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LOZ:彼は無感情で理性的だけど不器用な愛をくれる  作者: meishino
誰も止められない愛情狂編
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207 ジェーンの覚醒

「キルディア、どうしても人間は食べられませんか?」


「え!?」


「先ほどの発言です。あなたがそう例えたではありませんか。」


「あ、ああ……。」


 確かにそうだった。私はちょっと考えてから答えた。


「う、うん。だって、ジェーンの結婚を邪魔しては、可哀想だと思ってしまう。」


「誰が可哀想なのですか?」と言うジェーン言葉と同時に、ケイト先生が私に質問した。「でもそれは……難しいけれど、本人達の問題なのよ、キリー。ジェーンは、どうなのかしら?カタリーナさんのことは。でも、あなたと一緒にいたいと思っているのは、確かなことよ。」


 ジェーンが頷いた。


「そうです。私が一緒に居たいのは、キルディア。あなたです。」


 困り果てた私は、眉間に拳を当てた。


「じゃあ私は、どうすればいいのだ……どうすれば。」


 するとクラースさんが、私に近づいてきて、私に言った。


「お前は、お前のことを好きな奴と一緒に居ればいいんだ。もしその好きな奴が、お前のことを好きなら、お前はその好きな奴を、幸せにしないとダメだ。そうだろう?」


 皆が今度は心配そうな目で私を見ている。私はその中にいる、タージュ博士を見た。


「でも、パラドックスが。」


 すると、ジェーンが羽織っていた汚れた白衣を脱いで、畳み始めた。


「全く、何処のどなたでしょうか、タイムパラドックスの理論を勝手に私に押し付けてきたのは。もし私が過去の時代に帰ったとして、その先に子孫を残したり、研究で偉業を成し遂げたりするのであれば、確かに考慮せねばなりません。しかし私は、もうし今の状態で帰れば、数日のうちに……生きていられなくなります。これは事実です。」


「えっ、何で!?」


 私は驚いてジェーンに聞いた。ジェーンはふぅーっと長い息を吐いた後に、こちらを真剣な目で見ながら言った。


「あなたが居ないからです。」


 その場に、おお~!と歓声が発生した。私は顔がとても熱くなり、手で顔を隠した。もう彼は、皆の前でも遠慮することをやめている……。そしてジェーンは、ドア付近に立っているタージュ博士を見た。


「異論はありますか?博士。」


「いや……そうなってくると、無いよね。」


 ジェーンがほらね、と言いたげの顔で私を見てきた。そんなのよく知らないもん。ジェーンが畳み終えた白衣を思いっきり膝に当てて、パンと音が出た。綺麗に畳まれたそれを、彼はコーヒーテーブルに置いた後に、私を見つめて、突然大声を出した。


「あなたは何度だって、森でも火山でもこの島でも、この帝国中で、何度も何度も私のことを諦めずに救ってくれました!私だって、あなたと一緒にいることを諦めたくないのです!覚悟してください、キルディア!もうあなたは逃げられない!」


「きゃあああああ!」


 リンの興奮した声と、リンをツッコむラブ博士による、景気の良いパチンとした音が、オフィスに響いた。皆が興奮気味の表情をしている。そして誰からともなく、拍手が開始された。え?何これは。困惑していると、私にアリスが近づいた。


「キリー、大丈夫だよ。」


「……で、でもこの人は、帰るんだよ?」


「そうかもしれないけど、計画があるって言ってたから、信じればいいでしょ?今までだってみんなで方法を考えてきた。それがソーライ研究所でしょ?今回のこれだって、皆で方法を考えれば、何か見つかるはずだよ。」


 皆が頷いている。リンが笑顔でこっちを見た。


「大丈夫、あんた達を切り裂こうとする奴は、この私が許さないからさ!ね!」


「わ、分かった……」動悸がすごい。「みんなの気持ち、分かった。それなら、ジェーンのこと、もっと真剣に考えてみるよ……。私もそうしたいから。」


「それから~?」


「それから?そ、それから、どうしようか、うーん。」


 私はジェーンを見た。ジェーンもこの間が分からない様子で、目が泳いでいる。どうしよう、何かするべきだ。気持ちは述べたし、じゃあ関係の改善?待ってくれ待ってくれ、それはまだ……。


「わ、分かった。」


 皆が見ている、その前で、私は一度深呼吸をすると、ジェーンに向かって、騎士団の誓いのポーズをしようと思い、右手を胸に当てた。そしてジェーンに向かって、片膝を立てた。顔を上げると、目を丸くしたジェーンがいた。私はジェーンの左手の甲を、手に取った。


 カシャっと音が鳴った。その方向を見ると、リンがウォッフォンで私とジェーンの姿を撮っていた。私はもう一度、ジェーンを見た。彼の頬が紅潮している。ああ、彼の手を取る、私の手が、ナイトアームなのに、震える。脳波に影響されてる様だった。私にはこうすることしか、出来ない。


「……あなたのお気持ち、しかと受け止めました。だが、そなたの奥方様に関して、私には責任がある。それでも私は……私は、ジェーン殿をお慕いしております。どうか私が、この想いを抱き続けることを、許してくださいますよう。」


 そして私は、彼の細く、大きな手の甲に、口づけをした。何も考えなければこれが本心だ。何も考えなければね。


「ジェーン、すごい真っ赤だよ!」


 リンのハイテンションな一言が聞こえたので、顔を上げると、確かに目の前のジェーンの顔は、完熟トマトの様だった。皆が拍手喝采している。クラースさんが鼻を擦りながら、私の背中をバシッと叩いた。


「お前やるなあ!流石、騎士だ!こんな情熱的な宣言は、見たことがないぞ!」


 騎士として、言いたいことは伝えた。私は彼の手を離した。私の予想よりもジェーンは嬉しそうに、両手を組んで、幸せそうに微笑んでいる。そんなに可愛い仕草をされると、私は見惚れることしか出来ない……共にいる間は、彼の事を大切にしたい、そう思えた。


「キルディア、それは真に受けてよろしかったのでしょうか?」


「はい。」


「私はあなたの、彼氏ですか?」


「……?」


 私が宣言したのは、不滅の想いだけだ。関係は、変わっていない、はず。


 私が黙っていると、その空気を悟ったジェーンが、赤かった顔を一気に青ざめさせた。


「申し訳ない、私にはどうも理解力が不足している様だ。あなたは、何を、宣言なさったのでしょうか?」


「不滅の、友情だけど、私はあなたに愛を抱き続ける、と言う状態。」


「ねえキリー、ジェーンの喜んでる顔を見た?」リンが真剣な顔で、私を見た。「あれは二度目の愛じゃないよ、初めての愛だと思ったよ。ね?ジェーンにはキリーが必要だよ。居なくなったら死ぬって言ってるじゃん。」


 そうなのだ。この男、どうしてそこまで弱くなったのか。健康的をクリアしていないじゃないか。だが、リンの言いたいことも、痛いほどに分かる。


「ジェーンの結婚は普通じゃなかったんだしさ、キリーが普通の幸せっていうの?そう言うのを、教えてあげればいいじゃん。騎士なりの、愛ってやつをさ。飢えてたら人間だって食べるよ。私だったら食べる。ラブ博士に妻がいたとしても、略奪してたよ。騎士だって、人間だもん。恋とか愛には、抗えないはずだよ。」


「でも、そうだけど。私は臆病で、ごめん。時間が欲しい。」


 静まり返ってしまった。変に皆の期待を、受けてしまった。ジェーンは少し泣きそうな目で、何度も頻繁に瞬きをしている。そして、呟く様に、言った。


「何だこれは……私は、ここまで来て、失恋したのか?」


 失恋ではないけど、今とは何も変わらないことは事実だけど……。返答に困っていると、ジェーンは続けた。


「まさか。これは失恋?ねえキルディア、これは失恋ですか?これが?これがそうなのですか?何でしょうかこれは?これはそうですか?」


 明らかにジェーンがエラーを起こしている。私は神妙な面持ちを保ったが、皆は少し、笑いを堪えている。ジェーンはうろうろとその場を行き来しながら、更に私に聞いた。


「これが失恋ですか?え?これが?何でしょう、この、見えなくとも確実に私の中に存在している闇は。あなたは私を置いていくつもりですか?」


「……ジェーン?」私は驚いて立ち上がった。少し様子が変わってきた。「私はどこにだって、ジェーンを置いて行かないよ。だけど、恋人になるには少し、早いというか、私の気持ちがどうしてもまだ、ついて行けなくて。ごめんね。」


「そうですか、そこまで否定なさるのですね。互いが、愛し合いたいと言うのに、あなたは自ら、我々の間に、高く、屈強な壁を築き上げたのです。そうですか、そこまで否定しますか。ですがそれも、いつまで言えますかな?ふふ、ふ、ふふっ、ふははははははははっ!」


 ジェーンは腹を抱えて笑った。ちょっと理解が出来ない。皆も同様らしく、不安げな空気の中、リンが言った。


「ジェーン今、完全に悪役の笑い方だったよ。」


「ああ。」クラースさんが反応した。「ジェーンそう来たか。愛情はそこまで、人を狂わせるらしいな。」


 まだ高笑いを続けているジェーンに、誰も声をかける勇気は無かった。ちょっとしてから、ジェーンが私を見た。


「キルディア、よろしいでしょう!ならば一人で勝手に抗ってください!私はもう、容赦などしません!私をここまで本気にさせるとは、あなたも好奇心旺盛な方だ。あの投稿は、絶対に取り消しません。」


「え!?なんで!?」


「それから、あなたについても私は、もう容赦などしない。私の誘惑に、いつまで持ち堪えることが出来るのか、これは大スペクタクルだ!はっはっは……!」


 やばい、ジェーンが次のステージに突入している。しかも投稿を取り消してくれない。ジェーンは私にジリジリと近づきながら言った。


「この知略に優れた私を本気にさせるのは、流石ですね、この帝国、いやこの歴史上であなただけです!」


 もうここまでくると、皆が笑い始めた。リンが私に聞く。


「どうするのキリー!?」


「……別に抵抗出来る。頑張りますよ。どんな誘惑だって、耐えて見せる。」


「面白い!」ジェーンが叫んだ。あんたが面白いよ。「そう来なくては、キルディア。あなたはどうあがいても、何れ私の虜になる運命なのです。ならば私は先手を打ちます。この仕事が終わった後、予定通りにデートをしましょう。回転寿司です。あなた生魚好きでしょう?今日は私の為に、尽くす日にしてください。」


「いいじゃんデート!行きなって!キリーはジェーンを慕ってるんだし、生魚好きでしょイッテェ!」


 リンの言葉に皆が拍手をしたが、私はリンを軽く叩いた。まあ、私は抵抗するのみだし、生魚が好きだ。私は定時上がり後に、ジェーンと一緒にデートすることに決めた。

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