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LOZ:彼は無感情で理性的だけど不器用な愛をくれる  作者: meishino
一つ目のパーツが入手困難編
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19 研究所への依頼

 お昼を告げるチャイムが鳴った。私は椅子に座ったまま両手を天に掲げ、んーと声を漏らしながら背を伸ばした。それが終わると、机の上に置いてあったウォッフォンを手首に巻いて、オフィスから出た。


 今日はどこにお昼を食べに行こう、ジェーンはタージュ博士と話し込んでいるので、まだ休憩には入れないようだし、久々に、一人の時間を満喫しよう!そう思いながらロビーを進んでいくと、カウンターのところに見知らぬ小柄のおじいさんが杖を持ちながら立っていて、髪の毛を耳にかけたリンが、おじいさんの話を聞いてメモを取っているのが見えた。


 お客様かな?私がリン達の元へと近付いて行くと、その途中で困惑顔のリンと目が合って、手招かれた。


「あ!キリー……いやボス、いいところに来てくれた!ちょっと来客自体が久々で、対応どうやってするのか忘れちゃった、そんなことはどうでもいい。あのね、彼が博士を探してるみたいなの!」


「どうも。」と、咳払いをしながら、おじいさんが手を出してくれたので、握手をした。


「博士?ウチには四人いますけど、どの博士でしょう?」


「シドロワ博士は、おりますかな?」


「シドロワ?」


 聞いたことのない名前だが、若干聞いたことがある。「シドロワ……シドロワ?」と、何回か繰り返していると、閃いた。


「シドロワ……あ!シードロヴァ博士だ!ジェーンのことでしょうか?」


 私がおじいさんに聞くと、おじいさんは笑顔でウンウンと頷いた。


「ああ!そうそう、シードロヴァ博士じゃ!」


「なんだ、ジェーンのことか。キリー、呼んで来てくれる?」と言ったリンが、書いていたメモをぐしゃっと丸めて、ゴミ箱に捨てた。シドロワが分からなくてメモしてたんだと、ちょっと笑いながら、私は研究開発班のエリアに向かった。


 そして彼の現在地を聞くためにウォッフォンを開いた。しかし嬉しいのか悲しいのか、ジェーンの方から既に『どこにいます?まあ測定しますから結構です。私がすぐに、そちらに向かいますから。』と、メールが入っていた。


 ならば意地悪をしようと思いついた私は、ウォッフォンのマスターキーで、すぐそこにあったジェーンとアリスの研究室に入り、誰もいないことを確認すると、作業台の下へと潜って、隠れた。


 彼の予言通り、すぐにこの部屋の扉が開いて、私のことを探しているのか、彼の長い足が、うろうろと動いているのが見えた。面白くて、ほくそ笑んでいると、そのうちに「ああなるほど」と、つぶやいた彼が、急にしゃがんで、作業台の下を覗いてきた。私は得意げに微笑む彼の顔と目が合った。彼の手首に着いたウォッフォンのホログラムには、地図と赤い点が表示されている。


「何をくだらないことを。どこにいようと、私の位置測定装置に死角はありません。」


「位置は分かっても、どの高さにいるかは把握できないようだから、それはアップデートしたらいいんじゃないかな。」


「ふふ、あなたたまにはいい事を言う。さあ早くそこから出なさい。暫く掃除していないので、汚いですよ。」


 いまだに、なぜ彼が私に命令をするのか理解が出来ない。まあ彼らしいと思いながら、作業台の下から出て、本題を告げた。


「ジェーンにお客様が来てるよ。シドロワ博士に会いたいって言う、おじいさんが来てる。」


「そうですか、私に来客。珍しいこともあるものだ。」


 私とジェーンはロビーへと戻って行った。カウンターではおじいさんとリンが、何やら談笑していて、おじいさんがこちらに気づきパッと笑顔になった。


「これはこれは、ライネット博士!」


「おお!久しぶりじゃのう!シドロワ博士!」


 ジェーンとライネット博士というおじいさんは、熱意のこもった握手をし始めた。ジェーンも彼を知っているようだけど、彼は一体何者なんだろう?そう思ってリンと目を合わせると、彼女も同じこと思ったようで、首を傾げた。握手が終わり、ジェーンは振り返って、私たちに彼を紹介し始めた。


「彼は帝国立天文台の館長である、ライネット博士です。帝国研究所時代に、大変お世話になりました。そして彼女は、このソーライ研究所の所長であるキルディアです、彼女は受付のリンです。」


「総務部のリンです。」


 そこ譲れないんだと笑ってしまった。皆も同じだったようで、ライネット博士はほっほと笑い、ジェーンは手で口を覆いながら上品に微笑んだ。


「いやあ」ライネット博士が、かぶっていたシルクハットを取って、胸へと移動させながら、話し始めた。「総務のリンさんじゃな。そしてあなたが、そうでしたか、キルディア所長で。お噂はかねがね聞いておりました。まだ若いのに、このシドロワ博士をモノにするとは、やりますな!」


「……彼が勝手に来たのです。」


「それほど、この研究所に魅力があったからじゃろう?な!少し話をしたいんだが、いいかね?あ。あそこに失礼するよ。」


 ライネット博士は、ロビーの水色のソファを見つけて、そこに向かって歩き始め、よいしょと声を出しながら座った。私とジェーンも、彼の前に座った。ソファとソファの間には、茶色のコーヒーテーブルがある。


 リンが温かいお茶を置いてくれた後に、カウンターまで戻って行った。ライネット博士が肩に掛けていた小さいショルダーバッグから、革製の古い手帳を取り出して、テーブルの上に置いた。帝国立天文台の館長が、一体我々に、何を依頼するのだろうか。ここでなくても、近くに帝国研究所という素晴らしい機関があるのに……。それほどにジェーンを気に入って、ここまでやってきたのか?と私は疑問に思った。


「それで、話というのは一体?」


 ジェーンが博士に聞いた。博士はこの冷房の効いたロビーでも、まだ外の暑さが体に残っているのか、パタパタと帽子で扇ぎながら答えた。


「サウザンドリーフの森の件を知っておるじゃろ?」


「ああ、保護が解除され始めたと、今朝の新聞にも書いてありましたね。それがどうかしましたか?」


「うん……そこなんだ。わしの友人の一人が議員を務めているんじゃが、保護の解除を食い止めるために議会でも穏便に、あのお方を刺激しないように説得をしているそうじゃが、中々難しいようでな。」


「そうでしょうね、彼は独裁者のようですから。」


 歯に衣着せぬ物言いのジェーンの足を、私はテーブルの下で踏んづけた。彼は体をびくっと震わせた。議員の友人であるライネット博士の前で、あまり下手なことを言って、もしその友人経由で議会にチクられたらどうする。そうなればジェーンは、檻の中で暮らすことになるだろう。


「はは、ここだけの話だが、わしも彼は少し……そう思う。しかし今の騎士団は、彼の言いなりだしな、前の……ギルバート騎士団長が居れば、話は違っただろうが。」


「最近はその名をよく耳にします。街を歩いていても、人々はヴァルガ騎士団長ではなく、ギルバート騎士団長に頼ろうとしている。彼は、それほどまでに民の信頼を得ていたのですね。私は少々勉学に打ち込み過ぎて、騎士団の事情はあまり詳しくなく……。」


 ジェーンが嘘をついた。それもそうだ、ギルバート騎士団長が活躍していたのは、ジェーンがこの世界に来る以前の出来事だったのだから。ちらりと、私に助け船を求めるよう視線を向けてきたジェーンの為に、その嘘に便乗した。


「そうなんですよ。いくら勉学一筋とはいえ、それぐらい知ってて欲しいものですよね。ギルバート騎士団長を知らないなんて、私も最初は驚きましたよ。」


「ほっほっほ!そうじゃな、帝国民なら皆、彼の勇姿、活躍を耳にしておらねば。それに彼がルミネラ騎士団にいた時は、それはもうこの帝国は安泰だと思ったものじゃよ!心の優しい皇帝に、勇ましく、紳士的で、民の為に戦うことを恐れない、素晴らしい騎士団長が付いていたんじゃから、それ以上のものは無かった。キルディアもそう思うじゃろ?」


「え、ええ。知っています。話はよく、ギルドでも聞いていたので。」


「しかし彼は姿を消したとか。」


 ジェーンの一言に、ライネット博士がそれまでの明るい表情を消して、鼻の下の白いひげを撫でながら答えた。


「そうらしいな。さっきの議員の友人が言っていたんじゃが、彼は消えたが、生きてはいるはずらしい。」


「殺されたとか、何かに巻き込まれたとかじゃなくて、自分で去ったって事ですよね?」


 私が博士に聞くと、博士は私の目を見て答えてくれた。


「そうらしいな。友人もそこまで詳しいことは知らんのだ。どうして辞めたのか、正式な発表もなく、彼は忽然と姿を消したから、民がその理由を知る由も無い。だが、一説によると、ギルバート騎士団長は何か……良く無い力を持っていたらしい。」


 博士は背中を丸めて、顔を我々に近づけて、小声で話し続けた。「わしも最初は信じ難かったんじゃが、どうも何人かの騎士が、ギルバート騎士団長がその力を使っているのを、見たことがあるらしい。」


 良く無い力?それは……どういう力だろうか。私は博士に聞いた。


「良く無い力とは?具体的に、どういうものですか?」

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