはびくともしなかった。じゃあ帝都のEシリーズだったらいけるかなと思って実験したらさ、結果的には効いたんだから、上手くいって良かったよ!』


 なるほど、この技術はラブ博士への嫉妬が原因で、生まれたものだったのだ。何とも言えない、何とも言えないが、感謝はしてる。うん、感謝はしてる。


「うむ。」


 ジェーンが声を出したので、彼の方を見た。難しい顔をしている。


「スコピオの設計図は、予想以上の出来具合でした。なるほど、勉強になるところもありましたよ。」


『オオッほほほ!聞いたか?褒められたぞ!』


 聞いたよ。でも、そうなのか、ジェーンがそう言うってことは、結構凄い感じなんだ。


「スコピオの仰った通り、材料面と金銭面からして、二機の製造が限界でしょうね。しかし、グレンがある程度仕上げると仮定しても、こちらに到着すること自体に時間がかかりますが。」


『いやあ、それがですね、俺たちグレン研究員は、今、シロープ島にいるんですよ!空き家を借りて、そこを研究所代わりにしてたんです!すごいでしょ!だから間に合いますって、ジェーン様!』


「ああ、そうですか。」


 彼なりに、スコピオ博士を褒めたのかもしれないが、それにしても冷たい反応だった。しかし博士はめげずに『な~ん!』と、喜んでいた。じゃあ、その機械は、当日に間に合うんだ。


「そっか……」私は頷いた。「と言うことは、その機械があっても、破壊出来るのは、二つなのね。」


「ええ。」ジェーンがホワイトボードに向かい歩き始めた。「そう言う事になりますね。まあ、破壊出来ると分かっただけ、前進したと考えねばなりませんか。」


 私もホワイトボードの方へと向かった。帝都の図、果たしてどこのシステムを壊すべきか。


『ねえねえ、今何やってんの?何の時間?』


「今は、ジェーンがホワイトボードに書いた帝都の図を見ながら、どうやって攻めようか考えてるよ。」


『俺にも見せてくれ!』


「はい。」


 私はウォッフォンをビデオ通話に変更した。すると夕方とは違い、ボサボサ頭のスコピオ博士が映った。赤いポロシャツを着ていた。その服はよく見かけるやつだった。好きだなそれ、そんなことを思いながら、私はウォッフォンのホログラムの画面をホワイトボードに向けた。


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